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韓国映画 『아워 바디(Our Body)』

ー 日常に疲弊している人、うまくいかないことが続いているひとへ。 ー

今回紹介するのは、韓国映画『아워 바디(Our Body)』です。
映画館で観てきたので、簡単にまとめます。

映画名:『아워 바디(Our Body)』
公開日:2019年09月26日
映画監督:ハン・ガラム

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<あらすじ>
公務員試験に合格するため浪人生活8年目を送っている主人公ジャヨン。無味乾燥で繰り返しの生活に無気力を感じていた彼女は、8年目の試験を受けに行かなかった。母親からは就職の道を進められるも、31才の自分を受け入れてくれる会社なんてないと母親と口論になり、家を飛び出す。途方に暮れているジャヨンの目にとまったのは、夜の公園でランニングしているヒョンジュ。試験勉強生活で心も体も疲れ切っていたジャヨンは、気分転換しようと最初は学校の校庭周りから少しずつランニングの練習を始め、ヒョンジュをはじめとするランニング仲間とも知り合う。また、中学校時代の同級生ミンジの誘いでリサーチ会社でアルバイト社員として仕事を始める。少しずつ心と体の健康を取り戻していくジャヨン。すべてが少しずつ順調にいきはじめたと思ったら。。。

かんたんにあらすじを整理してみました。最後のところは中途半端ですが、これ以上はネタバレになりそうなのでこんな感じです。
(ここまでが映画の半分ほどにあたります。)

<ランニング>
映画の中でのキーとなっているのは、やはり’ランニング’です。机に張り付いていた勉強していた主人公は、’ランニング’という行為を通して健康を取り戻していきます。
ただ、映画の中で描かれている’ランニング’は、青春の代名詞としての’ランニング’ではありません。(ドラマ『ごくせん』のような”あの太陽にむかって走ろう!”みたいなものとは程遠いです。)
主人公は、何か大きな目標を持ってランニングを始めた訳ではありません。(強いて言うのであればヒョンジュのようになりたい、という目標があげられるかもしれませんが・・・)
走らなければならないもどかしさ、胸の圧迫感が彼女を走らせます。そのもどかしさは、試験勉強や仕事、人間関係などいくつもあげられます。日常の忙しさに疲弊し少し立ち止まりたいときこそ、ジャヨンは逆に’走り出す’という行動をとります。

<ありのままの韓国社会>
この映画では、ありのままの韓国社会が描かれていると思います。特に若者の未来に対する不安、正規雇用と非正規雇用(アルバイト)間の問題などが鮮明に描かれています。もちろんこのような問題は現実社会でも現在進行形なので、映画の中でもこの問題が解決される訳ではありません。
映画をみながら、自分(もみじ)の周りに思いを馳せてしまいました。さすがに8年も公務員試験の勉強をしているという人は珍しいですが、それでも大学卒業後3~4年間挑戦し続けている人は沢山います。当然公務員にも定員があるので合格という形で試験生活を終えるのはごく一部です。映画の主人公のように終わりの見えない試験生活を送っている若者は韓国のいたるところにいるということです。
就職も然りです。特に韓国ではスペック(学歴やTOEIC点数)を重視する傾向にあるため、就職活動をするにあたり塾に通いながら英語能力を身につけたり、スタディをするのはほぼ当たり前のことです。
このような韓国社会の’生きづらさ’がそのまま映画でも描かれています。

<背景として’美しすぎる’ソウル>
ランニングする場面が多いため、自然と背景であるソウルに目がいきます。ソウルを南北に分かつ漢江(ハンガン)や夜景が有名な駱山(ナクサン)公園など、ソウルを象徴する場所が多々登場します。
試験勉強をしたり色々な悩みに頭を抱えるジャヨンの部屋、広くも簡素なヒョンジュの部屋が暗めに描かれているため、ソウルの煌びやかな情景はすごく対照的に写り込んできます。ジャヨンにとってはうまく行かない社会としてソウル(もしくはソウル)が存在するはずですが、ランニングをしている間だけは、全く違う’美しすぎる’ソウルが描かれています。

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ソウルという空間が好きな方は、映画を見るとソウルが恋しくなると思います。
(現在ソウルに住んでいる自分(もみじ)ですが、それでも映画をみていると何故かソウルが恋しくなります。おそらく、自分もソウルの風景を見ると、風景に当時の出来事や思い出など(映画ではランニング)が一緒に思い出されるからだと思います。)
ソウルが好きな方は、ぜひ一度注目して観てみてください。

<まとめ>
主人公にたいして”人生大変なのはあなただけじゃない!”と厳しく言うこともできるかもしれません。
それでも、どこにでもいそうな若者と誰にでも該当するような様々な問題を内在している韓国社会、その中で主人公ジャヨンがどのように生きているのかを覗くことができる作品です。

大手の映画館ではあまり上映されていないみたいなので、事前に上映スケジュールなどを確認してから映画館に足を運ぶことをおすすめします〜

もみじ

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