ひとしお

夜になる少し前

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ずれていく

心がずっと体に追いついていない感覚があった。 心と体がばらばらになっても、それでもまだ進もうとしていたら、とうとう壊れてしまった。 冬の繁忙期は一年で最も仕事が忙しい時期だが、今年は人手が足りなくて、例年以上の忙しさだった。 4日働いて1日休むシフトで、休日出勤となると休みが完全に飛んでしまう形になっていた。 職場のみんな、この環境でこなせているのだから、なんとかなるはずだと思った。疲れているだけだと思った。3月のはじめ、3回目の9連勤の途中で心がぽっきり折れて、昼休み

    • メタモルフォーゼ

      どうしてさみしいのかわからなくて、どうやったらさみしくなくなるのかわからなくて、とりあえず外に飛び出した。そういえば今日は流れ星がピークを迎える日らしかった。見上げた夜空は涙で滲んでいて、細かな光が何重にもブレて映った。ひかり。たくさんの。 ずっとひとりでいることが好きだったのに、ひとりではない安心感、誰かといて心の底から安心できる状態を知ってしまってからめっきり孤独に弱くなった。変わってしまった。変わりたくなかった?けれど知らなかった頃には戻れない。温もりを知れば知るほど

      • 2024年7月

        今年の夏はあまりにも暑すぎる。もともと寒いよりは暑いほうが得意だったけれど、この暑さはさすがにしんどい。本当は散歩をしたり写真を撮ってまわりたいけれど、外のギラギラした光と熱に耐えられそうにない。日傘のこと、片手が塞がるし持ち歩くのが面倒だしで苦手だったけれど、もう日傘なしでは出歩けなくなってしまった。日傘はすごい。ずっと日陰の中を歩いているみたいで直に日差しを浴びるのと比べてかなり涼しい。この夏は日傘のことを見直す夏になった。 ▽ 仕事を辞めて1ヶ月が経とうとしている。

        • 2024年6月

          6月30日。新卒で入って3年間勤めた仕事を辞める。運転を教える仕事だった。もともとは事務職志望だったけれど、面接の時に指導員のほうが条件が良いと言われてこの道に飛び込んだ。 免許は今の職場とは別のところで取っていたけれど、自分が教習生だったときの担当指導員には憧れの気持ちを抱いていた。一緒になって成長を喜んでくれたあの人みたいになりたかった。 2年目の冬の繁忙期、無理を重ねてついに心身を壊してしまった。双極性障害だった。3ヶ月休職して復職したけれど、前のようには無理ができ

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        ずれていく

          夢日記

          ここ数年つけている夢日記の中から一部抜粋。 ───── 2022/2/17 なくしたと思っていたフィルムが出てきて、現像に出す。遠く離れたところにいる大切な友人がたくさん写っていた。ただ逆光で暗すぎてどの写真も顔が見えなくて、友人の後ろに立っている青々と茂った木だけが透き通った緑の光を湛えていた。 ───── 2023/1/6 幼少期ずっとそばにいてくれた安心毛布と星を眺めに行く。夢の中の私は大人だったので、毛布はとても小さかった。途中雨が降り始めてしまって、濡れ

          2024年5月

          最近はかなり心身の調子がいい。気候がいいのもあるし、一番忙しい時期を抜けたのもあるし、もう辞めるって決めたのもあるのだろう。気持ちに左右されずかなり動けるようになって、鳥取へ一泊二日の弾丸旅行に出かけたりした。ずっと行きたかった砂丘を歩いたり、温泉に入ったり、たくさん海を見ることができてうれしかった。 ▽ 職場の新入社員、年が近くて同性ということもあり、たくさん話しかけてくれる。グミの話とかシルバニアファミリーの話とか、おいしいお店の話とか、いろいろできて楽しい。仲良くな

          鳥取旅行記②

          鳥取旅行2日目。目が覚めて波の音がするのがうれしい。早々に支度をして、朝から海辺を散歩した。ひんやりした潮風が気持ちいい。この日は晴天だったので、どこまでも青い海が清々しかった。存分に皆生の海を楽しんで、まずは境港に向かった。 皆生から境港へは車で20分ほどで着いた。平日の午前中なのであんまり人がいなくて散策しやすい。とりあえず水木しげるロードをふらふら彷徨ってみた。いろんな妖怪の像がところどころに立っていて楽しい。ゲゲゲの鬼太郎のこと、そんなに詳しくはないけれどそれでも十

          鳥取旅行記②

          鳥取旅行記①

          砂丘が見たかった。砂丘の向こうに見える海に焦がれていた。砂と海のコントラスト。雄大な景色に飲み込まれたかった。2年ほど前、苦しくなり始めたころ、植田正治の写真を見に行ったことがある。砂丘で写された演出写真たち。あっという間に魅了された。 移動は車を使うことにした。鳥取まで車で下道を3時間、私の車は2008年製の古い軽なので、山道を走るとエンジンがかなり唸る。ごめんよ、と思いなから車をブンブン唸らせてなんとか砂丘にたどり着いた。 ずっと砂丘越しの海を見たいと思っていて、やっ

