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禍話俺セレクション

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記事一覧

禍話リライト「日曜日のせいか」

 話を持ってきたのはC君で、大学生の時の話なんだそうですけどね、平成のときの話だっていうんです。

 夢を見たんだっていうんです。
 当時学生マンションに住んでまして。
 寝てましたら、チャイムを鳴らさずにドアを叩く音がしたんです。どんどんどんと。
 繰り返しますが、夢の中ですよ、いつもなら相手にせず何も反応をしないんですけど、起きたんですよ。
 チャイムがあるのに押さないって、誰だよ。
 このマ

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禍話リライト「遺骸の儀式」

禍話リライト「遺骸の儀式」

 その家がどこにあるのか、地方でさえも絶対に明かさないで欲しい。
 そんな条件で聞かせてもらった話だ。

 山本さんは都会の会社に就職してから、そこで出会った女の子と付き合うことになった。かわいくて気立てもよく、まさに理想の彼女だった。

 付き合ってしばらく経ったころ、彼女の方から誘いがあり、泊まり掛けで彼女の実家に挨拶に行くことになった。

 その時点でもう有頂天だった山本さんであったが、しか

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禍話リライト「かわわら」(怪談手帳より)

禍話リライト「かわわら」(怪談手帳より)

形五六歳の小児のごとく、遍身に毛ありて猿に似て眼するどし。常に浜辺へ出て相撲を取也。人を恐るゝことなし。され共間ちかくよれば水中に飛入也。時としては人にとりつきて、水中へ引き入レて其人を殺すことあり。河太郎と相撲を取たる人は、たとへ勝ても正気を失ひ大病をうくると云。(略)河太郎、豊後国に多し。其外九州の中所々に有。関東に多し。関東にては河童(かはわらは)と云也。

『日本山海名物図絵 三』より「豊

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禍話リライト『狂言獣』(怪談手帳より)

この話は体験者やその知人、親族などから直接聞いたものではない。
戦前から戦後にかけて流行した、特定の地域や集落にまつわる数多の奇妙な噂の中の一つである。
個々人の報告や記録の伝聞で構成されている為か、もともとの内容は断片的で繋がりの曖昧な箇所も多いのだが、ある程度の筋が通るように補足・再構成していることを先にお断りしておく。

※※※

陰気な集落だった。
もともとそこまで豊かな地域ではなかったが

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禍話リライト「大広間の女」

禍話リライト「大広間の女」

「肝試しは怖いけど、ちゃんとした明るいライトを持っていけば大丈夫!」
こんな風に思っている人がいたら、考え直した方がいい。そういうお話である。

******************

その旅館は、円満に終わったという。
金銭上のトラブルなどがなくても、後継ぎがいないと営業を続けるのは難しい。廃業を決めた経営者は適切に手続きを進め、どこかへ隠居した。建物の取り壊しこそしなかったものの、中の機材や設

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禍話リライト:忌魅恐NEO「お茶を出された話」

 これだ、もう忌魅恐NEOだ…。



 かあなっきさんが自分と同じように実話怪談を収集している人と会話をしているときに、こんな話題が上ったという。

「もしも取材した体験者が、嘘をついていたらどうする?」

 我々のような怪談を集める者は、結局のところ「取材者を信じる」しかない。
 その上で、我々は世の中の怪談を網羅などしていないが(そもそもそんな人は恐らくこの世にいないが)、それでも話を聞い

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禍話リライト「ミナミさん」

 タクシー乗務員の男性、Aさんが体験した話だ。彼が走ったことのないエリアに配属され、道を覚えていっていた頃の出来事だそうだ。

 週末の夜、とある田舎の駅の近くを通ったAさんは、片手を挙げる若い女性を見つけた。
 終電車に乗れなかったのだろうか。
 しかし、発車時刻からそれなりに時間が経っている。この周辺には飲み屋の類もない。
 おかしいと思いながらも、Aさんはその女性を乗せたのだそうだ。

