オレは女が嫌いだが 1
女なんて、嫌いだ。
近づいてきて、気を持たせるようなことを散々言って、しておいて女共は言う。
『そんなつもりじゃなかったのに』
じゃあ一体どういう了見でオレに近づいた? ふざけるのも大概にしろ。バカにするな。怒りを込めて、オレは社内の廊下を歩いた。
大きく息を吐き出した。オレは女ってのが嫌いだ。死ぬほど嫌いだ。
はじめて女を嫌った記憶はオレがまだ男子高校生だったころまで遡る。
オレはまだ、女を知らない純粋な少年で。近所の二つ年上の女子大生に恋をした。
彼女には小さな弟がいた。オレが知らず弟の面倒を見ているところに彼女が通りかかり、話をするようになった。
「君は優しいよね」
そう言って笑った彼女に、一瞬で心を奪われた。
少しずつ話をするようになって、オレのよく行く定食屋に連れて行けと言われて一緒に行き、これは付き合う流れだろうと思った。
生まれて初めての彼女、年上のかわいい系、こんな幸せでいいんだろうかと思った。そう、そんな能天気に幸せに浸っていたオレを彼女はズタズタにした。
「京平君には、もっといい子がいるから」
彼女はそう言って、恥ずかしそうに目を伏せてオレの告白を断った。オレは素直にその言葉を受け取ったが、一週間後打ちのめされる。立ち直れないほどに。
当時、SNSと言えばmixiとか、まだそんな頃で。オレはそういうものに疎いからちっとも触れて来なかったのだが、女子大生である彼女は違った。
彼女はオレの高校の先輩とマイミクとかいう、“友達”というヤツになっていたらしい。その先輩から伝え聞いた話だと、同級生がみんなの前で嬉々として語った。
「コイツ、女子大生に付きまとってフラれたらしいぜ~!!」
人の純情を、人はこうも踏みにじれるのか。オレは目の前が真っ暗になった。
「お前に好きになられるなんて、可哀想だな~」
その声に、クラス中がどっと笑った。
オレはその言葉を素直に受け取ってしまった。オレに好きになられる女は可哀想なのだと思ってきた。今もそう思う。
だって、オレが好意を示したら……。
「すみません、横尾さん。私、そういうつもりじゃなかったんで」
事務の林田さん。オレの誕生日を知っていて、ハンカチをくれた。それがきっかけでお礼だと食事に誘って、そのあと何度か二人で会った。
これもまた付き合うんだろうと思っていた。なのに、まただ。オレは、そんなに魅力がないのか? オレはそんなに……。
トイレの個室に便座を上げることもせずに座り込んだ。
オレは……オレは……。
続く
おはようございます、こんにちは、こんばんは。 あなたの逢坂です。 あなたのお気持ち、ありがたく頂戴いたします(#^.^#)