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【当事者体験談】早期対処があったなら~二次障害に奪われたもの~

こんにちは!子ども未来プランニングのH.Tです!
不登校や発達障害、グレーゾーンのお子さんとご家族への支援やサポートを行っている子ども未来プランニングでは、活動を通して当事者の体験談をご紹介しています。
今回は、スタッフでありADHD当事者の私の子ども頃の体験談です。

私がADHD(注意欠如・多動症)と診断されたのは20代前半、社会人になってからでした。
診断が遅れたことにより、長年悩んでいた生きづらさの原因にたどり着けず、33歳の今に至るまで、人生の半分以上を二次障害で苦しむことになりました。
そんな私の二次障害体験記、今だから思う早期発見・早期対処の大切さをお話したいと思います。


心身不調のダブルパンチ

初めて体調不良を訴えたのは中学2年。
起立性調節障害という思春期に好発する自律神経機能不全が始まりでした。
毎日思うように体が動かず、次第に不登校の状態になりました。
それから、睡眠障害、摂食障害、過活動膀胱、過敏性腸症候群、不安障害、複雑性PTSD、双極性障害、境界性パーソナリティ障害といった精神疾患、
PMS、月経困難症などの婦人科系疾患を含む多くの病気と闘うことになりました。

機能不全家族と葛藤

また家族は所謂「機能不全家族」でした。
幼い頃から、酒乱の父による暴言や暴力を受け、
母親の愚痴を聞きヒステリックな言動を宥め、
姉のストレスの捌け口となり問題行動を止めに入る、
という日々を過ごしました。
何を言われようと、何をされようと、傷付いた姿は見せず、あっけらかんとした性格の娘を演じることで、自分を保っていました。

そのため、家での安息の時間はなく、
自分が一人の子どもとして無条件に愛されることも、ましてや特性に目を向けてもらうことも皆無でした。
そのような家庭環境であったことも、明らかに正しい診断を遅らせた原因であったと思います。

原因のわからない「生きづらさ」

18歳まで東北の田舎町で過ごした私に追い打ちをかけたのは、
情報の少なさと、周囲からの病気の不理解相談機関の欠如でした。

私は発達障害の特性上、易疲労性が強く、慢性的な疲労感を抱えやすいため、学生時代から身体的不調を伴うことは珍しくありませんでした。
しかし、当時は今より圧倒的に情報が少なく、ただの「甘え」「怠け」と誤解され、
「もっと辛い人はたくさんいる」
「病気には見えない」
などの周囲からの言葉に、私の自己肯定感はとてつもなく低下していきました。

当時、病院でIQ検査を実施したことがあり、特性の凹凸があることが判明していました。
しかし、医師からは「成績に問題がないから障害ではない」と言われていました。
誰かにSOSを出そうにも、電車やバスの交通機関の乏しい東北の車社会では、遠くの相談期間まで子どもの足で行くことは不可能に近く、また狭いコミュニティ故の近所の目も厳しかったです。
何度かカウンセリングを受けたことがありましたが、話はその時止まり。
子ども本人と親、双方にアプローチしてくれる相談機関があったらどんなに救われたことかと思います。

障害の診断と自己受容

20代前半で発達障害の診断を受けた時、
「自分の努力不足のせいではなかったのだ」
と半ば安堵に似た気持ちになり、肩の荷がストンを下りた感覚を強く覚えています。
私は不注意優勢型のADHDであり、ケアレスミスを頻発する・注意を維持することが困難・課題や活動の順序を立てる能力が乏しい・持続的な精神的努力の維持を要する課題に取り組むことを避ける・容易に注意が逸れる等の症状があります。
不注意優勢型のADHDは女性に多いとされ、しばしば本人の性格の問題と誤認されやすく、大人になるまで気が付かれにくいという特徴があります。

