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【検証】音大生とフリーランスが考えるテレワーク演奏の意義 #WithCovid19

2020年春ごろ、演奏会が開けないという未曾有の事態。世界中で未だ見ない時代の幕開けに、人々は知恵を絞り、様々な創造的な取り組みを行いました。

そうしてこの数か月多くの音楽家たちが取り組んだ、テレワーク演奏。試行錯誤の自粛期間を経、非常事態宣言がようやく解除されました。ただ未知の病との戦いに完全勝利したわけではない今、既に叫ばれていた”新しい生活様式”が始まっています。

しかし、海外で開かれるセミナーに参加したり、憧れの先生の許へ留学したり、コンサートホールで満席に近い観客と共に音楽の喜びを分かち合ったり。以前のような生活を楽しむには、未だ遠いのも事実。

賛否が分かれる「テレワーク演奏」。
今回の記事では、そのメリットとデメリットに迫ります。
(文:桒田・前田・大橋・水上)

○ どこからでも参加できる

インターネットとスマホさえあれば、高画質で撮影が出来、無料アプリで編集まで出来、動画は簡単に出来上がり。地球上どこに住んでいようが、トイレにいようが飛行機に乗っていようが、インターネット上では関係ありません。インターネットが持つこのメリットはエンターテインメント産業から強く注目を浴び、オンラインでのマスタークラスが企画されるなど、教育機会の不平等をも変えてしまう鍵にもなり得る可能性を秘めています。今後もこの可能性は社会を変えていくかもしれません。(前田)

香港やフランスなどに住む演奏家と筆者が自粛期間に始めたアンサンブル

○ お客さんの時間を拘束しない

「演奏会に行く」というと、身支度をし、家を出、電車に乗り、大量のチラシを受け取り、いよいよ座席へ。演奏に辿り着くまで多くの時間がかかり、お金が出ていきます。
さらに、YouTubeやIGTVで一度配信してしまえば、世界中から365日24時間視聴が可能。実際に、配信開始数日後突然インド人男性に1,000回以上視聴されることが起こりました。YouTubeのアルゴリズムはなかなか理解ができないものです。こうした機会は既存の演奏会では有り得ないことです。(前田)

○ アンサンブルの意味を考える機会になった

結局「合わせ」ってなんなんでしょうか?
リアルでできる「アンサンブルのよさ」ってなんでしょうか?

クラシック音楽的には多重録音自体、”新しい試み”というような位置付けだったと私は認識しています。 

演奏する人にとって「リモートアンサンブル」は様々な意味を持っていて「アピールの一つ」、「実験」、「新たな楽しむコンテンツ」、「コンサートの代替としての楽しんでもらうもの」、「一つの作品を作ってみる」ということだったり。
そんな中で私が挑戦した木管六重奏曲のリモートアンサンブルがあります。
「私たちもリモートアンサンブルしてみたいね」
という何気ない一言からスタートしました。

録音後の反省会をした際にメンバーの一部の人と
「そもそもアンサンブルってなんなんだろう」
「なぜ生演奏がいいと私たちは感じるのだろう」

ということが話題になりました。

普段演奏する上では当たり前にやっていたことができなくなった今、私たちが普段”普通”にやっていたことの魅力を考えるきっかけになったと思っています。
さらに、多重録音の編集を行う上で、他のパートについてまた違う角度で勉強し、理解を深める良い機会になりました。多重録音を通して、リアルタイムでやるアンサンブルとは違った良さもあり、悪い点もありました。

なぜリアルタイムの”アンサンブル”が恋しいと感じて、なぜ合わせという行為を行うのか。皆さんはどう思いますか?(大橋)

△ 時間を共有する魅力に欠ける

音楽上で奏者たちがコミュニケーションをしたり、
聴衆と指揮者がコミュニケーションをしたり、
聴衆が演奏の素晴らしさに拍手をしたり。
いずれもリアルタイムだからこそ生まれ得るコミュニケーションです。

