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MAN OF THE YOKOHAMA

浪人時代。橋本は神奈川のニューヨークと言ったら、好きだった女の子が喜んだ。1人暮らしをして横浜線から遠ざかって、横浜線が橋本に到着するたび、橋本は神奈川のニューヨーク、とぼくは思う。橋本に海はないし、その子と会うことはきっと2度とないのに。

大学時代。レトロなボブが可愛かったから、髪型オブザイヤーと言ったら、その日はじめて会った、パピコをぱきってしてくれた女の子は八重歯をみせて笑い、「片方はくせっ毛なんでしゅ」と言っていた。千歳烏山の「好きです。つぼ八」で。
それからぼくはなんとなく、特別なものには「なんとかオブなんとか」を進呈している。
今日は、MAN OF THE YOKOHAMA の話をしたい。

7月あたま。ぼくは新体制で改革を命じられ参っていた。改革だけならまだよかった、いなくなった2人分の仕事もしなくちゃならなくて、体も心もへとへとだった。
そんなときに、元隣人に「下準備は女の子が家に遊びにきてくれるとき以外したくない」と言うと、彼は、「下準備の岡本じゃないですか」と言った。枯れた心がうるおっていくのを感じた。そのときに、このひとは、「MAN OF THE YOKOHAMA」なんだな、と思った。
横浜ではいろんなひとに出会い、まだ出会うかもしれないけど、ぼくは、そのとき、自然に思ったのだ。ああ、このひとなんだ、と。

「タバコやめろー」途中でばててランニングホームランにならなかった友人に飛ばすヤジに、今日も白旗をあげた。
相談した悩みごとについても、ぼくとその相手のことをよくみた助言をくれた。眩しかった。ぼくは最近1日1日自信がなくなっていて、ぼくが遊んでいる間に、彼はどんなものを積み重ねてきたのかと思った。
MAN OF THE YOKOHAMA。いつかぼくが結婚したら、相手が誰でもボーナス分お祝儀をもらいたいし、葬式もきてほしい。

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