それを知ってから、発達障害について本やインターネットを調べ漁り、
今ではごく当たり前の知識・情報にやっと辿り着くことが出来ました。
よく出てくるキーワードを覚えて「今自分はこういう状態なんだ」と知り、陥りやすいサイクルやメカニズムを時間をかけて自分なりに言語化し、少しずつ人に説明できるまでになりました。
しかし、子どもの場合、子ども自身がそれを行うのは非常に困難で、そこはやはり親や周囲のサポートが必要不可欠でしょう。

早期発見、早期対処は何より大事

今の時代、就学前に発達障害の診断を受けたり、療育を受けたり、普通学級とは違う選択肢を選ぶこともできるでしょう。
特性に合った環境で二次障害を防ぎ、適切なサポートを受けながら自分との向き合い方を学ぶことができれば、社会適応に必要な力をつけていくことができるはずです。
私のように、心身に膨大なダメージを負うリスクも最小限で済むかもしれません。今の私は、積み重なった幼少期のトラウマ・疲労蓄積・バーンアウト・学習面でのつまづきによる自己肯定感の欠如で、通院や薬が欠かせない生活を送っています。

もし早期発見と早期の適切な対処があったなら、
得意であった英語を伸ばしてやりたいことを見つけていたかもしませんし、
「働き盛り」と言われる年齢で叶えられたであろう自己実現は、何物にも代えがたい人生の喜びになっていたかもしれません。
これまで二次障害の治療に費やした多額の費用、失われた時間はもう返ってはきません。ボキボキに折れた自己肯定感の回復やトラウマ治療には、今後もなお長い時間が必要になることでしょう。
理解があり協力的な夫と出会い、結婚したことが唯一の救いですが、夫の存在がなかったら、今頃どうなっていたか想像するのも怖いです。

最後に

防災訓練では、たくさんの備蓄を用意し、いざいという時の知識を身につけておくことが大事と習いますよね。発達障害や精神疾患においても、それと同じくらい備えておいていいのです。
「そのくらいで病院を受診するなんて。」と思わず、風邪かな?と思ったら病院を受診するのと同じです。
初期症状を見過ごしてしまい、その後何の準備もなく体当たりで壁にぶつかり続ける損失の方が遥かに大きいです。
今の時代の多くの子たちが、早期発見と適切な対処を得て、笑顔いっぱいの自分らしい生き方を謳歌して欲しい。そう願っています。

「子ども未来プランニング」とは?

上述の通り、私自身も学生時代に医療機関への受診をしているものの、そこでの対応は残念ながら、その後の状況改善にはつながりませんでした。多くの人は最初の相談先で解決できなかった場合にあきらめてしまうケースも多いのではないでしょうか。
専門的な知識を持って、様々な角度から現在の課題を整理分析し、解決の糸口を一緒に探してくれる相談機関が身近にあれば、当時の生きづらさは軽減できたかもしれませんし、二次障害は防げるものだったかもしれません。


私たちの運営するサービス「子ども未来プランニング」は、発達障害やグレーゾーンなど、特性のあるお子様とご家族のための『オンライン教育支援1on1サービス』です。

発達障害に関して専門知識のあるスタッフが、お子様やご家族の悩みに寄り添いながら、そのご家庭にとってその時に必要な情報の提供や、学校など周辺環境への相談・調整の仕方、学校以外の居場所づくりについて、などをアドバイスさせていただきます。
また「今」から「未来」へ目を向けて、お子様の今後の進路や将来についても一緒に計画を作成し、実現に導くまでの教育支援を行っていきます。

現在、サービス利用前の無料オンライン相談も実施しております。
まずは気軽にご相談ください。

▼子ども未来プランニング:サービス紹介

また、定期的に不登校をテーマにしたセミナーも実施しております。
こちらも参加無料となっておりますのでご参加ください。

▼子ども未来プランニング:セミナー案内


参考

医療法人社団 和啓会


星野仁彦.発達障害に気づかない大人たち,祥伝社,2010,252p.
星野仁彦.知ってよかった、大人のADHD,VOICE新書,2015,381p.