隕石に封じ込められた高分子:地球外からの生命の材料
前回、「新星爆発」(≠超新星爆発)について、80年ぶりに観測できる話をしました。
そのなかで、新星爆発は生命のエネルギー源「リン」を運んだかもしれない、という期待がもたれています。少なくとも、リンより軽い元素である「リチウム」は運んだ証拠が見つかっています。
この話題に関連して、太陽系が形成された初期には、生命に必要な分子が形成され、そして地球誕生の原始時代には届いていたという記事を見つけました。
大まかに言えば、コンドライトと呼ばれる隕石群に、生命に必要な炭素・窒素・酸素などが封じ込まれた状態で地球に降り注いだ、という話です。
ただ、謎なのは、どのように隕石の中に高分子が封じ込められたのか?という点です。
そこで登場したのが「ダストトラップ」という(宇宙の)地名です。
その場所は、まだ出来立ての恒星の周りに円盤状(原始惑星系円盤。恒星形成時にこぼれた物質が集積したイメージ)で存在する高圧のエリアで、氷とチリでおおわれています。
これらは速度が相対的に遅いので、衝突による破片化を回避することで徐々に雪だるまのように合体を繰り返していきます
このダストトラップの地域で、恒星からのエネルギーを強烈に浴びることで、たった数十年(生活視点では違和感ある表現ですが138億年の宇宙史からみたら一瞬)で炭素などの高分子が形成されるという仮説です。
我々が所属する太陽系での惑星形成については、従来の京都モデルとよばれる定説に新たなアイデアが登場した、という過去記事も載せておきます。より詳しく知りたい方にはおすすめ。
このダストトラップは、太陽系だけでなく他の恒星でも近い現象が確認されています。下記のドーナツ状の中心にあるのはPDS70と呼ばれる出来立ての恒星です。このドーナツがまさに原始惑星系円盤というわけです。
このデータは、ALMA(アタカマ大型ミリ波干渉計)と呼ばれる地上5千mの高地にある電波望遠鏡によって観測されました。
ALMAは世界の研究者たちが共同利用できる制度を敷いています。そしてその共通テーマがまさに「太陽系誕生」「地球外生命」の探求なので、今回の発見にふさわしい望遠鏡です
ALMAは、今後もダストトラップに関してより精緻なデータを観測する予定で、さらなる発展的な仮説が登場するかもしれません。
生命の起源は、依然として地球内か外の大きな二択として謎を残したままです。
地球外飛来説は、どちらかといえば完成された生命(アミノ酸とか)が地球に飛来したかどうかで見られがちです。そこまでの奇跡でなくても、今回のように炭素・窒素などの高分子が地球の外で形成されて地球に届けられた可能性は高いのではないかと思います。
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