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ブラウンのマニキュアのかほり

できればこちらに身を委ねてほしい。
そう思うことがある。

介護は自立支援という基本的な考え方の上に成り立っている。
この自立支援の解釈は、介護職員によって違いがあるかもしれないが、ぼくは「できることはご自身でやってもらう」ようにしている。

介入すればいいとう話ではなく、逆に介入の機会を減らしていくように身護る役割が自立支援だと考えている。

でも、できればこちらに身を委ねてほしい局面もある。


おばあちゃん。

腰が悪く腰が曲がり前傾になってしまっているので、シルバーカーを押して歩く。
認知症もあり尿意が感じられないのか、1時間に5回はトイレにいく。5回のうちに1回尿が出ればいいほうで、ほとんどでない。それだけトイレにいくのは、漏らしてはいけないという不安からくるもの。リハビリパンツも尿取りパッドもきっちり履いていても、不安は拭えないようだ。

そして、お尻も十分に拭えない。

腰が曲がっているので、便器に座る時に転倒のリスクがあったり、ズボンがきっちり上まで上げられず半ケツ状態でトイレから出てくるので、付き添いが必要なんです。

便器に座ってもらう。今回は排尿がありました。
それはいいことではあるのだが、排尿が終わる前にトイレットペーパーで拭き取ろうとするので、毎回手が尿でビショビショになるのです。
蛇口から水が出ている状態の時に、ハンカチで手を拭くみたいな。

「まだ出てる最中ですよー。」と手を止めようとすると。

「いーの!触らないで!自分でやるからっ!」

と、めっちゃ怒る。「出来てへんやんっ!」ってツッコミを入れる。心で。
普段は穏やかなのに。。

排尿のあと、ぼくは尿でビショビショになったおばあちゃんの手を取り、おばあちゃんにシルバーカーの持ち手を掴ませる。

毎回「おしっこの手ぇーーー!」って思うのです。笑。

おばあちゃんよ。頼む。
ここは、ぼくに委ねて欲しい。


話はまだ終わらない。

尿の時もあるが、便のときも同じことが繰り広げられる。

上手くお尻を拭けないものだから、おばあちゃんの手は便にまみれてしまう。爪の間にうんちが入り込み、爪の深いところが茶色くなっているのだ。
なんとまぁ恐ろしいマニキュアでしょうか。

排便のあと、ぼくは便で塗れたおばあちゃんの手をとり、おばあちゃんにシルバーカーの持ち手を掴ませる。

毎回「うんちの手ぇーーー!」って思うのです。笑。

そして、一緒に手を洗う。
ぼくは親の仇に出会ったときのような顔で。

頼む。頼むて。
もう、ぼくに任せてほしい。と思う。


でもですね。

トイレを出る時「ありがとうね」ニッコリ言われると。

しゃーねーな。と思ってしまいます。

「家に帰るとね、ケンちゃんが駆け寄ってくるのよ。かーわいーのー!ケンちゃん」そう言って、ニッコニコで愛犬の話を楽しそうにする。

帰り際、必ず半ケツになっているので、ぼくはこっそりズボンを上げておく。そして爪には、微かにうんちのかほり。

介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。