「伝えたい相手」に「伝わる言葉」しか使わない
大手マンションメーカー広報15年、地方の小さなPR会社経営16年のPRプランナーが中小企業の広報PRに役立つ情報を発信しています。
■受け手に理解されなければ始まらない
広報PRは、自社の情報をマスメディアやネットメディアを通して広く社会に届け、有益な情報が循環・拡散していくように仕掛けていくことです。広報PRがうまくいかない会社にはそれなりの理由があります。
その理由のひとつが「発信している情報がわかりにくい」ということです。
情報は、受け取る側の人が理解し納得できなければ、そこから先に広がることはありません。
■ 取材が来ない理由は明らか
先日、ある会社の方から「プレスリリースを発信しているけれど、まったく取材に来てもらえない」というお悩みを聞きました。そこは営業支援系のソフト開発をしている会社で、クライアントとなる中小企業が導入すれば来客数の増加や客単価のアップにつながるソフトを制作し販売しています。
その会社がこれまでに発信されたプレスリリースをいくつか読ませていただいたところ、取材に来てもらえない理由がすぐにわかりました。
「○○○○(会社名)、リマインダ○○を導入した○○エリアマーケティングシステムをローンチ!」
タイトルを読んでも、何が言いたいのかさっぱりわかりません。それに続くリードと本文にも「ソフトウェアインシュアランス」、「カスタマーエクスペリエンス」、「イニシャルコスト」、「○○デバイス」などのカタカナがズラリと並んでいて、デジタルに疎い私には何が書いてあるのか理解すらできません。読み始めて数秒で完全に思考が停止してしまいました。
■平易な日本語を選んで置き換えよう
私がなんとかひととおり読み終えたあと、その人は「このソフトは集客に困っている中小企業さんに役立ちます。特に店頭営業型の会社やお店なら10日もあれば効果が出始めます。初期費用は○○千円、毎月○○万円ほどで収支が改善します。今、コロナの影響で集客が減っているお店の経営者の方々にぜひ知ってほしいんです」と熱く語ってくれました。
「そのへんのこと、リリースに書いてありましたっけ?」と私。「あ、いえ、それを書いてるんですけど・・・」
「商圏分析」「保守サービス」「顧客満足」「端末」「販売開始」などと普通に日本語で書いてくれれば理解できるのに、見慣れないカタカナで語られると肝心の内容が頭に入ってこないんです。
何より、このサービスを使ってほしいのは普通の中小企業の経営者や飲食店などのオヤジさん。それならもっと噛み砕いた日本語で表現しないと、理解してもらえないし、伝えるべきことが伝わらないのです。
■メディアの記者も専門知識は一般人と同レベル
辛うじて、デジタル系の専門雑誌や業界紙の記者であれば業界用語が理解できるかもしれませんが、一般の新聞やテレビなどのメディアの記者は、ほぼ私と同じようなレベルと思っていただいた方が良いと思います。
つまり、大半のメディアの記者はタイトルやリードだけチラッと読んで、理解できない言葉があれば、取材しようという気にもならず、右から左へスルーして終わりです。
■ わかりやすい言葉・表現を選んで使う
デジタル界の大御所であるスティーブ・ジョブスやジェフ・ベゾスなども、人前では極力、難解な言葉や表現は使わず「短くて強くて、わかりやすい、象徴的な言葉を厳選して語り続ける」ことを心がけていたようです。
自社PRがうまい広報は、普遍的に使われている言葉しか選びません。伝えなければならない内容を、伝えたい人に伝わるように、簡潔に発信しなくては結果が出ないことを知っている。だから、全部が全部伝わらなくても、「一番伝えたい要点」が相手にきちんと伝わるんです。
逆に、PRが下手な広報は、自分の知識のすべてを語ろうとするから、プレスリリースが意味不明になり、記者も読む気をなくし取材されないんです。
広報力を高めるためには「伝えたい相手に、伝わる言葉しか使わない」ことを心がけてください。
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