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2021年11月の記事一覧
サバイバーズ・ギルトのない風景
芥川龍之介が直接的に戦争について書いた作品は『首が落ちた話』と『将軍』のみであると言って良いであろうか。「東西の事」を書いた『手巾』が戦争に関して書いたのではないとしたら、そういう理屈になるのではなかろうか。
しかしこんな残酷な風景はむしろ付け足しである。芥川にとって戦争とは単なるプロットに過ぎない。芥川は『将軍』でも『首が落ちた話』でも戦争を材料にはするが、戦争そのものを云々する意図は見
幼帝の御運も今や冬の月 え? 四十二、三歳になってない?
夏目漱石の俳句に「幼帝の御運も今や冬の月」というものがある。明治二十八年の句である。明治二十八年と云えば下関条約が成立した年だ。以後列強による清国の分割が始まる。明治二十八年の冬の様子が今一つ明確ではないが、ここで漱石は幼帝として薩長に担がれて即位、日本の近代国家への歩みの中心として活躍してきた明治天皇の運がいよいよ怪しくなったぞ、と見てはいないだろうか。
明治二十八年には明治天皇は既に幼帝