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書く部|みんなでつくるマガジン

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メンバー同士、もう少し交流というか「あ、どーも」があっていいのかなと。記事を書いたら(よければ)放り込んでください。ぜひ、あなたも読んでください。基本はその日の記事を、あと「これ…
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#読書感想文

みんなでつくるって素敵やん?書く部「共同運営マガジン」はじまる

ねー、そなんですよ。 昨日もつぶやいたけど、うちのメンバーシップ「書く部」の共同運営マガジンができました。わたしもよくわかってなかったんですが、みんなで記事を放り込めるんですね。だから「共同運営」なるほど~、さっそく盛り上がってるみたいです(ありがとうございます!) なんで急につくったか。暇なのか?春だから、新しいことやってみたかったのか?どれも間違っちゃないけど。 一番の目的は「メンバー同士の交流」です。いや、メンバーシップつくった当初から、そーなればいいな。書く仲間

『ある生涯の七つの場所2』/夏の海の色 第二回 「海峡」 戦争とは、平和とは?

連作短編『ある生涯の七つの場所2/夏の海の色』第二回になります。第一回及び『ある生涯の七つの場所』については以下をご覧ください。 今回は、「黄いろい場所からの挿話」「赤い場所からの挿話」それぞれ三つずつの短編の中でも、特に「黄いろい場所からの挿話Ⅻ.海峡」について書きたいとおもいました。 今このときも、世界のあちらこちらで戦争が続いています。「海峡」は例によって直接戦争を扱った作品ではないけれど、読み終わったとき、今も続いている戦争について、どうしても考えないわけにはいきま

声の奥深さに驚かされた、わたしです

わたしは思うのです。声にはその人が現れる。ね?思いませんか。 会話の内容があると、もちろんそうなのですが。「はじめまして。○○です」という、ごくありふれたセリフとて、その人がどんな人か見えてくる。 大きな声か、小声か。ぶっきらぼうで投げ捨てるように言ったか、隙があればフェードアウトしちゃいそうか。やわらかい音か、淡々とした一定音か。こんな感じで、特徴があるよねーて、ひとり仮説を立てては楽しんでました。 そんな妄想研究を繰り広げてたら、ある日インスタグラムに、こちらの本が

最近読んだ本たち(2024年5月分)

2024年5月の5冊5月前半は落ち着いていて、本を読みつつゴールデンウィークを満喫できた。 後半は忙しかったので、読書はやや失速。毎月言っているけれど、「もっと読みたいなあ」と思った。 ひと月に50冊読みます! なんていう方はどんな暮らしをしていて、どんなふうに読んでいるのだろう。羨ましい……!! 『傲慢と善良』 辻村深月 ベストセラーになった小説をわたしがタイムリーに読めることは少ない。ワンテンポあとどころか、10年後くらいに読むのだってざらだ。「あ」とか言っている

『ある生涯の七つの場所2』100の短編が織り成す人生絵巻/夏の海の色 第一回

連作短編『ある生涯の七つの場所2/夏の海の色』その第一回です。「黄いろい場所からの挿話Ⅷ・Ⅸ」「赤い場所からの挿話Ⅷ・Ⅸ」の紹介です。『ある生涯の七つの場所』についてはこちらをご覧ください。 1.「黄いろい場所からの挿話」「赤い場所からの挿話」についてここで一度、ここまでの、それぞれの物語の全体像についてお伝えしたいとおもいます。先に取り上げた『霧の聖マリ』が、二つの色の前半になります。『夏の海の色』と題される一連の短編は、その後半です。 ・「黄いろい場所からの挿話」につ

運ばれるわたし

読書が能動的な営みであるかと聞かれたら、わたしは「ノー」と答える。かといって、読み手は受け身に徹しているかというとそうでもない。 先月、『夜ふかしの本棚』という本を読んでいたら、朝井リョウさんが『雪沼とその周辺』(堀江敏幸)を紹介されている箇所にあたった。 そこには、好きだと感じた文章はその人を運んでくれるという意味のことが書かれていた。優しくも鋭い読書論が、心に残って仕方がない。 『夜ふかしの本棚』は、朝井リョウさんや円城塔さんら6人の作家が思い出に残る本、好きな本な

思わず電車を降りすごしたエッセイ。

またやっちゃいました。 昔から読書に集中すると、周りの音や声が耳に 入らなくなります。 気づいたら目的地から3駅通過。 芸人さんの書かれた本を読むのは、 麒麟の田村裕さんの「ホームレス中学生」以来。 あれも衝撃的だったなあ。200万部のベストセラー本ですね。 オードリーの若林さんが書かれたこちらの本。 若林さんは幼いころから人と違うことに生きづらさを感じていました。 40歳近くになってやっと少しずつ解放されてきたと言います。 若林さんのように日常の違和感にひとつひとつ

