メイキングオブ「おっこちきる」~1つの文章が1冊の本になるまで~
はじめに
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
広文社印刷です。
弊社では、広報販促のツールの製作に加えまして、本の自費出版もお手伝いしております。
句集や紀行文、小説などをこれまで著者の方々と製作してきました。
今日は今月から本格的に発売が開始されました、愛媛県宇和島市を舞台にした小説「おっこちきる」が出来るまでを、書いてみたいと思います。
小説「おっこちきる」を読み終わった方はもちろん、読む前の方、「これから本を作ってみようかな」と思っている方にも楽しんでいただける文章になればと思います。
それでは行ってみましょう!
データ化作業
さて、「おっこちきる」は、手書きの文章でいただきました。
まずは、これをデータ化していく必要があります。
ワードやインデザインに入力していくわけですね。
手書きの文章を一通り打ち込んでいると、当然ですが、「おっこちきる」の物語も読んでいくことになります。話の本筋である憑きもの落としのストーリーも面白いのですが、私が心を惹かれたのは第5章の「狸憑き」という章でした。この章だけは、時代が現代よりも昔で何か柳田国男や折口信夫といった民俗学者たちがフィールドワークで採集してきた民話を読んでいるようでした。筆者の幼少期の体験と憑きものというのが、まだ地域に当然のように存在していたところが興味深かったです。
一通りデータ化を終えると次は、校正です。
校正
今回は、お客様から編集作業も依頼されていましたので、打ち終わったデータを編集していきます。
具体的には下記の通りです。
① 漢字で書いている言葉の中でひらがなに直した方がよいもの(ひらいた方が良いものを直す)を指摘して、作者の方に確認していただく。
例 「何日か経った夜の事」→「何日か経った夜のこと」
② ルビが必要なものはルビを挿入して、作者の方に確認していただく。
例 「去日」→「きのう」
③ 文法的な修正箇所を指摘して、作者の方に確認していただく。また、呼称をできるだけ統一する。
例 「~たり」の後にはもう一度「~たり」を補うなど。
「おっこちきる」という作品には、神道に関連する用語だったり、ルビが必要な漢字の読み方のものだったりが沢山登場します。その中でどこまで言葉を補足して、どこまではそのままでいいのか、というのが難しい点でした。
他にも2024年のコンプライアンス的な視点で見て問題がないか、断言系で書いている地の文を言い換える必要がないかなども平行して行っております。
この校正のやりとりを細かい部分まで含めると計7回ほど繰り返しました。やりとりの中で作者の方がそれでも残したいという表現は残していき、修正が必要なものはどんどん直していきます。この時点で、製作開始から約1ヶ月半が過ぎていました。
原稿が完成したら、カバーや帯のデザインです。
カバー・帯・本体のデザイン
続いては、本の本体を包むカバーと帯のデザインです。
持参していただいた写真のデータから、表紙に合いそうなものを選び、いくつか候補を出した上で最終決定します。
ちなみに、当初はすごくシンプルなフォントを使っていましたが、作者の方のご要望で筆で書いた力強いフォントにしました。
木々の緑や空の色とも調和が取れるようにタイトルの周りにうっすらと白を配置しております。
帯に関しては、表面は写真の下の部分をそのまま使い、文章を配置していきます。こちらは、タイトルの黒と対照的な白い文字の周りに黒を配置しております。背の部分と裏表紙はカバーが白だったので、帯は黒にしています。裏表紙部分の帯は、本文の中でインパクトがあるものをと思い、こちらの文章を選びました。
リーフ(チラシ)で使っているのもこちらの表紙の画像です。
皆さんは、買った本のカバーを開けて本体も見ることはあるでしょうか?
マンガなどでは、カバーを外すとおまけの絵があったり、表紙の別バージョンが書いてあることもあったりしますが、小説ではなかなか無いかもしれません。
「おっこちきる」の本体は、表紙の写真に加工を加えております。もともとの本体の紙が灰色だったので、同じ景色でも少し異界のように見える感じをめざしました。Netflixの「ストレンジャー・シングス」の宇和島版という感じです。
本体のデザインも決まりましたので、ここからは製本です。
弊社の製本技術でどんどんページを印刷して製本していきます。
製本作業
さあ、ここからは製本作業です。
この文章を書いているのは、企画部の人間なんですが、製本はまた違う部署で作ります。今回はその製作の一部を撮影しました。
まずは、文章が書かれたデータを印刷用の版に出力します。
色々な形のおまんじゅうが世の中にはありますが、あの形は型が決まっています。だから同じ形のおまんじゅうが大量生産できます。あの型を作っていくイメージですね。
さあ、印刷したものがこちらです。
印刷し終わったら、今度はページを切っていきます。
市販の本のサイズに調整していくわけですね。
こうして出来上がった本がお店やAmazonなどに出荷されていきました。
おわりに
メイキングオブ「おっこちきる」いかがだったでしょうか?
私は読書が趣味ですが、本が私の手元に辿り着くまでこんな風に製作されているとは想像していませんでした。
このnoteやXを担当している私は、入社してまだ半年も経っておらず、初めて製作に携わった本がこの「おっこちきる」でした。とても思い入れのある1冊です。この本自体のおもしろさも勿論ですが、本が出来るまでのドラマも共有したくて記事にいたしました。
もし、まだ読んでらっしゃらなかったら、是非是非、読んでみてほしいですし、読み終わった方は感想を「#おっこちきる」でつぶやいていただけると嬉しいです。
※愛媛県内の書店とアマゾンで発売しております。
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