          鳥取旅行記①

          2024年4月

          今年の桜は遅かったけれど、うまく仕事の閑散期にかかってくれたおかげでのんびり楽しむことができてうれしかった。お花見を誰かとするの、何年ぶりだったろう。すきな人とするお花見は本当に楽しかった。 桜、散りかけて葉っぱが出てきてからも好きだ。清々しい新緑の色が鮮やかで、新しい季節の到来を感じる。 気温が上がってくるとともに少しずつ気持ちも上向いてきて、この頃は異常に不安になったりさみしくなったりして泣くことがなくなった。かといってハイになるわけでもなく、波がちょうどいいところに来

          2024年3月

          最近雨ばかり続いて、なかなか気分が上がらない。仕事をしているときの雨はどこまでも行けそうな気分になるけれど、休みの日の雨はどこにも行きたくなくなる。 3月の頭まではかなり精神の調子が悪かった。わけもなく涙が出たり、とてつもなく死にたくなったりした。苦しくて苦しくてたまらなかった。 恋人とひとつ約束をした。生きる意味とか、死ぬとか言わないこと。たくさん泣いてしまった。死にたい気持ちを受け入れてもらえなかったことが悲しかったのか、困らせたことが悲しかったのか、今までの人生で我

          雑記_2024_0329

          私に「元気?」と聞く代わりに、「桜が咲かんなあ」と声をかけてくれる先輩がいる。元気かと聞かれると、元気ですと答えてしまうからだ。桜はまだ遠いなあ、から始まって、蕾が膨らんできたなあ、になり、先日ついに「桜が咲いたで!」と声をかけられた。こんなとこ抜け出して桜見に行こうや、と仕事中にもかかわらず先輩は笑って言う。桜の開花とともに長く苦しい繁忙期の終わりがやっと見えてきた。 ▽ なにかを、誰かを好きでいすぎることは苦しい。私にとっては。胸の奥がずっと燃えているような感じがする。

          雑記_2024_0329

          雑記_2024_0305

          仕事で車に乗っている途中ですれ違った養鶏場のトラック。所狭しとニワトリが押し込まれている。通り過ぎていったあとにはひらひらと真っ白な羽が残されて、なんとも言えず切ない気持ちになる。自分だって鶏肉を食べるし卵も食べるのに、自分勝手な感情だな、と思ってすこし嫌になる。割り切れない気持ちを割り切れないまま抱えること。祈り。 ▽ 好きなひと。どうか私が壊れてしまうくらいに抱きしめてくれと思うときがある。あなたのその腕の力ではらはらと崩れ落ちることができたらどんなにいいだろうか。壊れ

          雑記_2024_0305

          2024年2月

          冬の深まりとともに鬱も深まってくる。仕事でも、休みの日でも、うまく元気が出せなくてもどかしい。頭では頑張りたいと思っているのに心身がついてきてくれない。最近は趣味をやる元気もない。写真、そろそろちゃんと撮りに行きたいけれどなんだか億劫なのと、出かけようと思う日に限って天気が悪くて断念してしまう。雨の日の写真をかっこよく撮ってみたい気持ちもあるけれど、面倒臭さが勝ってしまってよくない。 今月は2回通院日があった。病院、自分のことについて話すのが下手だ。うまく話そうとしてしまう

          夜が長かったころ

          子供の頃、自分の部屋がなくて家族3人同じ部屋で寝ていた。そのころ両親はよく喧嘩をしていて、口で父親に勝てない母親は途中で折れて、黙って怒って真っ暗な寝室にこもって眠ったふりをするのだが、多くの場合私もそれに付き合わされていた。 どうして仲良くできないのか、どうして分かり合おうとしないのか。自分のことで喧嘩になったとき、いつも死にたかった。怖かった。苦しかった。父の口調が怖かった。父が感情に任せて家を飛び出してしまったときは、もう帰ってきてほしくないと思ったこともある。そうす

          夜が長かったころ

          雑記_2024_0217

          光が春だ。光の角度も色も、輝き具合も、いつからか春めきはじめた。気付かないうちに季節が移り変わる。冬が終わるのはすこしさみしい。冬のことは結構好きだけれど、寒いと心身の調子がおしまいになってくるので複雑なところだ。春になったら鳥取砂丘に行きたい。砂丘の向こうに見える青い海を眺めたい。春には仕事が閑散期に入るので恋人と過ごせる時間も増える。春が待ち遠しい。 ▽ 爪をむしるのをやめられない。爪の先の白いところをついついむしってしまう。むしれるところがなくなったら、周りの皮をむ

          雑記_2024_0217

          遠くまで泳ぐ

          ずっと言えずにいたこと。先日、父親にようやく恋人がいることを打ち明けた。いいんじゃない、とゆるい感じで受け入れられた。父親はずっと気が付いていたけれど、言わずにいたらしい。お前の人生なんやから、好きに生きたらいいんや。そう言って父は笑った。思った以上にすんなり受け入れられて、拍子抜けした。 秘密を抱えたまま生きるのは苦しい。抱えた秘密のぶんだけ、ずんと心に重さが増すような気がする。いつ打ち明けようか、ずっとずっと悩んでいた。隠すほどのことでもないはずなのに、なぜだかなかなか

          遠くまで泳ぐ