見出し画像

小説だけじゃない。実はうちの会社、句集も作っています



はじめに

はじめに

 いつも広文社印刷のnoteをご愛読いただき、ありがとうございます。弊社が製作に携わった小説「おっこちきる」が、Amazonエンタメ部門で250位以内にランクインしました。地方発の本が全国で評価されるのは大変嬉しいことです。

※ Amazonのページはこちらから!


 しかし、製作に携わっていたのは、小説だけではないんです。
 実は、弊社では句集の製作・製本も行っております。
 これまで製作した句集を紹介していきながら、俳句作りの楽しさをお伝えできればと思います。また、どの句集にも愛媛県宇和島市を題材にしたものがあるので、地元の方にはぜひチェックしていただきたいです。
 ちなみに、どの句集も愛媛県内の本屋さんで発売中です。気になった方は、是非是非、本屋さんに行ってみてください(売り切れの場合はご容赦ください)。


旅の荷 高田 弘志 (令和4年6月1日発行)


夕暮れの線路が印象的な表紙

 記念すべき1冊目は、高田弘志さんの「旅の荷」です。
 表紙の夕暮れの線路が素敵ですね。
 ちなみに、帯にはちょっとした工夫がされていて、黒一色ではなく、ぼんやりと写真が透けて見えているのがお分かりになるでしょうか?
 

表紙の写真


 写真の世界観の中に俳句と文言が邪魔しないよう配置の一つではと思います。
 さて、句集の中身についてですが、素晴らしいものが本当に沢山あります。愛媛県宇和島市の方ならば、知っている、と感じる句を一つ紹介いたします。

牛鬼の籠枠車庫に夏終る

高田弘志「旅の荷」より引用


 そもそも、「牛鬼」って、何?と思われた方もいるかも知れません。
 「ゲゲゲの鬼太郎」に出てきた蜘蛛みたいな身体の妖怪がメジャーですよね。
 でも、宇和島市の「牛鬼」は違います。
 宇和島市の夏のお祭りの時に登場する、御神輿のようなものをイメージしていただければと思います。ただし、この御神輿、すごく生命感があります。これは担ぎ手や首を動かす方の腕の見せ所だと思います。
※詳しくは、こちらのサイトを見て下さい。 

 びっくりするぐらい雑に説明すると、牛鬼の胴体は木の枠で作られ、そこに布などがかぶせられます。俳句の中で登場する「籠枠」というのは、この木の枠のことなんですね。先ほど、リンクを貼った「うわじま牛鬼まつり」の動画を見ていただくと、賑やかで派手な感じがしますが、この句ではそのお祭りが終わってしまわれる牛鬼の籠枠と夏の終わり、二つの終わりがリンクしている素敵な俳句だと思います。
 もう一つ素敵な俳句を紹介したいと思います。

取り壊す隣の屋根の春の月

高田弘志「旅の荷」より引用

 雄大な時間の流れを感じさせられる俳句ですね。
 人間の社会や文明は変化していきますが、月という宇宙規模の存在は、過去も現在も未来も変わらずそこにあるという趣が素敵です。同じく「閉校の横断幕や桜満つ」という俳句も収録されていますが、こちらも人間の時間と植物の時間の違いを感じます。宇和島市も少子化の影響か、閉校する学校が増えてきましたね。

 気になった方は、是非、お買い求めください。

 

コーヒーをLに 川上博子(令和4年6月1日刊行)

灰色に青の帯が鮮やか

 まず、こちらは表紙の質感が独特なので、是非、本屋さんで見かけたら、是非、手に取っていただきたいです。
 そして、俳句についてですが、実は私はこの句集が、弊社が製作に関わらせていただいた句集の中では一番素敵だと思う句が多くてですね。いくつか紹介したいと思うのですが、その前に、宇和島関連の俳句をお一つ。

花降るや伊達の女人の墓たちに

川上博子「コーヒーをLに」から引用

 「伊達」というのは、伊達政宗の伊達家ですね。
 伊達政宗といえば、仙台。なぜ、愛媛県の宇和島市?
 そう思われた方もいらっしゃるかも知れません。
 実は、伊達政宗の長男である伊達秀宗が1615年に宇和島藩の藩主として入部しているんです。そこから、宇和島にも西の伊達家が誕生していたんです。「伊達の女人」というのは、夫人たちのことかも知れませんね。
 
 俳句に出てきたお墓はおそらく、このお墓ではないかと思います。
 墓石というずっと残り続けている静的なものと、降ってくる花という動的なものとの対比が美しいですね。さらにここに「伊達」という歴史のレイヤーが乗ってくることで、俳句の味わいが増します。

