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【新古今集・冬歌23】古い歌

神無月時雨降るらし佐保山の
正木のかづら色まさりゆく
(新古今集・冬歌・574・よみ人しらず)

十月になった
どうやら時雨が降っているらしい
佐保山の
正木のかずらの色が
日々美しく色づいていく

 詞書には「寛平御時后の宮の歌合に」とあります。この歌合は889年から893年の寛平年間に行われた古い古い歌合です。『古今和歌集』成立前夜ですね。菅原道真が選んだとも言われる『新撰万葉集』の有力な資料とされました。「寛平御時后の宮歌合」は形式が整っていない時代の歌合ですので歌人名なども記載されていない部分が多いようです。
 「神無月」歌もよみ人知らずとして伝わっています。ただし詠み手として現在判明しているのは紀友則、藤原興風、紀貫之、在原棟梁、源宗于、藤原敏行、壬生忠岑、素性法師、大江千里、凡河内躬恒等々の錚々たる面子です。きっとこの歌も歌人名は記載されていませんが当時の有力歌人が詠んだ歌なのでしょう。

 歌は

深山には霰降るらし外山なる
正木のかづら色づきにけり
(古今集・神遊びの歌・1077・よみ人知らず)

山奥深くでは
霰が降っているらしい
里に近い所に生える
正木の葛が
色づいているよ

の類想歌です。正木の葛が色づく大喜利でも開催されていたんでしょうかね。

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