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三島由紀夫論2.0

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2022年2月の記事一覧

三島由紀夫の『宴のあと』を読む 「詩」の物語

三島由紀夫の『宴のあと』を読む 「詩」の物語

庭のぐるり

こんな朝の散歩は、かづの安全性の詩だったのである。

 三島由紀夫という「詩」が、何もない庭でとじられたことはいささか象徴的ではなかろうか。死の一週間前の最後の対談では、「もう何もない。くたびれちゃった…」と消え入るように言っている。『宴のあと』はそのかなり手前にあるのに、既に偶然にか、「終わり」を描いた作品になってしまっている。また少年詩に始まった三島文学が、政治や選挙や男女のしが

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三島由紀夫の『金閣寺』を読む⑦ 不自由な凡庸さを巡って書かれた青春小説の金字塔

三島由紀夫の『金閣寺』を読む⑦ 不自由な凡庸さを巡って書かれた青春小説の金字塔

 いよいよ最終章、第十章に入る。結末は解っているのになんだかわくわくする。

大癋見 おおべしみ こんな顔。

顴骨 かんこつ 頬骨

根方 ねかた 根本

撃柝 げきたく  拍子木を打ち鳴らすこと。

儔い たぐい

あおのけに倒れ

 小林秀雄との対談で、三島由紀夫はなぜ溝口を生かしたのかという小林の問いに対して、なぜかそうなったと答えている。三島は最後の一行をピシッと定めてから書くというスタ

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三島由紀夫の『金閣寺』を読む⑥   有為子は留守だった

三島由紀夫の『金閣寺』を読む⑥   有為子は留守だった

 いよいよ第九章に入る。

食堂 じきどう

火廻要慎 ひのようじん

天歩艱難 天運に恵まれないために非常に苦労すること。今の私のようなものだな。いや、

 これ、当選したからそうでもないか。

簓 ささら 竹の先を細かく割って束ねたもの。

 西法太郎の『三島由紀夫事件 50年目の証言―警察と自衛隊は何を知っていたか』(新潮社、2020年)を読んで意外だったのは、三島にもう一つの遺書があり、そ

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三島由紀夫の『金閣寺』を読む⑤ ギリシャをあこがれてはならない

三島由紀夫の『金閣寺』を読む⑤ ギリシャをあこがれてはならない

第八章はこう始まる

 そののちさらに私は歩いて、…おもわず「そののちさら」という言葉を調べた。無論「其後更」である。何故開く?

 でまた殷賑がでてくる。

答えはなかった。 いらえはなかった。露伴、独歩、鴎外、鏡花だな。

菊のすがれている素朴な小庭  末枯れた  うらがれた とも。草木が盛りの季節を過ぎて枯れはじめる様子。

閉てきった たてきった

 私が三島由紀夫のロジック展開を観念の空

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三島由紀夫の『金閣寺』を読む④ 私は凡庸さというものが年齢を重ねても、少しも衰えぬのに改めて感心した。

三島由紀夫の『金閣寺』を読む④ 私は凡庸さというものが年齢を重ねても、少しも衰えぬのに改めて感心した。

たとい猫は死んでも  青空文庫では福沢諭吉、高村光太郎、寺田寅彦、夏目漱石、和辻哲郎、宮本百合子らが「たとい」を使っている。

お観水 観水活け 観水型

花々は、狼藉たるさまになった。  落花狼藉で女の腹を踏んだ溝口を思い出させる仕掛けか? と思う間もなく、柏木が落花狼藉を始める。女性に乱暴するのだ。

電車の反響がとよもし  どよもすが現代 響もす とよもすは万葉集だよ。折口信夫、上田敏、三好

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三島由紀夫の『金閣寺』を読む③   ものすごい屁理屈

三島由紀夫の『金閣寺』を読む③   ものすごい屁理屈

 吃音の溝口が内翻足の柏木に「片輪同士で友達になろう」とする魂胆を見抜かれるくだりは、いかにも才気煥発といった印象が強く、さすが太宰の弟子だと感心してしまう。(三島はずっと太宰を批判してきたが、晩年村松剛との対談で、自分は太宰と同じだと認めた。三島由紀夫を太宰治の弟子だというのはおそらく私一人であろうが、小宮豊隆が漱石の弟子なら、三島由紀夫は確かに太宰治の弟子である。)こうしたひねくれた人間の心の

