ダイ岡本

フランスパンかかえた女のひとと、曲がり角でいつぶつかってもいいように、それまでの自分を…

ダイ岡本

フランスパンかかえた女のひとと、曲がり角でいつぶつかってもいいように、それまでの自分を一生懸命生きる。ミラクル・ポップチューン・ストーリーを書きます。

マガジン

  • YOKOHAMA サイドストーリー

    横浜で過ごした2年間で出会ったひとたちのお話。

最近の記事

恋しくて

最近のこと。もうおそらく会うことがないひとがいる。 ぼくはそのひとをかなり信頼していたから、喪失感が大きい。 趣味とか、生き方は全然違うけど ひとつのことから、何かを思うポイントが すごく近かった気がする。 だから、会えなくなったいま、まさに 「思い出すたびなにか胸につかえてるだけ  それでなにか思っても もう伝えられないだけ」 と思ってる 5秒に1回。 今日も変なレポート書いたり、かなり好きじゃないズルい営業の女性と契約についてやりとりしてるときも、ずっと思っていた、これ

    • MAN OF THE YOKOHAMA

      浪人時代。橋本は神奈川のニューヨークと言ったら、好きだった女の子が喜んだ。1人暮らしをして横浜線から遠ざかって、横浜線が橋本に到着するたび、橋本は神奈川のニューヨーク、とぼくは思う。橋本に海はないし、その子と会うことはきっと2度とないのに。 大学時代。レトロなボブが可愛かったから、髪型オブザイヤーと言ったら、その日はじめて会った、パピコをぱきってしてくれた女の子は八重歯をみせて笑い、「片方はくせっ毛なんでしゅ」と言っていた。千歳烏山の「好きです。つぼ八」で。 それからぼくは

      • うる、かもしれない

        悩んでいたことが、知恵となって助けてくれる瞬間がたまにある。 ラブリー・ガールが泣いていたときも、夢の中で指輪をはめるポーズをされる前にトリュフ大根を食べていたときも、後輩がキレているときも、ずっと考えていた悩みが彼らの話を理解する手助けをしてくれた。 日焼けと二日酔いと、提出書類が襲いかかってくる週明けの火曜日。 ぼくは大好きなひとに呼ばれて、楽しい仕事についての話をしていた。 今回出したアイデアは全部、昔恋をしていた女の子との思い出から来ていたものだった。パピコをぱきっ

        • 海をみにいこう

          赤羽で親友と飲んだ金曜日、日曜日にある卒業生のライブに誘った。 尊敬しているひとが困っていたから。 親友は、すぐに行くと言ってくれて、このひとは本当にいつも頼りになるな、とうれしかった。 日曜日のライブは楽しかった。大学の大好きなひとと会社の大好きなひとたちが話している光景をみると、生きててよかったって思います。 帰り道、後輩の輝く笑顔を思い出して、今日をもう一回やりなおしたいなーと思いながら渋谷から歩いた。渋谷からあんなにいい気分で歩いたのは、もしかしたらはじめてかもしれな

        マガジン

        • YOKOHAMA サイドストーリー
          3本

        記事

          予想

          ひとに関して、予想をするのが好きだ。希望的観測と絶望的観測をたくさんたくさん繰り返して、たいていのことは、そのどちらでもなく、何事もなく日常に帰っていく。 何度も言うように、ぼくの心や脳ミソは、これまでに影響を受けた物語やひとでできている。そんな心や脳ミソから生まれる希望的観測はなかなかすてきにできていると思うんだけど、たまに、それを超えてくるひとがいる。 17さいのころ、「なんでそんなに美人なんですか?」って当時好きだったお姉さんに言った。 「毎日豆乳飲んでるからね」さ

          オモイデ・サファリ

          最近、思い出話をする機会が多い。 思い出話のなかのぼくは、いまのぼくと同じひとだとは考えにくく、いつも、好きな映画を観ているような気分で思い出話をしているよ。 眠れない夜は文章を書くに限るさ。今日もまた、サウンド・オブ・サマーを聴きながら。サーフィン・サファリ、これがビーチ・ボーイズではじめて好きになった曲だってこと、思い出した。 18さいの夏が終わるころ、好きなひとと連絡がとれなくなってしまった。大丈夫だよって頭をぽんぽんしてくれたのは、孤独すぎたぼくのつくりだした、夢

          オモイデ・サファリ

          サガミワン・ガールズ

          1週間くらい前のこと。 暑い日だったね。藤沢駅。東海道線を降りて、小田急線に乗り換える。明日からは外出のときも、ジャケットやネクタイをやめよう。 暑い風が吹いていた。 藤沢とか、鎌倉、逗子っていう場所は、常夏の町なんだよ、ぼくのなかで。いつも夏。太陽が近くて、少し先の景色はもやもやと揺れ、なにより時間の流れがゆっくりしている。 このあたりに来るときはいつも夏。浪人のころ授業をサボって海に来たのも夏の終わり。藤沢本町では8月しか遊んだことがないし、逗子マリーナでの夏休みも暑い

          サガミワン・ガールズ

          サウンド・オブ・サマー

          昨日くらいから夏だ。 高校に向かう道すがら、無意識に流した音楽は、ビーチ・ボーイズのベストアルバム、Sound Of Summer。 前の部署のちょっと仲のよかったひとに誘われた飲み会。話したことのない非常勤講師の女のひとがいた。 真ん中でわけたボブにヘアバンド、ストライプのシャツを大きめに着て、ビールといっしょにライスを食べていた。ミニマルでさっぱりしたそのお顔。18歳の夏に好きだったひとを思い出す。年もちょうどそのひととおんなじで、不思議だった。 大丈夫だよとぼくの頭を

