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2021年12月の記事一覧
【新古今集・28】幽閉の後白河
まばらなる柴の庵に旅寝して
時雨に濡るる小夜衣かな
(新古今集・冬歌・579・後白河院)
隙間だらけの
粗末な小屋で
旅の一夜を過ごして
時雨に濡れる
私の夜具よ
小夜衣は要するに着る毛布です。ぬくぬくしてる後白河院。
しかし詞書には「鳥羽殿にて、旅宿時雨といふことを」とあります。後白河院は京で清盛と対立して鳥羽殿=鳥羽離宮に幽閉されました。その時の歌とすればぬくぬくしている場合ではありま
【新古今集・冬歌24】風と時雨と流れる涙
こがらしの音に時雨を聞き分かで
もみぢに濡るる袂とぞ見る
(新古今集・冬歌・575・具平親王)
木々に吹きつける木枯らしの
音があんまり激しくて 時雨の降る音を
聞き分けることができない そのせいで
散っていく紅葉に自ずとわき上がる涙で濡れている
私の袖だと見ていたよ
どうも歌の中の人は時雨に降られてびしょびしょになっているようです。しかし木枯らしがびょおびょお吹いていて雨音に気づきません。
【新古今集・冬歌18】北風小僧がやってきた
いつのまに空のけしきの変るらむ
はげしき今朝の木枯の風
(新古今集・冬歌・569・津守国基)
いつのまに
空の様子が
空高い秋から峻烈な冬へと 変わるのだろう
気がつけば激しい 今朝の
木枯らしの風
季節の変わり目が人の意識の切り替わりを凌駕する勢いでやってくるというのは和歌の世界では定番の詠みぶりです。たとえば『千載集』の冬歌の冒頭は
昨日こそ秋は暮れしかいつの間に
岩間の氷うすごほるら