かげがえの無い演奏会の魅力であるコミュニケーションも、ウイルスの前ではなかなかそういったことを言ってられないのも現実。
この点で、一席ずつ空けて着席する試みを通して演奏会を再開するコンサートも増えています。以前のような一体感は減少するのか、影響がないのか。業界全体での努力が進んでいます。(前田)

〇 新しいアンサンブルの形としてアリでは

私は、リモートワーク演奏について、新たな「アンサンブル」の形だなと思いました。

リモートであるかどうかにかかわらず、複数人で演奏を行うことになると、演奏者はコミュニケーションをとりながら作品を仕上げていくのが普通です。本来のアンサンブルもそうで、人と人の「やりとり」が音楽をうむ。それが、新たにデジタルの要素が加わることで、新たなアンサンブルスタイルが生まれる。

本当はこれはとても面白いことであるはずなのに、誰もしてこなかったことなので、とても大きな進歩なんじゃないかなと思います。(桒田)

△ 陳腐化しやすい

全世界的にStayHome、すなわち家にいることが呼びかけられた今回の自粛。世界中で家にいることが呼びかけられたため、全世界的に流行が起こる土壌が整いました。

そこで起こった流行として、「どうぶつの森」「Zoom飲み会」など、そして音楽家には「テレワーク演奏」。全員が同じことを行い、コンテンツを供給し始めた結果、観る側からは飽きられやすく、演奏する側は差別化が難しい。

結果としてみんなが同じことをしていたという事実。
あなたの動画はどう差別化を取りましたか?(桒田・前田)

△ ”音楽的な”流れが失われる

「ここはこう演奏したい」
「こういう解釈はどうだろう」
という音楽の会話をし、曲を練習していた以前。

テレワーク演奏では、送られてきたどちらかの一方的な音源に、都合よく合わせているだけのアンサンブルも多いのでは?結果的に一つの音楽にはなるけど、複数人で作り上げた音楽とは言い難い、予定調和になる部分が多いのではないでしょうか。

音楽を「再現」するのか、「想像」するのか。
例えば作曲家が作ったものを、意図していたであろうものを汲んでするには、やっぱり生でやりとりして「再現」するのが一番。

でも、そもそもリモートは概念的に違いそうな。
例えばデジタル音楽を作るように、各々の演奏者の音を「ひとつの構成音」としてみることで、新しい音楽を作ってしまえる可能性がリモート演奏にありそうです。(大橋・桒田・前田)

まとめ

自粛期間中、たくさんの演奏に心癒されました。とても素敵な取り組みだと思います。しかし癒されるのと同時に、早く生で音楽が聴きたいなという気持ちになりました。

暖かく包んでくれるような音や、空気の振動を感じられる低音など、会場で聴かないと分からない感覚がたくさんあります。私は、音楽は聴くものであると同時に体験するものでもあると思っています。生の音楽の方が、心に残る音楽体験になるのでは、と感じました。

多くの団体が今もテレワーク演奏を実施しています。早く今の状態が収束して、画面を通さずに演奏を聴ける日が来るといいなと思います。(水上・前田)

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文責 前田 直哉
鹿児島県出身。9歳からサクソフォンを始める。第17回日本ジュニア管打楽器コンクール銀賞(第2位)受賞。第23回日本クラシック音楽コンクール1位なしの2位。第22回KOBE国際音楽コンクール優秀賞を受賞。第20回大阪国際音楽コンクールエスポワール賞を受賞。アジアユースオーケストラ2018の一員として、アジア11都市を巡るツアーに参加。2019年12月、韓国ソウルにて「Amuse Saxophone Ensemble 創立演奏会」にゲストとして参加。「Bridge ~関西×学生×音楽のためのカルチャーメディア~」ライター。これまでにサクソフォンを土田まゆみ、有村純親、國末貞仁、須川展也、本堂誠の各氏に師事。京都市立芸術大学音楽学部音楽学科管打楽専攻卒業。現在、島村楽器新宿店サックス・エアロフォン・ヴェノーヴァインストラクターとして指導にあたる。
問合せ:maedanaoya.sax@gmail.com

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