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マルコ・ベロッキオ『甘き人生』落下と家と死への無意識的な執着
傑作。マルコ・ベロッキオ長編23作目。マッシモ・グラメッリーニによる同名小説の映画化作品。子供時代に母親を亡くした主人公マッシモは大人になっても母親の幻影に縛られ続けている、という話。母親が飛び降り自殺したことは知らされず、劇中でも母親の遺体は全く映されなかったはずなのに、知ってか知らずか映画は序盤から落下と死に執着し続ける(あと、異様な数のナポレオンの胸像にも)。それが高低差に結びつかないのは落下と死の直接的な関係性を知らないからだろう。1992年の実業家自殺、1993年のユーゴ内戦と写真の捏造なんてエピソードは正直なくても映画は成立するが、序盤から綿密に組まれた家と死との関係性を語る上では外せない。あれは母親の死の瞬間を遺体を見なかったマッシモが見た、母親の死そのものの幻影なのだ。学生時代に友人宅に遊びに行ったらどエロい母親(エマニュエル・ドゥヴォス!)が出て来たのには流石に笑っちゃったけども。途中で科学の授業をする神父が登場し、彼は"光が生命である"と言う。確かに、マッシモの記憶の中にある家はいつも薄暗い。そんな彼が初めてエリーザにあったとき、彼女は薄暗い診察室で彼の顔にライトを投げかける。まさしく彼女が救いの手を差し伸べた瞬間だ。後に彼女はマッシモの前で高台からプールに飛び込む。この瞬間に、彼は高低差を意識した落下を見て、その上で彼女がまだ生きていることを知り、落下と死への執着から解き放たれる…はずが、やはり母親への想いは根深く残っている。そして、大いなる影に抱かれながら、少しだけ差す光を浴びる記憶を思い出す。母親との最後の約束である"良い夢を見ること"を果たす日は来るのだろうか…?
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・作品データ
原題:Fai bei sogni
上映時間:131分
監督:Marco Bellocchio
製作:2016年(イタリア)
・評価:80点
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