ミトコンドリアが遺伝と寿命を支配!?
前回、受精時に結合するタンパク質解明の話をしました。
そのなかで、卵子は生物の進化で適応(多様化)したが精子は変わっていない、という仮説について触れました。
今回はそこから妄想を働かしてみたいと思います。
まずこの話を聞いて、「ミトコンドリア」を連想しました。
基本情報として、ミトコンドリアは元々独立した生物で、古代のどこかで共生したことがほぼ分かっています。こちらは過去にも触れたので興味のある方は参照ください。
その名残もあり、ミトコンドリア内にも核とは別の小さなDNAがあります。
余談ですが、保存状態が核のDNAよりも良いため、それを使ったDNA解析への貢献でノーベル賞を受賞しました。話がそれるので、これ以上は下記に委ねます。
そしてミトコンドリアのDNAは、単に短いだけでなく、母親のみが継承されることが分かっています。
受精時に精子と卵子が融合して受精卵ができる際、精子の核は卵子と融合して核DNAを提供します。が、精子に含まれるミトコンドリアは卵子の中に入らず、ほとんどの場合、受精後に破壊されます。
一方で、卵子内には母親由来のミトコンドリアが多数存在し、そのミトコンドリアが次世代の細胞に引き継がれます。
そして今回連想した理由というのは、
ミトコンドリアDNAは突然変異率が(核DNAよりも)高い、
という事実です。
突然変異と聞くと悪いイメージを持つかもしれませんが、進化とは多様性を生む力とも言えます。その多様性とはDNAの配列が変異することです。
つまり、強引な解釈を承知でいえば、
(ミトコンドリアDNAが多い)卵子は精子よりも進化速度が速い
ということです。まさに前回の実験結果に符合します。
妄想はここまでにして、関連する興味深い研究成果を紹介します。
ミトコンドリアDNAは、核DNAに混入することが以前から分かっていました。そのメカニズムは不明ですが、過去の共生化プロセスの名残なのかもしれません。(もう数十億年前の話ですが)
そして今回ヒトの脳内神経細胞の研究でわかったのが、
この混入物の数の増加が、寿命の短さと相関していた、
ということです。
ただ、今回のサンプルは死体をもとにしているので(さすがに倫理上生きている状態では×)その点はご留意ください。
この混入物のことをNumt(Nuclear-mitochondrial DNA segments)と呼び、ミトコンドリアが不安定になると増えるという説もあります。
つまり、
女性優勢のミトコンドリアによって寿命が支配されているかもしれない、
ということです。
昔からミトコンドリアは共生という経緯からSFネタにされます。(有名なのはミトコンドリアの反乱を描いたパラサイト・イヴですね)
今回の話はあくまで仮説ですので、変な陰謀説には繋げないでください。(今回も寿命とはあくまで相関があるだけで因果ではないです)
仮説とはいえ、まだまだ生命を探っていくと面白いメカニズムが眠ってそうですね。
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