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オレは女が嫌いだが

12
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オレは女が嫌いだが 12

オレは女が嫌いだが 12

青年、京平はひょんなことからアロハシャツの探偵の朱里の助手になる。神戸で仕事と連れられた先で朱里とは別行動。なぜか神戸美人妻と合流してラブホテルへ。何かの工作のために神戸美人妻がダシにされているのではないかと勘ぐった京平は神戸美人妻に気持ちを開こうとするが……。

「お話、聞かせてもらえませんか?」

「え?」

 神戸美人妻、いや、香奈枝さんの目が潤んで見えた。

 一人の女性だと思わないように

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オレは女が嫌いだが 11

オレは女が嫌いだが 11

青年、京平はひょんなことからアロハシャツの女探偵の朱里の助手になる。神戸で仕事があると朱里に連れられ、たどり着くも別行動。向かった先にいた神戸美人妻となぜかラブホテルにイン! ラブホテルから脱出するにはルームキーが必要。果たしてルームキーはどこにあるのか……?

 脱衣所に着くと洗面所の脇に丁寧に下着類が畳まれているのを見つけた。

 そして、穏やかでない、大きなブラジャーの間にルームキーが置かれ

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オレは女が嫌いだが 10

オレは女が嫌いだが 10

しがないサラリーマンの京平はひょんなことからアロハシャツの女探偵、朱里の助手にさせられる。朱里と京平は仕事のために神戸に向かうが、到着してみると別行動。京平を待っていたのは謎の人妻……。

「マサヒコ君!」

 女がこちらに向けて叫ぶ。マサヒコ? あー、オレじゃないな。

 そう思ってよそを向くと、またクラクションが鳴った。遂に女は車から降り立ち、こちらに向けて歩いてきた。ネイビーのワンピースから

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オレは女が嫌いだが 9

オレは女が嫌いだが 9

 二日酔いの朝、そしてなぜか朱里が我が家にいる朝。

 コイツ、無防備すぎる。

 例によって、オレの方が早く酔い潰れたのだろう。朱里に運び込まれて、寝ていたらしい。朱里はオレの部屋着を勝手に着ている。もう慣れたものだ。

 ゴールデンウィークが明けて、平凡な日々を過ごしていた。

 オレはちょくちょく、ゴールデンウィークの間も天に顔を出していたが、朱里は大阪に帰っているとかなんとかで一切現れなか

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オレは女が嫌いだが 8

オレは女が嫌いだが 8

「朱里、お前……!」

 オレは朱里の胸倉をつかもうとしたが、するりと交わされた。

「京平君、甘いことばっか言うて、甘い中で生きていくならそれでいいよ。人を傷つける覚悟がないと、この世間では渡り合えんよ?」

 朱里の言葉は、なんというか戦場の男のような重みがあった。どれだけ傷ついて、傷つけられて来たら、ここまで人を傷つける覚悟が出来るのだろうか?

 オレは純粋にそちらに疑問を感じた。

「怒

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オレは女が嫌いだが 7

オレは女が嫌いだが 7

 朱里に促されて店内に入ったのはよかったが、席についておしぼりをもらうと自分の情けなさがぶり返してきた。

 うつむいて、おしぼりを握りしめることしか出来ずにいると、朱里の顔が耳元に近づいた。そして吐息が耳にかかった。

 オレは瞬時に朱里から距離をとった。そうか、コイツとサシで飲むってことは隣り合って飲むってことか。

「林田有希、26歳。彼氏は大手飲料メーカー勤務。結婚の話は出ているものの、彼

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オレは女が嫌いだが 6

オレは女が嫌いだが 6

「とりあえず、林田さんとケリつけておいで。そこからしか、アンタ、進まれへんやろ」

 朱里にそう言われたものの、オレは何をどうすればいいのか。

 未だに林田さんを思う気持ちはある。素敵な女性だと思う。付き合えたらとも思う。だが、中途半端な煮え切らない態度で相手されて、結局「そんなつもりじゃなかったの」なんてあんまりだ。

 終業後、事務課で残業していた林田さんをつかまえた。

「林田さん、ちょっ

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オレは女が嫌いだが 5

オレは女が嫌いだが 5

「おい、お前!!」

「お前やない、シュリや」

 女は静かに言った。そう言えばこの女、時々大将にシュリと呼ばれていた気がする。どんな字だろうか? 洒落た名前だな、って違うだろ! オレ!!

「そうじゃなくて!! 龍の落とし子って、自分の金で頼めよ!!」

「昨日、京平君を介抱してやったの、誰か分かってんの?」

 シュリは目を細めて笑う。この野郎、ムカつく。

 オレは何も言い返せなくなって、ひ

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オレは女が嫌いだが 4

オレは女が嫌いだが 4

 面白味に欠ける。

 こんなに人を殺す言葉があるだろうか?

 オレはその日一日中、テンションの最下層の中で暮らしていた。もはや林田さんすら目に入らない。後日同僚に聞いたところによるとブツブツつぶやいていたらしい。ハイビスカス女の野郎……、と。

 そんな調子で一日を終えて、オレは居酒屋へ向かった。

 居酒屋の名前は「天」。大将の名前が天と書いてたかし、と言うのだ。だから、天(てん)。

「い

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オレは女が嫌いだが 3

オレは女が嫌いだが 3

ここまでのお話。

“オレ”こと横尾京平は、過去のトラウマが理由で女性不信。にも関わらず、職場の女性に恋をして失恋する。ヤケ酒のために立ち寄った馴染みの居酒屋で鮮やかな赤地に黄色のハイビスカスの咲いたアロハシャツを着たシュリ、と呼ばれる女に「カッコ悪い」と一刀両断されるものの意気投合。調子に乗って飲み過ぎた京平は自宅のベッドの上で目を覚ます。

 頭が痛い。飲み過ぎた。

「あいたたた」

 自室

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オレは女が嫌いだが 2

オレは女が嫌いだが 2

 帰りにいつもの居酒屋に寄った。

 刺身の盛り合わせを一人用にしてもらい、何か揚げ物を注文して、〆のうどんを食べる。それがいつものスタイルだ。

 だが今日は。

「酒だ~、酒持ってこ~い!!」

「おい、京平君、大丈夫か?」

 常連のツネさんに心配される。ツネさんは五十絡みの東京っ子で、キレイに整えられた白髪が清潔感がある。

「うるせえ! ツネさんに何が分かるんだよ! 嫁さんもいて、子供も

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オレは女が嫌いだが 1

オレは女が嫌いだが 1

 女なんて、嫌いだ。

 近づいてきて、気を持たせるようなことを散々言って、しておいて女共は言う。

『そんなつもりじゃなかったのに』

 じゃあ一体どういう了見でオレに近づいた? ふざけるのも大概にしろ。バカにするな。怒りを込めて、オレは社内の廊下を歩いた。

 大きく息を吐き出した。オレは女ってのが嫌いだ。死ぬほど嫌いだ。

 はじめて女を嫌った記憶はオレがまだ男子高校生だったころまで遡る。

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