小宮子々

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怖い話が好きです 禍話リライトと古典籍等からの怖い話現代語訳など twitter: https://twitter.com/NeneKomiya

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  • 禍ものがたり(子)

    小宮子々による禍話リライト・禍話に関わる文章のまとめです

  • ねものがたり

    古典文学や古記録から怖い話を現代語訳したものです

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禍話リライトの利用について(20230216追記あり)

●追記:2023年1月29日以降の取り扱い表題の件につきまして、禍話の母体たるFEAR飯の怖い話担当ことかぁなっきさんから次のようなガイドラインが発表されました。 以後、私の手によるリライトの朗読をしたい、リライトを用いて何らかの創作を行いたい、という方は、上掲のガイドラインを参照の上、事前に私のほうまで許可を取っていただけますようお願い申し上げます。 (以下は参考として残しておきます)詳しくは上記項目をご参照ください。 ●追記:2022年10月22日以降の取り扱い

    • 禍話リライト「マヨヒガの山」

        〈マヨヒガ〉ーー迷い家、と呼ばれる怪異をご存知だろうか。  それは山中にて不意に出くわす立派な屋敷で、室内にはついさっきまで誰かいたような気配はあるものの、無人であるという。いわゆる「隠れ里」の類とはこの点で異なっている。  無欲にそのまま屋敷を後にすると後日福があるとも、何かしら屋敷から持ち出すとそれを機に福が訪れるとも言うようで、先に引用した柳田國男の紹介によって知られるようになったものだ。  ……しかし、〈マヨヒガ〉がそのように善なるものばかりであるという保証はある

      • 禍話リライト(忌魅恐NEO)「屋上に行くだけの当番の話」

        Aさんという女性から、ある集まりの際に聞いた話だ。 高校時代、彼女は生徒会に所属していた。 「生徒会室は旧校舎の最上階にありました」 旧校舎というだけあって、図書室や美術室といった特別教室以外は、課外活動くらいでしか使われない場所だった。職員室などの学校の中枢へのアクセスがいいとは言えない場所に生徒会室を置くのは奇妙だ。おそらく何らかの事情があったのだろう。 「その生徒会には奇妙な当番があったんです。たぶん、昔は何か意味があったものが形骸化して、そのまま続いているというか…

        • 禍話短編映像脚本「解体の壺」

          これは禍話を原作とした短編映像の脚本です。 脚本という性質上、原話からの少なからぬ設定の変更・脚色などを伴いますので、ご留意いただければと思います。 この脚本は夏目太一朗監督による禍話短編映画の脚本募集に応募し、映像化していただける運びとなったものです。 2022年12月18日開催の「東京禍演~2022冬~」にて『怪奇劇場 禍ZONE』のうち一作として発表されました。関係者様方に厚く御礼申し上げます。 撮影の便などのために、映像と脚本の内容が異なる場合がございます。 (1

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        禍話リライトの利用について(20230216追記あり)

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        記事

          怪談手帖「天井下がりの部屋」考察

          ※この記事は2022年8月17日配信の禍話有料ライブ「かぁなっきの独りごつ」にて発表された『怪談手帖「天井下がりの部屋」』についての考察記事です。 内容・結末について触れておりますので、ネタバレを避けたい方はアーカイブ(2022年8月31日まで視聴可) もしくは以下のリライトを先にご参照ください。 (このリライトは書き起こしではなく、書き起こした上で自分なりに表現等を変更したものであることにご注意ください) はじめに 「天井下がりの部屋」における恐怖の中心は、語り手で

          怪談手帖「天井下がりの部屋」考察

          禍話リライト「天井下がりの部屋」(怪談手帖より)

          今まで数々の怪異譚を採話してきた某氏の手元には、怖い部屋についての聞き取りメモが複数ある。いずれも曰くつきの部屋についての奇談ではあるのだが、その一つひとつが一般的な幽霊譚とは異なる手触りを感じさせて興味深い、という。 この話も、そんな怖い部屋についての話の一つになる。 * Aさんの父方の実家は、かなり大きな屋敷構えの日本家屋だった。家柄もそれなりのもので、どうやら江戸時代からその土地に住んでいたらしい。 とはいえ、そういう旧家にありがちな旧弊的な部分は少なく、むしろ当時

          禍話リライト「天井下がりの部屋」(怪談手帖より)

          禍話リライト「囲まれる」

          今はもう三十代半ばを過ぎた横田さんという男性が、中学生だった頃の話だ。 美術や音楽といった選択制の科目で、他のクラスと合同で授業をした……という記憶がある方もいるだろう。そんな美術の授業の時にだけ一緒になる女子生徒がいた、という。 第一印象は、暗い感じのする子だな、というものだった。あまり友達がいるようにも見えないし、おそらく休み時間には独りで小難しい文庫本でも読んでいるのだろう、などと勝手な想像を巡らせるくらいには孤立した雰囲気があった。 が、美術の時間に一緒に作業をして

          禍話リライト「囲まれる」

          禍話リライト「河童の鳴き声の話」

          【注意】当リライトは怖い話ツイキャス「禍話」様宛に筆者が投稿し、「元祖!禍話」第十三夜にてご紹介いただいたメッセージを一部編集したものになります。 こんばんは。 いつも楽しく禍話を拝聴させていただいております。 (略) 「元祖!禍話」第十二夜にてお話しされていた「葉に乗った思い出」(※下記参照)、非常に興味深く聞かせていただきました。 というのも、最近施設に入ったうちの祖母にも同様の症状がありまして……うちの祖母も、「自分が体験したのではないことを、自分が体験したと思い

