マガジンのカバー画像

ちあきなおみ 歌姫伝説

44
ちあきなおみ~歌姫伝説~をまとめました。
運営しているクリエイター

2022年9月の記事一覧

ちあきなおみ~歌姫伝説~25 「第28回紅白歌合戦」での出来事

ちあきなおみ~歌姫伝説~25 「第28回紅白歌合戦」での出来事

 一九七七(昭和五ニ)年十二月三一日、ブラウン管に映し出されたある衝撃的な光景が、その後私の心の中に強烈な残像を刻みつけた。
 そのテレビ番組は、年末の締めくくりと言われる、「NHK紅白歌合戦」である。
 ちなみに二八回目を迎えたこの年のテレビ視聴率は、関東で77%(ビデオリサーチ調べ)を記録している。
 テレビ画面には、これまでに聴いたことがない、歌謡曲でもなければ、フォークソングでもロックでも

もっとみる
ちあきなおみ~歌姫伝説~24 中島みゆきとの邂逅

ちあきなおみ~歌姫伝説~24 中島みゆきとの邂逅

「夜へ急ぐ人」のシングル発売に向けて、ちあきなおみの意志を汲んで動いたのは郷鍈治だった。

 一九七三(昭和四八)年末、兄、宍戸錠の紹介で運命的に出逢ったふたりは、お互いに魂を投げ出し合うかのように、二人三脚でステップを踏みはじめる。
 この頃、ちあきなおみは歌手として、自らを分岐点に立たせ試行錯誤を繰り返していた。

「毎日マネージャーが迎えにきて、現場から現場へ移動して歌って、帰ってきて寝て、

もっとみる
ちあきなおみ~歌姫伝説~23 新たなる刻印

ちあきなおみ~歌姫伝説~23 新たなる刻印

 一九八八(昭和六三)年、ちあきなおみは「伝わりますか」、「紅とんぼ ちあきなおみ 船村演歌を唄う」、「夜霧よ今夜も有難う ちあきなおみ 石原裕次郎を唄う」と、三枚のアルバムをテイチクから発表している。
 個人的見解ではあるが、当時四十歳のちあきなおみの歌唱は絶頂にあると思われる。
 特に「紅とんぼ」(作詞・吉田旺 作曲・船村徹)は、一九七六(昭和五一)年に発表された「酒場川」(B面・矢切の渡し)

もっとみる
ちあきなおみ~歌姫伝説~22 最後の一年・後篇

ちあきなおみ~歌姫伝説~22 最後の一年・後篇

 一九九一(平成三)年十一月十九日から翌月二日まで、東京グローブ座において、ちあきなおみ主演の音楽劇「ソングデイズ」(栗山民也演出)が上演された。
 この公演に関して、「読売新聞」に掲載された、ちあきなおみのインタビュー記事を見てみよう。

 この記事に見られるちあきなおみの言葉は大変興味深い。
 歌と人生を、それぞれの引力を干渉させ合うものとして語る言葉の裏側に、双方の本質を追求した歌手としての

もっとみる
ちあきなおみ~歌姫伝説~21 最後の一年・前篇

ちあきなおみ~歌姫伝説~21 最後の一年・前篇

 一九八〇(昭和五五)年、戦後からつづいた経済成長も一区切り、時流に乗りに乗った日本人の心の向きも、七〇年代の考え方やものの見方から新しい感覚、感性へとバランスを移行しはじめる。「さて、百恵ちゃんも結婚したことだし」といった台詞を、私は何度も大人の口から聞いた記憶があり、山口百恵の引退は大衆文化の中で、明らかに時代のエポックメーキングとなったのは間違いないであろう。
 この年は、山口百恵と入れ替わ

もっとみる
ちあきなおみ~歌姫伝説~20 山口百恵という儚さ・後篇

ちあきなおみ~歌姫伝説~20 山口百恵という儚さ・後篇

「赤い疑惑」は、一九七五(昭和五十)年十月から翌年四月まで、宇津井健主演で全二九話放送され、最高視聴率三〇・九%(ビデオリサーチ調べ)を記録した人気ドラマだった。
 実質上の主役は山口百恵で、主題歌には前記した「ささやかな欲望」(作詞・千家和也 作曲・都倉俊一)のB面に収録された「ありがとう あなた」(同)が起用され、「枯葉がひとつずつこぼれるたびに 悲しいお別れ近づいてます」と歌われる歌詞とドラ

もっとみる
ちあきなおみ~歌姫伝説~19 山口百恵という儚さ・前篇

ちあきなおみ~歌姫伝説~19 山口百恵という儚さ・前篇

 子供心にも、私に現実と虚構を錯覚させる心情的影響を及ぼしたのは、山口百恵という存在だった。
 ちあきなおみの「喝采」で幕を閉じた翌年の一九七三(昭和四八)年、山口百恵は歌謡界にデビューした。
 オーディション番組「スター誕生!」からデビューした、同い年の森昌子、桜田淳子とともに、三人は"花の中三トリオ"と呼ばれ、歌謡界の新しい時代の幕を開けたのだった。
 この花の中三トリオは、一年ごとに、花の高

もっとみる