          サウンド・オブ・サマー

          ニュー・ヨコハマ・パラダイス

          偶数月は毎朝、本部に立ち寄ってから出勤するように命じられる。「はい!任せてください!」元気よく返事をしたものの、ぼくは倒れてしまいそうだった。 翌日、本当なら1番乗りで出勤できていたのに、頭の中でぶつぶつ言いながら。文句の一つでも、言いたいよ。電車を待つ横須賀線のホーム。 ぼくの大好きなひとが、千葉行きの電車から降りてくる。なんでいるのと不機嫌そうに振る舞っているけど、うれしそうなのがわかった。 ついさっきまで嫌だったこの仕事が、毎朝楽しみになる。 これまで生きてきた中

          ニュー・ヨコハマ・パラダイス

          ちょっと似てると 思わない?

          クリスマスには、ケンタッキーを食べたい。 年上の女性は賢く、やさしい。 喫茶店ではクリームソーダ。 デートには新しいシャツを着ていく。 ぼくの頭の中には、いろいろな勝手なイメージがある。そのなかのひとつ、デザインの学校に通う女の子、そのイメージにぴったり当てはまる女の子が現れた。 現れたといっても、お話をするわけではない。高校生のころ、他クラスの、イケメンサッカー部と付き合っているダンス部の女の子をかわいいなとちら見するくらいの、一方的な関係だ。 ぼくはいつも、その女の子が

          ちょっと似てると 思わない?

          輝かせてたいよ

          チョコボールを開けたら、銀のエンゼルが出た。 ぼくはうれしくなって「あの日の天使が笑ってる」というある歌のワンフレーズといっしょにストーリーにあげた。 今年の夏は聴かなかったなと、その歌のライブ映像をYoutubeで観ていると、 おすすめの動画におとぎ話のセレナーデが出てくる。 好きだったことも忘れていた曲だ。 久しぶりに聴くとやっぱり好きだった。 たまたま就職活動のときによく聴いていて、2次面接の前に、カラオケで履歴書の音読をしたりセレナーデを歌っていたことを思い出して、

          輝かせてたいよ

          10年前のぼくは目を輝かせてフラワーズインザウィンドウとか聴いてた

          ニュースで、高校野球の予選が始まったことが告げられると、ぼくの夏がはじまる。 10年前は高校3年生だった。万年1回戦負けの母校・都立南平高校は、奇跡的に2回勝ってちょっとしたフィーバーが起きていた。 プロ注目の選手がいる、強敵・府中工業との3回戦は平日。先生は、吹奏楽部以外は公欠にならないから授業に出なさいよと言う。 試合の日、野球部も吹奏楽部も少ない3年7組はガラガラだった。 そのとき思った「大学では胸を張って母校を応援したい」という気持ちはいまでもはっきりと覚えている。

          10年前のぼくは目を輝かせてフラワーズインザウィンドウとか聴いてた

          愛の物語について

          ぼくの通っていた町田の予備校。自習室から小田急線が、みえた。 一度だけ、授業をさぼって小田急線に乗り、海をみにいったことがある。 海をみたい、とか、そういう、センチメンタルなことを思う回数は、ほとんどなくなってしまった。 最近はというと、どうやったら異動できるのかと、そういうことしか考えていない。 有名な詩人は「自分の感性は自分で守れ」と言ったらしいけれど、ぼくはそう思わない。 ひとの感性というのはお互いに影響を与え、受け、すこしずつ変化していくものだと思う。 ぼ

          愛の物語について

          春と調布とアルペジオ

          いよいよ春になって、ぼくが思い出したのは、去年新人たちを迎えるために横浜の親友と準備をしたことや、新入社員のときの入学式だった。 社会人になってからの思い出ばかりを思い出すことに気がついた。それより前のことは、昔観たすごく影響を受けた映画なんかのようになっている。 何年か前に聴いて、いつかそのときが来ると思った「やがてぼくらが過ごした時間や 呼び交わしあった名前など いつか遠くへ飛び去る 星屑のなかのランデヴー」。小沢健二はすごいなあ。ぼくがいまあんまり思い出せない大切な思い

          春と調布とアルペジオ

          中目黒にて

          カジヒデキがやっていた「ブリッジ」。あんまりピンとこない。 ぼくはいま、ここまでの人生でいちばんしあわせなんだとおもうけど、常に不安がある。仕事のことだ。日に日に不安は大きくなる。ぼくが入った時と変わらない仕事しかできないでいるうちに、どんどん置いていかれるような気がしている。 ブリッジがピンとこない理由を考えた。なにかぐわっと記憶に残ることがあって、その時にブリッジが流れていたら、好きだったかな。ぼくはフリッパーズギターが好きなだけで、フリッパーズギターではないああいう

          中目黒にて

          Magic

          何年かぶりに浅草に行った。 17歳のころ、初めてのデートで浅草寺に行ったことがある。 その頃スカイツリーは建設途中。昨日のスカイツリーはオリンピックカラーにライトアップされていた。 もうそのときに好きだったひとを思い出すこともかなり少なくなってしまったけれど、いまのぼくの生き方にとても多くの影響を与えている、 思えばぼくは、時々起きる魔法みたいなことに生かされていた。どのひとと恋をしていたときは間違えなく魔法を使っていたし、魔法にかけられていた。そ 最近は、そんな魔