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マルコ・ベロッキオ『サバス』魔女に魔法を掛けられて

大傑作。夜の森に佇むベアトリス・ダル=マッダレーナのかったるそうな横姿からの背景爆発炎上というユリア・ソーンツェワみたいなオープニングが良い。現代の殺人事件の犯人を調べる精神科医ダヴィドが400年の時を超えてマッダレーナと繋がる話。ダヴィドとマッダレーナの初邂逅シーンでは突然マッダレーナが顔を中心に回転し始めたり、広場で妻と会話していたら突然現代のマッダレーナが現れて、ボケた妻の顔越しに真っ赤なドレスを着て踊るマッダレーナにピントも視線も心も奪われたり、テラスからパンしたら隣の建物の壁に400年前の檻に入れられたマッダレーナがいたり、現実と空想や過去と現在が陸続きで混ぜ合わされている。ダニエル・シュミット『デ・ジャ・ヴュ』でも同じようなことを思った。スイスは世界大戦で建物が破壊されたことなんてなさそうなので、イェナチュと現代がスムーズに繋がるんだろうけど、イタリアでも同じような感覚があるんだなあと。過去と現在の繋がりとか魔女についての物語とか『私の血に流れる血』っぽいので、ちゃんと観とけばよかったと後悔。一緒に精神鑑定をする教授がテラスに座ると太陽が禿頭を照らし始め、ダヴィドがテラスに出ると光が引っ込むのも良い(光を遮るための板の影が見切れているのはご愛嬌)。この教授、初登場時は広場で演じる劇に合わせてバイオリンを弾いていたんだが、劇団員が倒れても何をしても常に主人公に目を向けながら行動していて、なんだか悪魔のように描かれている。もちろん、一番好きなのは片足で吊るされたマッダレーナがぶらーんと揺れてるとこだが。中盤で10分くらい無言で妄想サバトをやり続けたり、魔女確認用の強制飛び込みを幻視したり、1mmも物語を動かさずに一目惚れした魔女の妄想を繰り広げ続ける悶々とした感じ嫌いじゃないっす。ベアトリス・ダルをしっかり観たのは初めてなんだけど、めっちゃ目が綺麗な人なんだな。

・作品データ

原題:La visione del sabba
上映時間:94分
監督:Marco Bellocchio
製作:1988年(イタリア)

・評価:90点

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