かなしいは透明|掌編小説
かなしいは透明だ。もしかしたら猛毒ほど、やさしいふりをした無色透明なのかもしれない。僕はかなしいに汚染されて冷えた体を温めるために炬燵へ入った。足を入れるといつもより広く感じるのは、クロがいないからだ。つい先週まで僕が炬燵へ足を入れると温かい毛の塊に当たったあとに鋭い牙で足を噛まれた。
「イタ!噛むことないだろ。」
僕は炬燵の中を覗くとクロは何食わぬ顔をして舌で毛並みを整えている。その横へ足を移動して僕はテレビを観はじめた。なのに今日は炬燵の中へ潜れそうなほど足は自由で。