『安土往還記』イタリア人船員の「私」が語る信長と、辻邦生が安土城に見ようとしたもの

発行年/1968年 『安土往還記』は辻邦生さんの三作目の長編です。 その昔、村上龍氏は二作目にあたる『海の向こうで戦争が始まる』のあとがきで、友人のナントカいう人物(名前は忘れました)に、二作目に当たる作品を書いたよ、といったら、処女作は云々で(そこも忘れました)、二作目はその勢いで書ける、作家としての技量が本当に見定められるのは三作目だ、といったようなことを言われてくさった、というようなことを書かれていました。 その意味では、本作は辻邦生さんの作品の中でも作家としての立ち位

わたしも裁かれたい。きっと全noterが城崎温泉に行きたくなる。―万城目学『城崎裁判』

城崎温泉でしか買えないご当地本。 もうこの時点でわくわくなんですが、 万城目学氏の書下ろし小説があるというではありませんか! これは絶対に面白い!まちがいない!読みたい!今すぐに! しかしネットでは買えない。 城崎温泉に来てもらうための撒き餌である。 よろこんで食いつこうじゃないですか。 ということで。 まんまと策略にはまり、城崎温泉に行ってきました。 城崎温泉といえば、やっぱり志賀直哉の『城崎にて』。 2013年、志賀直哉の来湯100年を機に、次なる温泉地文学を生み

少女小説の語らぬ先〜 『本屋さんのダイアナ』感想文

世の中にはいろんなハラスメントがあるけれど、ハラスメントに対峙したり回避したりする方法を、私たちはきちんと教わってきただろうか。 ってことを、この本を読んで強く思った。 柚木麻子さんの著書『本屋さんのダイアナ』。 感想と雑感です。ネタバレあります。(約2000字) 単行本は2014年に発行されました。(やっと読めた) 📕ダイアナと彩子 主人公はダイアナという名の女の子。なんと漢字で「大穴」と書く。れっきとした日本人で母親はキャバ嬢のシングルマザー。この母親の影響でダイ

『ある生涯の七つの場所』100の短編が織り成す人生絵巻/霧の聖マリ第二回 黄いろい場所、赤い場所からの挿話4〜7

『ある生涯の七つの場所/霧の聖マリ』その第二回。「黄いろい場所からの挿話」「赤い場所からの挿話」それぞれⅣ〜Ⅶです。『ある生涯の七つの場所』の詳しい説明はこちらをご覧ください。 1.「黄いろい場所からの挿話Ⅳ〜Ⅶ」Ⅰ〜Ⅲのうち恋人のエマニュエルが登場するのはⅢのみですが、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶは常にエマニュエルと一緒にいます。Ⅳはまだ「私」がエマニュエルと知り合う前の話です。 Ⅳ.「ロザリーという女」 「私」は大学生です。ロザリーというのは「私」が下宿していた、中庭のある建物の2階

「コーヒーにミルクを入れるような愛」 読書感想文

くどうれいんさんは面白い人だ。 以前からエッセイを読む度になんでこんなに面白いエピソードがあるんだろうって不思議で、羨ましくもあった。きっとそれはくどうれいんさんの人柄も大きく関係しているだろうな。と思う。 好奇心旺盛で、書くことを楽しんでいて、そして自分自身を信じている人。他のエッセイを読んでいても感じていたが、このエッセイを読んでその思いは強固になった。 とにかく登場人物が多い。交流の多さを感じられる。それでみんな魅力的に描かれている。きっとくどうれいんさんのフィルター

「ドクター・ユアセルフ」を意識して生きる決意をする。

私のバイブルになった松浦弥太郎さんの 「エッセイストのように生きる」 文章術ではなく、あくまで生きかたが書かれています。 この中で、私が一番気にいっているフレーズが 「ドクター・ユアセルフ」ーあなた自身の医者であれ。 洋書の言葉だそうです。 自分の心身の異変にいち早く敏感で、 必要以上に不安になり、 すぐ病院頼みになってしまう私。 病院に行けば「ああ、よかったこれで大丈夫だ」と安心する。 でもそれだけではないのです。 根本的に「毎日の自分が健康を作っている」 「自分

『ある生涯の七つの場所』100の短編が織り成す人生絵巻/霧の聖マリ第一回 黄いろい場所、赤い場所からの挿話1〜3

辻邦生さんの作品には連作短編というものがあり、中でも一番壮大なのが『ある生涯の七つの場所』だということをこちらでお話しました。 全作を再読したのちにご紹介するのが本当は一番なのだけれど、それだと読了に『春の戴冠』よりも長くかかってしまうので、少しずつご紹介していきたいとおもいます。 その前にまず概要をお話いたします。 1.『ある生涯の七つの場所』その全体像についてこの作品についてご理解いただくには、何よりあとがきにある辻邦生さんご自身の説明をお読みいただくのが間違いないと