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三島由紀夫の『金閣寺』を読む②   或る名僧は死ぬまで自分の寺の銭勘定をしていたそうである。

三島由紀夫の『金閣寺』を読む②   或る名僧は死ぬまで自分の寺の銭勘定をしていたそうである。

 そう言われてみると、改めてお金にとらわれた人生をむなしく思う。つまり人生にお金以上の価値あるものを見出せなかったということだ。それは余りにもみじめな人生ではなかろうか。またごく当たり前の通俗的な生活であるともいえる。少なくとも三島由紀夫はそうした人生を選ばなかった。

 伊東静雄からは俗物扱いされながら、三島は確かに『金閣寺』では「美」という通俗的ではない、お金以上の高尚な価値観を見出そうとして

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三島由紀夫の『金閣寺』を読む①   人に理解されないということが唯一の矜りになっていた

三島由紀夫の『金閣寺』を読む①   人に理解されないということが唯一の矜りになっていた

 本当に久しぶりに『金閣寺』を再読する。

第一章

志楽    京都府加佐郡にあった村

父によれば、金閣ほど美しいものは地上になく… まんま『カレーライス奇譚』だな。真似したな。

酒鬼薔薇君は『金閣寺』を「ナル文体」と呼んだが、序盤はそうでもないな。ごりごりもしていないし、むしろよく抑制されている。

黐 もち ①モチノキの別称。 ②モチノキなどの樹皮で作った粘り気の強い物質。鳥や虫を捕らえ

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三島由紀夫の『仮面の告白』におけるちょっと古めかしい表現と怪しい表現に関するメモ①→正解はない。いや、あるちゃある。

三島由紀夫の『仮面の告白』におけるちょっと古めかしい表現と怪しい表現に関するメモ①→正解はない。いや、あるちゃある。

第一章

かるい憎しみの色さした目つき 

こけおどかしの鉄の門

あの匂いが私の鼻孔を搏ち

ジャンヌ・ダルクが身に着けた白銀の鎧には、何か美しい紋章があった。彼は美しい顔を顔当から覗かせ、

かすれ傷

死の恐怖は人一倍つよかった

第二章

甘やかな秘密をしらせ顔の不逞な玩具に私のほうから屈服し・そのなるがままの姿を無為に眺めている他はなかった。

※この独特の・の使用は本作において多用され

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三島由紀夫『午後の曳航』を校正する 『午後の曳航』を読む

三島由紀夫『午後の曳航』を校正する 『午後の曳航』を読む

 三島由紀夫の『午後の曳航』に続きがあるという話を読んで、改めて作品を読み返してみた。相当久しぶりに読んだので、随分いろいろなことを思ったのだが、どうにもまとまらない。まとまらないながら気になることをメモしておく。そうでもしないとたちまち何もかも解らなくなる。そして私という存在などあっという間に正体不明になる。そうなる前に記録しておく。それが何か意味あることだと信じているから。

ホーム・ワイン 

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三島由紀夫『午後の曳航』の結末について

三島由紀夫『午後の曳航』の結末について

 堂本正樹の『回想 回転扉の三島由紀夫』(文藝春秋、2005年)によれば、三島由紀夫の『午後の曳航』には七、八枚の続きがあったという。すなわち、手術用のゴム手袋を嵌めた少年たちが、龍二(塚崎竜二?)の灰色のセーター(スウェータア)を剥がし、かつての「英雄」の全裸を解剖する。下半身が裂かれ、剥かれる。

 こう堂本は書いているが「シャワー室で汗の身体を流す」のはどうだろう。「シャワー室で身体の汗を流

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施設内に侵入してきたクマに対して自衛隊は何ができる?

施設内に侵入してきたクマに対して自衛隊は何ができる?

https://k.xpg.jp/s/?E=je753wj&PF=1&s=13

 
文学論から少し離れて少し余談を書いてみる。今朝ひょんな流れから「施設内に侵入してきたクマに対して自衛隊は何ができる?」こんなコラムを見つけて興味深く読んだ。

 つい三島由紀夫の市ヶ谷駐屯地突入を思い出してしまうのは私だけではなかろう。コラムの中で言われている自衛隊の武器使用権は条文を見る限り実に窮屈なものだ。

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