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脳はやはり予測していた

「おっ」と、とある記事に目がとまりました。

ようは、
マウスの予測行動を決定するのに、脳の特定の神経活動が左右することが分かった、
という話です。

具体的には、脳の2次運動野での神経活動を制御して確かめた実験です。
プレス発表で使われた図が分かりやすいので引用しておきます。

出所:上記プレス発表内の図

プレス発表からは、元々この部位では予測的な準備活動の存在は知られていたようです。
今回の差分は、その際に価値を見極めるということをしている、ということです。

AI(人工知能)のアルゴリズムの1つに「強化学習」があり、強化する素材の1つが「報酬」です。
今回の発表を聞いて、まずそれが頭をよぎりました。
「あ、やっぱりAIっぽいこと脳はやってるのね」と。

ちなみに「強化学習」は決して傍流ではなく、例えばDeepMind社が初めて話題になった初期のアルゴリズムDQNも、深層学習と強化学習を掛け合わせたものでした。
レトロゲームを覚えて一夜でマスターするさまは、当時ぞっとしたのを覚えています。

今回の実験方法を補足すると、たんぱく質の蛍光性を検出する手法と、すっかりおなじみになった「光遺伝学」を駆使しています。

念のため、後者について過去記事を引用しておきます。

予測の前に、脳での認知処理にはいくつかの理論(仮説)があります。

よく言われるのが「意識の科学」で使われる「脳の統合情報理論」です。

ざっくりいうと、
意識とは、脳の各部位が特定の情報量をネットワークで統合して一定の閾値を超えた状態である、という仮説です。
その数値がデジタルで表現できれば、よりコンピュータ的に研究が進められそうですが、知る限りそこまでは解明されていないようです。

他の例を挙げると、アメリカの物理学者ミチオカクは、いろんな分野にも関心を広げ、心を科学で解明しよう、という書籍もあります。

ここでは、意識を次のように定義しています。(物理学者らしいですね)

意識とは、目標(配偶者や食物や住みかを見つけるなど)をなし遂げるために、種々の(温度、空間、時間、それに他者との関係にかんする)パラメータで多数のフィードバックループを用いて、世界のモデルを構築するプロセスのことである。

出所:上記書籍内

ここまで来ると、「認知」だけでなく「予測」的な意味合いも持っていて今回の実験とも符号できそうです。

実は、上記2つを合体させたような理論で個人的に注目しているのがジョフ・ホーキンスが唱える脳理論です。

以前にも軽く紹介しました。

脳の大脳新皮質を縦に貫くカラム(柱)の単位が、上記で言う「世界モデル」を学習し続け、最後はカラム間のコンセンサスが我々の主観的な心的イメージにあたる「意識」である「思考」である、という仮説です。

出所:上記Note投稿

ちょっと今回の実験と粒度が噛み合うかがわかりませんが、徐々にいくつかの研究の川が1つになって脳を理解する大海につながりつつある、そんなワクワクを感じる実験結果でした。

今年も脳の解明が学際的な研究で進んでいきそうです。

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