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小説

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#掌編小説

雨、恍惚として。|掌編小説

大雨が降る。世界をざーっと白く染めながら。私は、朝早く起きて窓からそれを見ていたら、子ど…

天文薄明は肉眼で6等星が見えないくらいの明るさのことだよ。|掌編小説

私は何かを待っている。 いつもそうだ。何かを待ちわびている。その何かとは人なのか物なのか…

かなしいは透明|掌編小説

かなしいは透明だ。もしかしたら猛毒ほど、やさしいふりをした無色透明なのかもしれない。僕は…

マネキン|掌編小説

そこに鋭利な闇があるからこそ光は安心して輝くことができるのだろう。陰翳礼讃に至る彼の左顔…

振り返ったら消えてしまうくらいに|掌編小説

彼の指先へ染み付いている煙草の匂いを感じたいと、喧騒が映える横断歩道の手前で立ち止まりゆ…

月白の頬杖|掌編小説

スーハー、スーハー。 凡庸な呼吸に耳を澄ませていたら、ふと夏の終わりが聴こえた。蜩が夕映…

目眩を覚えるような、青|掌編小説

空を見上げれば、果てのない目眩を覚えるような、青がそこにはあった。 そして高く繋がれていた風は、ビューっと音を立てながら動き出して、私の頬をやわらかく撫でていった。 「ずっと一緒にいよう。」 はっきりとした唇からこぼれ落ちる言葉を紡ぐあなたに、なぜそう感じたのかわからなかったけれど、それを美しいと思った。 それから私は「美しい」を形作っているものを即座に分解して昇華すると、そこには「儚い」と「終焉」が混在していて、それがセロファン紙のように透けて見えているはずなのに、私は

ちくしょうと呟いて、夏|掌編小説

拘泥している場合ではない。爪先から夏を浴びて沈んだ気分を軽く払拭すると、エアコンの温度を…

蝉が鳴くころに 第八話(最終話)|小説

〈あらすじ〉母が亡くなった。私は母の結婚相手のみっさんと葬儀を終えてふたり暮らしをはじめ…

蝉が鳴くころに 第七話|小説

〈あらすじ〉母が亡くなった。私は母の結婚相手のみっさんと葬儀を終えてふたり暮らしをはじめ…

蝉が鳴くころに 第六話|小説

〈あらすじ〉母が亡くなった。私は母の結婚相手のみっさんと葬儀を終えてふたり暮らしをはじめ…

蝉が鳴くころに 第五話|小説

〈あらすじ〉母が亡くなった。私は母の結婚相手のみっさんと葬儀を終えてふたり暮らしをはじめ…

蝉が鳴くころに 第四話|小説

〈あらすじ〉母が亡くなった。私は母の結婚相手のみっさんと葬儀をしてふたり暮らしをはじめた…

蝉が鳴くころに 第三話|小説

〈あらすじ〉母が亡くなった。私は母の結婚相手のみっさんと葬儀をしてふたり暮らしをはじめて、それから30歳までみっさんとその暮らしを続けている。そんなある日、彼氏に大事な話があると誘われて海岸沿いをドライブする。 母が亡くなった時の話をすると、タカくんは真面目な面持ちで、時々頷きながらわたしの話を聞いてくれた。母が突然亡くなった喪失感とともに、みっさんが号泣しすぎて笑ったことも話した。 「みっさん、おもろいなあ。」 そういうタカくんに「みっさん、おもろいよ。」と言うと、タ