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技能実習生の妊娠・出産 厳しい現実と課題を考えるシンポジウム

 3月24日、「外国人労働者の妊娠・出産の権利を考えるシンポジウム」がくまもと県民交流館パレア9階第一会議室およびオンラインで開催された。主催は「コムスタカ―外国人と共に生きる会」。
 まず、「リンさんと共に歩んだ死体遺棄事件と最高裁無罪判決の意義」と題して、中島眞一郎氏(コムスタカー外国人と共に生きる会代表)から報告があった。ベトナム技能実習生のリンさんが、「無罪を勝ち取りたい」と希望したことで最高裁の無罪判決につながったこと、保釈請求が認められ、在留資格の更新ができるなど支援の努力が実ったことなど、判決へ至る経緯が述べられた。今後は、技能実習制度を廃止し、労働者として受け入れること、死体遺棄罪が冤罪の温床となっている状況を変えることが必要であり、またリンさんの事例が「正しい主張は認められ、正義は実現する」というロールモデルを示したと結んだ。
 次に、「外国人労働者の妊娠・出産からみる移民政策の課題」と題して、高谷幸氏(東京大学准教授社会学)が講演した。技能実習制度の特定技能1号(知識または経験を有する、家族帯同は認められない)と2号(熟練した技能を有する、家族帯同を認められる)の違いについて、1号は20万人以上なのに対し2号は37人(全員男性)であり、2号は管理職を想定していること、男性は家族を養うという価値観に基づいた家族帯同であること、などを指摘したうえで、労働力を利用しながら子育ては本国に依存するという、移民労働の生産領域と再生産領域の分離があるという主張が述べられた。
 次に、「最高裁無罪判決と孤立出産への影響」と題して、石黒大貴氏(リンさんの刑事裁判元主任弁護人)から報告が行われた。死体遺棄罪は生命・身体・財産といった個人的法益ではなく、社会的法益というあいまいな規範の侵害を罰すること、死体の投棄や隠匿を事件性があるとしてとりあえず逮捕し、その後立件するという運用をされているため、最終的に不起訴とされてもとりあえず逮捕できてしまうという問題があること、などが指摘された。リンさんのケースでは、埋葬意思を放棄したわけではないということを強く争い、三審で「社会的法益の侵害の程度を検察が明らかにすべき」という判決文とともに無罪判決が言い渡されたことが述べられた。
 後半のパネルディスカッションでは、「コムスタカへの外国人労働者からの妊娠出産相談について」と題して佐久間順子氏(コムスタカ―外国人と共に生きる会事務局⾧)から、産休取得して日本で出産、在留資格の更新もできた事例や、「日本でのにんしん」HPを開設し妊娠・出産の情報の提供をしていることが述べられた。技能実習生で日本で妊娠を経験した二人の当事者からは、産休取得、一時帰国、職場復帰を希望したものの実現せず、実習プログラムを遂行できないとして解雇され強制帰国となった経験、反対に、支援が成功し日本で出産、子育てしながら技能実習生を継続、特定技能に移行できた経験が語られた。
 妊娠を理由とした不利益取り扱いの禁止を技能実習機構は勧告しているが、実効性が伴っていない現実と、妊娠への不利益対応を行う管理団体の処分、相談窓口の多言語対応、孤立死産した女性を犯罪者ではなく保護の対象として扱うガイドラインの整備などが課題として挙げられた。
 最後に、リンさんと同様に、孤立死産したベトナム人技能実習生グエットさんが死体遺棄罪で起訴されている事件について、池上弁護士から報告が行われた。

シンポジウムのチラシ(表)
シンポジウムのチラシ(裏)

【無罪判決を求める署名】
孤立死産したベトナム人技能実習生グエットさんの無罪判決を求めます!

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