「あ

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【怖い話】 死者のいない弔い 【「禍話」リライト99】

【怖い話】 死者のいない弔い 【「禍話」リライト99】

 因果因縁のない場所に現れるのは、幽霊ばかりではないらしい。

 数十年前のこと。

 Mさんは学生時代に、映像研究会に入っていた。作品を観て語り合うだけではなく、実写映画を撮ったりもするサークルだったという。

「大学から出るお金は雀の涙でしたけど、ほら、そこは工夫と努力でなんとかしてました」

 部長から1年生まで仲良くって、時には意見の相違やケンカもありましたけど、楽しい日々でしたよ──とM

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【怖い話】ふすまの部屋

【怖い話】ふすまの部屋

207 :本当にあった怖い名無し:2012/12/27(木) 22:33:56.24 ID:oAt9Z5nmI

中学一年生の頃、私(女)はいわゆる“ぼっち”という奴だった。
完全に一人というわけではなくて、友達と普通に話したりはするけれど、特定のグループには所属していない、
準ぼっちの立ち位置。
話しかけられれば話すけど、自分から友達に歩み寄ることはなかった。
ぼっちの人なら分かるかもしれないけ

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【怖い話】 窓の外のお姉さん 【「禍話」リライト97】

【怖い話】 窓の外のお姉さん 【「禍話」リライト97】

「小4の時の体験なんだけどさ、これ……他の人には言わないでくれる?」

 Rさんからこの話を聞いたのは、25年ほど前のこと。
 当時は中学2年生。夕方、校舎の目立たぬところでひっそりと聞かせてくれた。

 以来ずっと、「お蔵入り」になっていた代物なのだが──

 最近になって、
「あの女の話さぁ、もうおおっぴらにしちゃっていいよ」
 とRさんから連絡があった。
「もう故郷の連中とは、あんまり付き合

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【怖い話】 深夜のファミレス 【「禍話」リライト95】

【怖い話】 深夜のファミレス 【「禍話」リライト95】

 Xさんは学生時代の夏休み、アルバイトをしていた。

「夜のね、ファミレスなんですよ。深夜から明け方までの」

 郊外店だったし、立地もあまりよくない。夜中には客足はぱったりと途絶えてヒマになる。しかも、

「夜間手当ってのがつくわけです。いやぁ、ウマいバイトでしたよ……」

 そんなゆるいバイトだったので、あの日の夜のことは今もよく覚えているそうである。

 夏休みも半ばの、ある夜のことだった。

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【怖い話】 招きプレハブ 【「禍話」リライト84】

【怖い話】 招きプレハブ 【「禍話」リライト84】

「変な山に行った友達が、カノジョと別れることになった、って話なんですけど」
 とCさんは言う。
 それは大変だ。オバケが出て、彼氏の方が先に逃げちゃったとか?
「いえ、そうじゃなく」
 じゃあ、オバケに祟られちゃったとか。
「ちょっと違うかなぁ。あの~、カノジョが、出たんですよ」

 …………よくわからないので、イチから話を聞いてみることにした。

 某所の山奥、車で入ってから少し分け入ったところ

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【怖い話】崩れ神輿【「禍話」リライト73】

【怖い話】崩れ神輿【「禍話」リライト73】

 妖怪や民俗学に造詣が深く、そのような類の怖い話を集めているYさんという人がいる。
「祭り覗き」や「ぬりかべ」などの収集品もあるそのYさんが聞いてきた、お神輿が倒れて壊れる話である。
 

 この話の体験者Aさんは若い頃、某地方を旅行していたそうだ。
 ひとりきりの静かな旅行であったが、立ち寄った町が何やら騒がしい。町の人に聞いてみると「お祭りをやっている」という。
 屋台がぞろぞろ並ぶような華や

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【怖い話】家の蔵の絵【「禍話」リライト68】

【怖い話】家の蔵の絵【「禍話」リライト68】

 昭和の頃の出来事だ。
 現在その家はとっくのとうに無くなってしまっている。

 体験者のSさんも、「なにぶん昔のことなので、記憶が不確かな部分もあるんだけど……」と言いつつ、訥々と語ってくれた。

 中学生の時分に、男友達の家に出向く機会があったのだそうだ。
「どういう理由で行ったのかはイマイチ思い出せなくて……」

 学校の宿題でもあったのか、面白いゲームでもあったのか。それとも単なる気まぐれ

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