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記事一覧

少しさよなら、

オリオン座から離れてく
少しさよなら、と言った
ロケットができる前の人たちに
「春」と呼ばれた場所に来た
平安時代の霞と雲がかかる山
恐竜時代の光が降るほとり
僕の衣は使い古しで
なのに何も分からない
思い出すこともあまりない
温かい君を抱いて
分かった気分になった
僕と僕以外の境界線が
君と君以外の境界線が
きれいだね
どこまでも広がっていって
重なれないままだね
懐かしさだけが幸せの
生き

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雨が好きです

雨が好きです

家にいる分には 雨が好きです

道が広いなら 雨が好きです

裸で歩いていいなら 雨が好きです

借り物の傘なら 雨が好きです

みんなは嫌いなら 雨が好きです

美少女になれたら 雨が好きです

誰もいないなら 雨が好きです

頭痛くならないなら 雨が好きです

あなたが好きなら 雨が好きです

詩 いまここ

月は白い、白い月が昇っている
風はそこから吹いてくる

虫の鳴き声が黄色に変わった
自軸の向きと太陽の位置関係が頭に浮かぶ

地平から光の柱が立っている、あそこが都会
ここもまたどこかの太古だ
月と文明を繋ぐ光
そこには時間と場所がある

早朝の帯の雲は一瞬
静まっている
誰もが真面目な顔で1人になっている

わたしはいない、世界があるだけ

詩 つながっていて、私ひとり

みんなが私を見るから
私はどの私を見ていいかわからなくて、
俯く
そこに
ありが集っている
数百万匹蠢いているのは
首の皮の下
胸に手をやり我に返る

鮒だったときのあぶくの言葉
夕顔だったときのおひさまの言葉
前に生きてた時の最後のことば
懐かしさだけが残っている
私は未だに私の言葉を話せない

心に欺かれている
それは単に、天気のせい
特別なものなんかじゃない
私は私にとって特別なものじゃない

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高校時代の日記・詩いろいろ

高校時代の日記・詩いろいろ

2020.5.12

鼓動に合わせてふやける視界
月に届く 切り絵のあの木へゆこう
妖の実体、お囃子が映して
暗がりの中に 確かに在るもの

月の窪みがあんなに見えて
仕方ないから寝るしかなくて
見えないものは無いのと同じ
抹消済みの古代の記憶よ

夜と昼間の狭間に出会う
早朝 誰もいないプールの底
黄昏時の台所
匂いの無い世界で
光の音だけが、聞こえる

2020.6.1

何も読めない、聴けな

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詩 永久にひとりぼっちの

犬は悲しい生き物なのに、明るい人が飼っている
猫は楽しい生き物なのに、悲しい人が飼っている
花を、誰にも言わずに買った
蕾が開く前に枯れた

最後の鶯が鳴いている
最後の蝉も鳴いている
ちっともさみしくなんかない
寂しく聞こえる人がいるだけで

平日の14:00の番組は生放送
だけど今じゃない
見えているのは私の今じゃない
誰の今でもない

永久にひとりぼっちの僕ら
君といる時に、寂しいねって言っ

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詩 さようなら

秋のひかりは終日夕暮れみたいな色だから
秋の夕暮れは、それはそれはさみしく入り込んできて
たまらなくなる

薄暗い照明のつくる影に潜んでいる
孤独、孤独、孤独、静かな笑い
誰も声を出さない
生活音
……
また音のない笑い

逃げたい訳じゃない
この苦しさを、身体が抱えきれなくなったんだ
落下した花瓶から水がこぼれる
ごめんね

詩 極彩色の駅

救急車のサイレンと
ヘッドライトがつんざく
どこまでも拡張するこの身体

だめだとわかったらほんとうにだめだから
三角形になって
ゆきます

煤けたタイル
雨ざらし
スマートフォンの落下音
それが私です
アスファルトを削るドリルの振動
それが私です
蜘蛛の巣の張った街灯の白色
それが私です

この一点と街全体とが同時に存在しはじめ
もうほんとうに
ほんとうにだめです

足が天を向いて空を歩いている

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詩 呼吸

いっぱいいっぱい
吸い込もうね、いいにおい

シンク下の収納
ホームセンター資材館
出来たての一軒家
土曜の昼に塗るマニキュア

ため息
ついちゃうよ

海に来て
モネを見て
1人の帰り道で
いつだって

別に元気だからさ
構わないでよ

人は、息を吐いて生まれて
吸い込んで死ぬと先生が言った
結局、生きたいんだね
生きたくて
生きたくて
吸うんだよ
死にたくないのとは違うよ
身体が生きたいんだ

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詩 宇宙の子

詩 宇宙の子

わたしの身体
わたしになる前なんだったの
蟹の甲羅
ねずみの毛皮
知らない星の、とある震え
使い古された原子を纏ってる
私、宇宙の子
あなた
宇宙由来のその身体に
包まれてしまって
何も届かない
わたしのここと
そこと
交換っこ、しよう
こないだまでは
溶けていたから
会いたくなって
産まれてきたけど
別れ別れになっちゃったね
また
溶けてゆきたいね
でももうしばらく
光ってみていようか

木星にまつわる哀歌

木星にまつわる哀歌

木星人の音楽は
ひかりです
色です
プリズムは一種のトランペットです
あるいは、プリズムの瞳をもちます
光は とおくとおくへ届きます
隔てるものはありません

地球人の光楽は
おとです
波です
筒状の体を震わせます
時に体を拡張し、それは楽器です
音にはパースペクティブがあります
“秘密”が存在します

音と光は翻訳可能です
地球には「音色」という“言葉”があります

木星人の祈りは光り、
地球人

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詩 竜よ

詩 竜よ

竜、どうしてお船になってしまったの
僕またひとりぼっちだよ
怖がって近寄らなかった人たちもみんな
船になった君に乗ってさ
水墨画の景色の中を行ったね
どんな大きな波も君を飲みはしないんだ
すぐに頭をもたげて 頼もしい船さ

しばらくして、また君と僕だけになったね
一緒に飛んだ空を上に見上げて
君は黙ったままでさ
僕がいなくなったら 君の松の体はどうなるの
本当のひとりぼっちにしてしまうね

竜、僕

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詩 居た子ども

愛されるべきだってこと知る前に
蟲にむしゃむしゃ食べられちゃった子ども
赤色と緑の点滅を
轟音が追いかけて行く
屋根も壁も通り抜けて拐いにくるよ
大丈夫は何処にも無いよ

夕暮れに
シューシューとトントンと微睡みと
ほんの少しの頭痛とあって
胸が空っぽで変な気持ち
言葉を持たない子どもがいたんだってさ
その子も、ものを考えたりしたんだろうか

わるい子だから仕方がないね
怒ったより怖い顔の大人が

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あるいは、あ

地平線から滲んだピンクは
橙となって
赤となって
天上に辿り着くことはないけれど

明日は血濡れの青空になるだろうねぇ

どうして頭をぶつの
頭が痛いからだよそう言った

あんたの眼は
私の向こうを見てるねぇ
ああ今時間がたゆんだ

知らない言葉でなかよく話す

一人増えている

裏返しになる、からだ

ダンボールを運ぶ
全身を切りつけてくる
そんなことはなかった
芯を繰り出す
ペン先が突き刺して

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