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NASAの歴史6:中国との関係

前回は、NASAの無人探査計画について触れました。

有人はソ連に先行された危機感がありましたが、無人についてはNASAの独壇場ともいえる業績を残しています。

ところが、21世紀になってくると、新しいライバルが登場してきます。

中国」です。

中国の宇宙開発については、以前の投稿でも触れました。既に2021年にロケット打ち上げ回数で米国を越えて1位です。

上記文中から年表を引用しておきます。

1950年代:朝鮮戦争をきっかけに核の抑止力を毛沢東が提唱しロシアの協力をえつつ国家の計画始動
1960年代:ロシアと外交上疎遠となり、自国独自でミサイル防衛システム能力開発を宣言(毛沢東)
1970年代:1970年4月に、長征1号による中国初の人工衛星「東方紅1号」の打ち上げに成功
1976年:毛沢東の死後、鄧小平が継いだが政治的混乱でしばらく停滞。
1986年:縮小路線だったが、返り咲いた鄧小平の「863計画」が発表され、有人宇宙開発の動きがリブート
1992年:863計画が発展し、月探査や宇宙ステーションも視野に入れた「921計画」が発表
1999年:国家開発の「長征」ロケットは、初期に失敗が続いたが、2号が建国50周年に神舟1号打ち上げに成功
2003年:神舟5号が世界で3番目に有人宇宙飛行に成功
2011年:宇宙ステーションの雛形である天宮1号が打ち上げられる。
2013年:月探査機「嫦娥3号」で、世界で3番目に月面軟着陸に成功
2020年:「嫦娥5号」が月のサンプルリターンに成功(月軌道上ドッキングにも成功)
2021年4月:宇宙ステーションのコアモジュール(当時の名称:天和)の打ち上げに成功。
2022年:宇宙ステーション完成予定

出所:Wiki

21世紀から着々と成功体験を積んでいるのが分かります。今のところ2022年に独自の宇宙ステーション完成に向けて順調に進行中で、実験もすでに行われています。

この量子暗号通信が他国に先行して地上通信局を増やしており、NASA含む米国にとっては脅威となる可能性があります。

実は、米国は1980年代から20世紀末まで、中国に衛星の打ち上げを委託していました。(宇宙貿易協定と呼ばれます)

背景は、スペースシャトルの事故によって商用衛星打ち上げロケットが不足したことで、コスト面で優っていた中国への打ち上げ委託で議会もOKを出しました。
勿論、米国製衛星技術が盗用がされないように配慮したのですが(保障措置協定)、現場での運用面で緩みが指摘されて、20世紀末に衛星輸出を停止します。

21世紀の成功に至る経緯にはこういった背景もありました。そして今回のアルテミス計画にも、中国への脅威があるとされています。

というのも、中国は月への探査を推し進め、人類史上初めて月の裏側への軟着陸に成功しています。月の裏は、地球間通信が困難であるためアポロ時代も着陸は表のみでした。

そして中国の狙いの1つは単なる国家威信でなく、「月資源のエネルギー獲得」と推測されています。(露骨に表立っては言ってません)
特に、以前から存在は知られている核融合燃料候補ヘリウム3については、下記のような研究も今年発表されています。

そういった国際情勢もあり、国内の民間企業での競争原理に意識を向けて、従来の政府お抱え企業だけでなく、ベンチャー企業への門戸も開けることになります。

そして、21世紀初頭に起業したスペースXやブルーオリジンなどに光があたってくるわけです。

次回は新しい民間企業との関係について触れていきたいと思います。

今回触れた中国の宇宙政策は、下記の書籍が参考になりましたので、興味をもったかたにお勧めします。

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