          禍話リライト「河童の鳴き声の話」

          禍話リライト「木霊」(怪談手帳より)

          百年の木には神ありてかたちをあらはすといふ。 鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「木魅」 「小学一年生の時のことなんですけど……」 と、Aさんは懐かしそうな顔で口を開いた。 Aさんの通っていた小学校の校庭の隅の、木々の密集した場所、そのさらに奥に、小学校ができるより前から生えていると伝わる一本の古い松の木があった。それが、彼らの間で〈お化けの木〉と呼ばれていたのだという。 「松って表面が鱗みたいになってるでしょう? その模様が人に見えるんですよ……こう、腰をかがめて立ってるお

          禍話リライト「木霊」(怪談手帳より)

          ねものがたり14 二十年

          江州八幡──つまり、現代でも近江八幡と呼ばれるあたりでの話だ。 いわゆる近江商人らの活動が盛んだった当時はかなり栄えた地域であり、現代でもその遺構がよく保存されている。 * さて、そんな近江八幡の商人に松前屋市兵衛という人物がいて、妻もあり、中々に裕福な暮らしぶりをしていた──のだが。 この男が突然行方をくらましたのである。 ある夜、市兵衛は「便所へ行く」と灯火を持たせた下女を連れて席を立った。 が、戻ってこない。夫と下女が連れ立って出ていってそのまま、となると、もちろ

          ねものがたり14 二十年

          禍話リライト「成功した十円」

          当時大学生だった彼は、ある時、親戚のおばさんから「家の模様替えを手伝ってほしい」と頼まれたのだそうだ。 おばさんは早くに夫を亡くし、一人暮らしをしている。家は二階建てだし、おばさんというからにはそれなりの年齢だしということで、彼も快諾した。 そもそも、そんな頼みを持ちかけ、快諾する程度には彼とおばさんは仲がいい。それで、作業も終始和やかな雰囲気で進んだ。手伝いに来てくれた友人と一緒にありがたくお昼をごちそうになり、ついでだから掃除もやっちゃいますよ、とあちこちを綺麗にして回っ

          禍話リライト「成功した十円」

          禍話リライト「あたりまえばあさん」

          人智の及ばない世界にも、何らかの決まりごとはあるらしい……という話をとある場で披露したときのことだった。 「オバケってわけわかんないよね」 と、口に出した女性がいた。まさか何か関連する話なのか、と思ったが、彼女は首を振った。そして、 「私の場合はね、〈あたりまえばあさん〉」 そんなことを言った。 高校時代、彼女は事故に遭ったのだという。とは言っても命にかかわるようなものではなかった。ちょっとした荷物を運んでいたトラックに接触して一瞬意識を失ったが、幸い、特に大きな怪我も後

          禍話リライト「あたりまえばあさん」

          禍話リライト「更地のふたり」

          それなりの高級住宅地、だったのだと思う。 例えばどの家の窓にもボタン一つで降りるような鎧戸があって、どの家にも犬の一匹や二匹がいて……という、そんな一区画に、親戚のおじさんが住んでいたのだ、という。おじさんといってももうかなりの年配で、不幸なことに奥さんに先立たれて一人暮らしをしている。一通り身の回りのことができる人ではあったのだが、親戚連中の手の空いた人間が様子見がてら泊まりに行くようになっていたそうだ。 その家の裏手には少し困った家があった。 口の悪いおじさんは「これだ

          禍話リライト「更地のふたり」

          ねものがたり⑬ 納戸の中

          寛政六、七年頃のことである。 江戸、番町に屋敷を構える千石取りの旗本家があった。おそらく良家であっただろう。家柄相応に主人も格式を踏まえた人間だった。 その娘というのが当時八歳の可愛い盛りである。ちょうど隣家に物乞いの人々が来ていて、三味線を弾いたり歌を歌ったり、楽しげな物音を立てていた。娘が見たい見たいとせがんだが、厳格な奥方が許すはずもない。軽々しいことを言うものではない、と叱られて、それでも娘が諦めきれずに屋敷内を走り回って庭へ出ようとするのを、乳母が追いかけた。それを

          ねものがたり⑬ 納戸の中

          禍話リライト「雲梯の上」

          体育会系には見えないが、実は力自慢という友人の話だ。 大学時代、飲み会から二次会、三次会と酒を過ごした彼は、歩けているのが不思議なくらいには泥酔していた。 そんな千鳥足の帰途に、ふと公園が目に入った。そこには雲梯があった──うんてい、については説明するまでもないことかもしれないが、ちょうど梯子を寝かせたような格好で平行に渡された金属の棒に手でぶら下がって進む、あの遊具のことだ。 とにかく、それを見た彼は、自分は雲梯が得意なのだ、と言い出したのだという。 彼同様に酔いの回っ

          禍話リライト「雲梯の上」

          ねものがたり12 妖刀村正

          ──原本では「村政」の表記だが、ここでは「村正」で通したい。 言うまでもなく、千子村正の名を継いだ刀工一派による作の総称である。いわゆる刀であれ、槍であれ、「村正の刀」と呼ばれたそれらは、時に珍重され、時に忌み嫌われ、また珍重され……名刀と呼ばれる刀剣には何かしらの伝説めいた由来が付随することも多いが、とりわけ刀剣それそのものの評価の外で語られてきたことが多いものである。 今回紹介するエピソードは決して裏付けある話ではない。現代人の目には風評被害の域から出ないものにも映るだろ

          ねものがたり12 妖刀村正