※ 宇和島市のHPに乗っている伊達墓所をご確認ください。

 こちらの句集の中には、筆者の川上さんのご家族に関する句がいくつかあるのですが、どれも秀逸です。 
 まず、お母様に関する俳句を挙げてみましょう。
 
 

藍浴衣妣は十九で母になり

川上博子「コーヒーをLに」より引用

 「妣」という字は「亡き母親」の時に使う字ですね。
 この句のすぐ後にこんな句が来ます。

羅や知っていました母の恋

川上博子「コーヒーをLに」より引用

 「羅」と書いて「うすもの」と読みます。
 先ほどの句が自分が生まれる前の時間を連想させるのに対して、急に母の恋を知っていたという母に対する解像度のギャップにやられる2句です。

 お父様に関しても並べられている2つの句があります。

自分史の中の八月十五日

川上博子「コーヒーをLに」より引用
 

八月や父の語らぬ敗走記

川上博子「コーヒーをLに」より引用


 「自分史」と「敗走記」同じ記すものでも、そこに「戦争」というものを置くだけでこんなに違ってくるなんて、と感嘆した俳句です。
 母の知らない時間があるように父にも知らない時間があるのだ、と考えさせられた2句の並びです。

 ちなみに、広文社印刷で製本したこれまでの句集は、基本的に1ページに2句という形式をとっています。

こんな感じですね

 じっくり一つ一つの俳句を味わっていただける配置にしておりますが、筆者の方のお好みによって変更できます。お気軽にご相談くださいませ。


風のいろ 熊本妙子(令和5年6月21日)

木々と山、そして下の方に見える海が素敵な表紙

 最後にご紹介するのが、熊本妙子さんの「風のいろ」です。
 こちらの句集の中で愛媛県宇和島市に関連した俳句として紹介したいのがこちらです。

 

堀端の青葉の崖に続くビル

熊本妙子「風のいろ」より引用

 「堀端」と書いて「ほりばた」と読みます。
 宇和島にお住まいの方でしたら、一度は聞いたことがある地名ではないでしょうか? そして、そこの傾斜した坂道に続く病院などのビル郡も見覚えがある方が多いのではないでしょうか?
 この句集は、本当に熊本さんの視線の繊細さを感じる句集になっています。
 たとえば、こんな句です。

逃亡の機会待ちおり夏の犬

熊本妙子「風のいろ」より引用

 実生活だとただ通り過ぎてしまいそうな風景をじっと観察して、風景を異化する素晴らしい句だと思いました。
 更に、同じモチーフでも時代の変化を感じさせられる作品もあります。

魚売りのリヤカー初冬の大工町

熊本妙子「風のいろ」より引用

 大工町というのは、今の愛宕町のあたりですよね。
 その辺りをお魚屋さんのリアカーがゆっくり通っている様子が思い浮かびます。
 それに対して、夏の句を一つ見てみましょう。

眼鏡屋の移動販売風薫る

熊本妙子「風のいろ」より引用


 眼鏡屋さんの移動販売というと、眼鏡専門店のJINSが始めた「JINS GO」でしょうか?
 だとしたら、こちらは最新鋭のサービスを搭載した車が走っているイメージです(昔から眼鏡の移動販売があったらごめんなさい)。
 他にも聴覚と触覚を刺激されるような句もあり、本当に書かれた方の繊細な感性が味わえる1冊になっております。

 
 3冊の句集の帯にもこだわっております。
 表面はここまでの写真をご覧いただいているかと思いますので、裏面の帯について説明いたします。
 「旅の荷」と「風のいろ」は縦書きで俳句を配置しています。

縦書き(写真が近くて申し訳ないです)

 それに対して、「コーヒーをLに」は横書きで配置しております。
 ここに推薦文をご記載いただいても結構です。

横書き(同じく寄り過ぎてていて申し訳ないです)


 ちなみに、「風のいろ」は、帯をとっていただくと、実はある方々が隠されているので、お手元にある方は、是非、確認してみてください。

 

おわりに


 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
 もし、「ここで句集を作ってみるのも面白いかもしれない」とお考えになった方は、ぜひ下記広文社印刷のリンクからご相談ください。
 「これぐらいの俳句の数で、こういうイメージやコンセプトを考えているんですが」という具体的なご相談でも結構ですし、「これぐらいの予算で考えているんですが、これまで広文社で出版した句集と同じフォーマットだとどれぐらいの俳句が収まるでしょうか?」といった予算に基づくご相談でも大丈夫です。
 「お問い合わせ」という表現は少し硬い印象がするかも知れませんが、どうかお気軽にご相談くださいませ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?