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セッション定番曲その71:Your Song by Elton John

歌モノ系セッションでの人気曲。ゆったりとしたテンポのラブソング。誰に向けた歌なのでしょうか。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:1970年、Elton Johnは素朴なピアノマン

1970年代から2020年代までヒットを飛ばし続けているエルトン・ジョン。時代ごとに大胆にビジュアルやパブリックイメージを変えていますが、デビューした1969-1970年頃はまだピアノ弾き語りのシンガーソングライターというイメージでした。歌声やプロフィール写真から受ける印象は素朴な好青年という感じ。

この曲もまさにそういうイメージの歌です。

(その後、派手な衣装のロックンローラーになった時はビックリしました)

ポイント2:Bernie Taupinという詩人

エルトン・ジョンとずっとパートナーとして作詞を担当しているバーニー・トーピン。ポップス曲の中で、イメージを膨らませる言葉を使いながら、「文学作品」のような歌詞を書く人です。ある意味で、Elton JohnはBernie Taupinの描く世界観を表現する為に曲を書き、歌っているとも言えます。意外なことに初期の頃からエルトンは歌詞を書くのが苦手で苦労していたようで、このパートナーシップは幸運だったと言えます。エルトンは「コンセプトアルバム」のような作品を幾つか発表していますが、制作時にそういうものを狙ったのではなくて、バーニーの歌詞を活かした曲を並べていったら、いつの間に統一の世界観のあるアルバムになっていたという感じだったのではないでしょうか。

まだ売れる前の2人は同居していたのですが、バーニーはエルトンの性志向(ゲイ/バイ)に早々に気が付いていて、世間に知られる前にそういう点も歌詞に反映されていたようです。

この歌詞もよく聴くとお互いの性別を明示するような言葉(he, sheなど)は使われていません。この文章の中では一応「僕」と書いていますが、歌い手は女性でもそれ以外でも構わない訳です。

ポイント3:語りながら歌う

「弾き語り」って不思議な言葉ですよね、大半の人は「弾き歌い」なのに。この曲はエルトンがピアノを弾きながら、時々「語りかけ」て、時々「歌いかける」ような歌になっています。

I don't have much money,
but boy if I did

If I was a sculptor, heh
But then again, no

いずれも「歌」→「独り言/語り」みたいな感じですね。

Anyway, the thing is, what I really mean
ここなんかは、まさに語り口調ですね。

この曲を最初に練習した時にどうも歌いにくいと感じるのは、歌詞とメロディの譜割りが合っていないというか、意図的にメロディから外れて語り口調になる箇所があるからだと思います。とすると、ますます歌詞を自分のものにして、気持ちを込めて歌わなきゃダメということですね。

ポイント4:This is your song

My gift is my song and this one's for you
And you can tell everybody
This is your song
これは君の為に(僕が)書いた歌だと、みんなに自慢してくれてもいいよ。

夢は色々あるけど、貧乏な「僕」に出来ることは、君への思いを言葉にして曲を書いて歌うことだけ、と。歌手を目指す若者なら誰でもやった経験のある話ですね。

「Your Song」というシンプルなタイトルにはそういう思いがこめられています。

ポイント5:歌詞のポイント

I don't have much money, but boy if I did
I'd buy a big house where we both could live
「もしも」お金を持っていたら、
ふたりが住める大きな家を買う「のになぁ」・・・

こういう「仮定の話」って、いかにも英語の歌詞っぽいですね。「仮定法過去」ってやつです。
もしも・・・から広がる夢を語る。
その夢が遠ければ遠いほど、歌としては素敵なものになる。

バーニー・トーピンの歌詞はこの時点ではまだまだシンプルなものでしたが、次第に技法を駆使してイメージを膨らせるものになっていきます。

ポイント6:回りくどい

You see I've forgotten
If they're green or they're blue
Anyway, the thing is, what I really mean
Yours are the sweetest eyes I've ever seen

最初に「何か複数のもの(they)」が「緑色か青色」だ、と出てきます。それがどっちだったか忘れてしまったよ、と。その先に進むとそれ(ら)が「君の素敵な瞳」だということが分かります。最初に「色」を持ってくることで聴く人のイメージを膨らませておいて、じらして、最後に答えを持ってくるという構成。あざといですね。

ポイント7:「僕」は何者?

If I was a sculptor, heh
But then again, no
Or a man who makes potions in a travelin' show, oh

「sculptor」は「彫刻家」、発音は「skʌ́lptər」です。
「a man who makes potions in a travelin' show」は「旅回りの一座で、(魔法の)薬を売る人」という意味だと思われます。香具師ですね。

これも唐突に「もしも・・・」という話が出てきますが、そこで挙げる職業は極端に変なものばかり。で、「いや、でも僕に出来るのは歌うことだけなんだ」と言う訳です。旅回りの一座/移動サーカスって色々な歌の中で出てきて、ロマンティックな響きやちょっと不気味なイメージがありますね。旅を続けて、そこに留まらない人達の象徴のような感じ。

ポイント8:様々なバージョンを聴いてみよう

原曲

ライブ録音


Lady Gaga、彼女も実は「ピアノ弾き語りの人」ですね。


Ellie Goulding、彼女なりに歌い崩していて好感が持てます。


Leona Lewis、ため息多めの歌い方。


二宮 愛


福原みほ


Al Jarreau(Live 1993 Version


基本的には「歌ウマさん」達が、原曲に近いテンポやピアノアレンジで歌っているカバーが多いですね。この曲でのエルトンのピアノはLeon Russellの影響を受けていると語られることもあります。

■歌詞

It's a little bit funny
This feelin' inside
I'm not one of those who can easily hide
I don't have much money, but boy if I did
I'd buy a big house where we both could live

If I was a sculptor, heh
But then again, no
Or a man who makes potions in a travelin' show, oh
I know it's not much, but it's the best I can do
My gift is my song and this one's for you

And you can tell everybody
This is your song
It may be quite simple, but
Now that it's done
I hope you don't mind
I hope you don't mind that I put down in words
How wonderful life is while you're in the world

I sat on the roof
And kicked off the moss
Well a few of the verses
Well, they've got me quite cross
But the sun's been quite kind
While I wrote this song
It's for people like you that keep it turned on

So excuse me forgettin'
But these things I do
You see I've forgotten
If they're green or they're blue
Anyway, the thing is, what I really mean
Yours are the sweetest eyes I've ever seen

And you can tell everybody
This is the song
It may be quite simple, but
Now that it's done
I hope you don't mind
I hope you don't mind that I put down in words
How wonderful life is while you're in the world

I hope you don't mind
I hope you don't mind that I put down in words
How wonderful life is while you're in the world


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