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2023年1月の記事一覧
#140字小説『チャリティーブーム』
このたび、余命いくばくの命と診断されました。
つきましては現金100億円を国民の皆様にお配りしたく……資産家が預金を国民に配りだして、お金をばら撒くのがブームになった。
国民の消費は倍増して、経済は潤った。
反面、相続が消えて、家族というものの形が失われつつある。
#140字小説『下界のものたち』
下界では鍋で煮たおでんが皿に移され、朝食の用意が整えられようとしていた。
しめしめ、いい匂いだ。
ガスコンロのサバがいい具合に焼けだぞ。
お父さんは将軍のように声を掛けられるまで寝静まっているが、本当に人間たちを支配しているのは、吾輩なのだ。
#140字小説『真実の姿』
「先輩!実習も終わって、これから僧侶として、真実に生きることを努めます」
「いいね。だけど真実とはどういうものかな」
「え?」
「君には本当の姿をさらけ出す覚悟が出来ているかい?」
「は、はい!」
「よし。だったら偽りのない生まれたままの姿をさらけ出しなさい」
「えいやっ!」「はふっ!」
#140字小説『夢野久作「瓶詰めの地獄」へのオマージュ』
晴れた日に砂浜を歩いていたら硝子瓶を拾った。
透けて見える中には手紙のようなものが……この島に流れ着いて、もう1年になる。島の生活にも慣れてきた。あのことさえなければ。日に日に美しさを増してくる僕と同じ顔をしたあいつはもう大人だ。ああ気が狂いそうになる。……文章はそこで終わっていた。
#140字小説『雪に閉ざされた家での夢日記』
夢の中でイラストレーターの絵に触発されて風俗に行きたいと家族に話す。
すると利発な妹からひたすらに貶された。
私は「お兄ちゃんがどんな苦しみと重責の中で生きているか知っているのか!」と説いてみる。
ああ別の夢で会った「僕は君の苦しみと深い孤独を理解しているよ」と言ってくれた天使がほしい。
*出会いのない作者が家族に遠慮して風俗へ行かなかったという、、、抑圧された感情が夢にでました。
#140字小説『万年寝太郎』
俺は万年寝太郎。
寝て起きたら両親が亡くなって、泣き疲れて寝たら、起きたとき兄弟が亡くなっていた。
どうやら死ねない体らしい。
冬眠状態になっていたのが、長寿の秘訣のようだ。
次に寝て起きたとき、周りでは氷河期のように、雪に閉ざされた世界が広がっていた。
銀世界の中、人類が生きた証の雪だるまを作ってみた。
#140字小説『ポエムおじさん』
ある所におじさんがいました。
おじさんはポエムを書きながら、毎日仕事のようにお酒を飲んでおりました。
ある日、おじさんはピエロが持つ風船を貰って、カゴにくくり付けると空高く飛んで行きました。
やがて、海岸でこんな文の入った瓶を誰かが拾いました。
「俺は元気でやってる。現世によろしく」と。
#140字小説『ある変態の青春』
私は女に飢えながらも、心中は書きかけの死姦小説を、どう完結させるかと考えあぐねていた。
海では、犬の散歩をする寒そうなコートの女性と、冬物の制服を着たいつもの二人組がいた。
子供相手になんの邪な想いを描くのだ、と女学生の横を通り過ぎようとした矢先。
鼻腔をくすぐる花のような香りが胸を打つ。