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短編小説

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小説のような、エッセイのような、 お仕事小説、家族小説
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#親子

陽のあたるリビングで

陽のあたるリビングで

実家へ行くと、いつもの青いはんてん姿の父がいた。
「何かすることある?」
「じゃあ、これをパソコンで、打って。」
父の好きな歌の歌詞だった。

自分のと設定が違うパソコンで、思うように入力できず、ちょっと手間取る。

余命宣告されている父。入院先の病院から、少しでも本人の好きなところで過ごせるように、無理をいって、自宅に帰ってきた。
今日は母が美容室に出かけるので、代わりに私が父のところに来たのだ

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水平線ドライブ #短編小説

水平線ドライブ #短編小説

 右へ左へハンドルをきり、坂道を進む。視界が開け、水平線が広がった。
「気持ちいいね!」
「うん。」
父と2人でドライブなんて、何年ぶりだろう。もしかしたらはじめてかもしれない。ひさしぶりに実家に帰ってきてよかったと美紀は思う。

10年前、
「おまえ、これからどうするつもりなんだ?」
大学卒業間近になっても、就職の決まらない美紀のところに、父から毎日電話がかかってきた。
「····· ちゃんと

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