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【校閲ダヨリ】 vol.28 出典の書き方





みなさまおつかれさまです。

今回は、引用の回(vol. 13参照)と合わせると効果が倍増、むしろ、この事項が漏れていると引用として失格とも言える重要なことをお話しいたします。(書評の際やクレジット書式にも使えます)

引用の回で私は「公開されている文章は引用して自身の論の補強に使うことができる」というようなことを述べました。
引用というアビリティを使用する際に大切なのは、「どんなものから引用したのか、読者がわかるように示す必要がある」ということです。
著作権的な観点での重要性もさることながら、その文章を書いている自分にとっても、少なからずメリットはあります


どんなところが自分のメリットになるのか。それは、出典の文献次第ですが、世間で信用を得ているものであればあるほど、自分の論をパワーアップしてくれることです。

私個人の意見ですが、大人になるにつれ、人は簡単に人の意見を信用することをしなくなっていく傾向にあると思います。

例えば私が「明日は風が強くなるよ」と言ったとします。
それが天気予報アプリを見た上のものであればみなさんある程度信じてくれるでしょうが、「今日打ち合わせで話した取引先の方が言ってたから」という程度だったら、どうですか?
   
その場では「あ、そうなんだ」と言いつつも内心では「申し訳ないけど、自分で後でアプリで調べるわ」と密かに思う人もいるんじゃないでしょうか。
   
   
出典明記の筆者へのメリットというのは、これと似ています。
   

●●大学の●●教授が書いた学術論文 vs 学部生が一生懸命書いた卒業論文
   
オフィシャルHP vs 謎のSNS情報

   
私は、絶対と言うことはできませんが、読者の信用を得やすいのは左側の情報ではないかと思います。みなさんはいかがでしょう。
   
引用をするなら、堂々と出典を明記できるところに当たりたいですね。
   
   
さて、話を戻します。
出典の書き方に関してですが、大きな型は引用の回でお話しした通りです。
   

・著者名(筆者名)
・書名(論文名)
・出版社名

   
基本的にこの情報を盛り込むわけですが、例えば雑誌のように複数のライターが原稿を書く媒体である場合、これらの順序が各自でバラバラだとカッコ悪いので、統一表記を決めてしまうのがオススメです。
   
個人的には
   

『書名』(著者名、出版社名)
例:『欧文活字』(高岡重蔵、烏有書林)

   
   
がわかりやすいのではないかと思います。
   
論文の場合は
   

筆者名 西暦「論文名」
例:小野隆啓(1996)「対照言語学 第2章 日英対照」

   
となります。
   
   
ここで、『 』「 」の違いに気がついた方は良い目をしておられます。
一般的には、『 』は雑誌や書籍自体の名称を示す場合に用い、「 」はその中に収録されている一部分のタイトルを示す場合に用いると使い分けがなされます。短編集の中のひとつの物語を示す場合にも「 」が用いられます。
(応用的に、アーティストのCDなどアルバム全体を示す場合は『 』、その中の1曲を示す場合には「 」を使用しているものをよく見かけます)
   
なので、論文の場合には上記に加えて
   

筆者名 西暦「論文名」(著者名など『掲載元』出版社名)

例:小野隆啓(1996)「対照言語学 第2章 日英対照」(佐治圭三・真田信治(監)『日本語教師養成講座テキスト 言語学』ヒューマンアカデミー)

   
として書き示すことが多いです。
   
   
さて、ここまで読んでいただいた皆さんの中にはおそらく
   
   
そんなことは既知。問題はウェブから引用した場合。これがよくわからないんだよ。
   
   
とお思いの方がいらっしゃるように思われますので、その点に関しても言及させていただきます。
   
   
ウェブから引用した場合も、大枠は同じです。ここは一気に具体例で示してしまいたいと思います。
   

例:PEACS校閲チーム「引用」(『校閲ダヨリ』vol.13 https://note.com/peacs_proofread/n/naa80af899c75)


   
紙媒体と特に異なる点といえば、読者がしっかりと追跡できるようにURLを明記することぐらいです。
さらに丁寧にするならば、随時更新可能なウェブの性質を踏まえて、●●●●年●月●日時点と入れてもいいかと思います。
   

例:PEACS校閲チーム「引用」(『校閲ダヨリ』vol.13 https://note.com/peacs_proofread/n/naa80af899c75 ●●●●年●月●日時点)

   
しかしながら、 note のように、現在は容易にリンクを貼ることができるプラットフォームもありますので、その場合は書名にリンクをつけた上でURLの記載を省略しても良いかと思います。
   
   

例:PEACS校閲チーム「引用」(『校閲ダヨリ』vol.13 ●●●●年●月●日時点)

   
   
   
もとより「こう書きなさい」というルールが明確に存在し得ない出典は言葉と同様、技術の進歩に伴ってその書き方が変化しています。
大切なのは、ここでも本質です。
読む人たちの立場になって、どんな情報が必要かを念頭に置きつつ焦らずものづくりをしていきたいですね。
   
   
それでは、また次回。



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