小金沢智

キュレーター。「現在」の表現をベースに据えながら、ジャンルや歴史を横断するキュレーションを得意とする。 https://www.koganezawasatoshi.com/

小金沢智

キュレーター。「現在」の表現をベースに据えながら、ジャンルや歴史を横断するキュレーションを得意とする。 https://www.koganezawasatoshi.com/

    最近の記事

    「福島」も「東北」も「震災」も超えて(「写真展 福島、東北 写真家たちが捉えた風土/震災」福島県立博物館、2023年)

    現在、福島県立博物館で「写真展 福島、東北 写真家たちが捉えた風土/震災」(以下、「写真展 福島、東北」と略す)を開催している。昨年、東北芸術工科大学 開学30周年記念展「ここに新しい風景を、」を企画・担当した際、「風景」という言葉を象徴的に使ったが、「写真展 福島、東北」のタイトルで用いられている「風土」、「震災」も、私が展覧会を作っていくにあたって大切な要素だった(「風土」は、私が太田市美術館・図書館で「HOME/TOWN」展を企画して以来、ずっと離れない言葉でもある)。

      • [2022年]主な仕事まとめ

        三が日も過ぎ、遅ればせながら、2022年の主な仕事をまとめた。 こう書き記してみると、数は決して多くないが、なかなか大変な一年だった。「都美セレクション グループ展 2022 たえて日本画のなかりせば:東京都美術館篇」(6-7月)、「『flows』を見る/読む」(8月)、東北芸術工科大学 開学30周年記念展「ここに新しい風景を、」(9月)と、キュレーションと自主企画が連続し、その準備や最中の期間にも、『たえて日本画のなかりせば:上野恩賜公園篇』(6月)と『東北画は可能か?』

        • 祖父のこと——戦争から遠く離れても

          1927(昭和2)年生まれの母方の祖父が大晦日に亡くなった。享年96。群馬県前橋市で数年前まで農業に従事していた祖父の家には、私が進学のため上京するまで、お盆、お正月の年2回遊びに行くのが恒例となっていて、それに限らず、ある時期までは、(祖父は理容師ということではないのだが)髪を切ってもらうなど、かわいがってもらったものだった。 お盆に、祖父は戦争の話をよくした。10代の頃、申し訳ないが興味をもてなかったその話は、大学で戦争画についての講義を受けてから、次第に関心を抱くよう

          • 同じ歌、新しい歌

            40歳になった。いよいよ大台だ、このままでいいのかという気がする、というLINEを同い年の学友へ送る。少し早くこの夏に40歳になった友人は、(40歳というのは、30歳になったときより)ショックが大きかった、と言った。わかる。 いっぽう、実は、早く40歳になりたいと思っていた。40代と言ったほうが正確か。これは、仕事と身体と両方に関わることで、前者は早く仕事ができるようになりたいという意味で、後者は早く見た目相応に見られたいという意味で。 20代後半くらいからちらほら確認で

            映像「『flows』を見る/読む」のこと④

            今回の映像では、シンガーソングライターの前野健太さんのこんな言葉が編集で抜き出されている。これは、トークからライブに移り、私から前野さんのご紹介をしたほとんどすぐ後のもので、映像では「戦争が夏でよかった」が続いているが、実際には、このあと、「夏が洗い流したらまた」、「東京の空」、「天気予報」、「戦争が夏でよかった」、「虫のようなオッサン」と5曲を歌っていただいた。「戦争が夏でよかった」は私からのリクエスト、「虫のようなオッサン」は予定時間を超過する中でのアンコール。そして合間

            映像「『flows』を見る/読む」のこと③

            ◉映像「『flows』を見る/読む」 https://youtu.be/FacHmillP5k 出演:小金沢智、平野篤史、吉江淳、前野健太 会場:iwao gallery 撮影・編集:岡安賢一 スペシャルサンクス:山本直彰 収録:2022年8月19日・20日 公開:2022年12月10日0時0分 32分13秒

            映像「『flows』を見る/読む」のこと②

            本日2022年12月10日、映像「『flows』を見る/読む」をYouTubeで公開した。2日間の記録を32分13秒の映像にまとめてくれたのは、岡安賢一さん。彼とは、彼の拠点とする群馬県中之条町の芸術祭「中之条ビエンナーレ2013」に、私がイマジンというグループで参加した際に知り合った。そのとき、私が立案した企画を岡安さんは面白く思ってくれ、その後、初めて会ったのはいつ・どのような機会だったか覚えていないが(岡安さん、ごめんなさい)、私が2015年、同じく群馬県に新設される太

            映像「『flows』を見る/読む」のこと①

            2022年12月8日20時40分、今年の夏に、iwao galleryで行った自主企画「『flows』を見る/読む」の記録映像を何度も見ながらこの文章を書き始めている。無性に書きたくなってしまった。映像の撮影・編集は岡安賢一さんにお願いし、イベント「『flows』をめぐって」にご出演いただいた方・関係者の方々に確認をしていただきながら、公開の準備を進めてきた。まだこの時点では公開しておらず、明後日2022年12月10日、『flows』の主役と言っていい、私の父・小金沢啓一の命

            [2022/12/25更新・追記]私のいる場所について(「門眞妙 まあたらしい庭」Gallery TURNAROUND、2022年)

            *文中の内容に筆者の誤認があります。文末の註釈もご一読ください。 Gallery TURNAROUNDで門眞妙さんの個展「まあたらしい庭」を見た。門眞さんの作品を見るのは、新宿眼科画廊での「故郷」展(2021年2月)以来のことで、その半年前に同じくタナラン(とGallery TURNAROUNDは略されている)で開催された宏美 門眞妙 二人展「swimming」展(2020年6月)では、私は門眞さんのドローイングを一点購入している。その作品を、最近、大学の個人研究室の壁にか

            転載:東北芸術工科大学 開学30周年記念展「ここに新しい風景を、」のための見取り図

            小金沢智(本展キュレーター、東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース専任講師) はじめに 『広辞苑』を紐解くと「風景」の項目は以下のように説明されている。 では「けしき」とは何か…と辞典を繰っていくと際限がないのだが、ここではひとまず、「風景」がある場所の「けしき」̶̶「ありさま」だけではなく、人の様子までも含むということを確認しておきたい。さて、写真家・かんのさゆりは、本展のためのステイトメント(展覧会場未掲示)で、風景と故郷を紐づけるようにしてこのように書いている

            寄稿:私家版写真集『flows』について(吉江淳)

            「flows」という写真集とは何なのか、「flows」を見る/読むという企画とは何だったのか、ということを会期中に幾度となく考えていた。 勿論、それらは小金沢智という人物によって生み出されたことは間違いがない。 前野さんも言っていた通りそこに意図は大きくあるものの、確信犯的だったり予定調和といった感じは一切しない。まるで海や大きな川に自ら小舟を浮かべて流れのままに彷徨っている、先へ先へと流れ進んでいるのを受け入れているような印象を受ける。 この写真集には中心がない。亡くなっ

            私家版写真集『flows』について(note版)

            写真集を作った。作ったと言っても、写真を撮ったのは私ではなく、デザインをしたのも私でもない。私はそういう具体的なことは何もできない。どなたかにお願いして、その物事に関わっていただいて、作っていただく、ということしか私にはできない。 これまで、写真集を作ろう、と思ったこともなかった。2021年12月10日、父が亡くなって、ここ数年ほとんど実家に帰らず、数年来病気の父と会わなかった私の後悔から、「父の葬儀の1日の写真を撮ってもらいたい」と思い、ほとんど無理やり写真家の吉江淳さん