鳥取旅行記①
砂丘が見たかった。砂丘の向こうに見える海に焦がれていた。砂と海のコントラスト。雄大な景色に飲み込まれたかった。2年ほど前、苦しくなり始めたころ、植田正治の写真を見に行ったことがある。砂丘で写された演出写真たち。あっという間に魅了された。
移動は車を使うことにした。鳥取まで車で下道を3時間、私の車は2008年製の古い軽なので、山道を走るとエンジンがかなり唸る。ごめんよ、と思いなから車をブンブン唸らせてなんとか砂丘にたどり着いた。
ずっと砂丘越しの海を見たいと思っていて、やっと夢が叶った。実は小さい頃に来たことがあるのだけれど、その頃はまだ今ほど海に焦がれていなかった。砂の丘の向こうに広がる青くて荒々しい日本海。うれしかった。馬の背を登り、そこからさらに下っていって海の側まで行った。私の他にはもうひとりしか海までは来ていなかった。しばらく眺めて、だんだん天気がおしまいになってきたので1時間ほどで戻った。
風がとにかく強くて、砂の粒が顔に叩きつけられて痛かった。長袖を着てきたのは正解だった。雨も降ってきて、カメラを守りなからなんとか帰り着いた。暴風の中でも砂丘センターで梨ソフトを食べるのを忘れなかったのでよかった。おいしかった。
昼食は同期が教えてくれたかろいちで海鮮丼をと思っていたけれど、すこし到着が遅くて目当ての店は早々に店じまいしてしまっていた。市場の中にジェラート屋さんがあったのでチョコバナナとロイヤルミルクティーのフレーバーを頼んだ。隙あらばアイス。おいしかった。産直品を売るお店が併設されていたので、夜に部屋で飲むお酒や自分用のお土産にお茶を買った。
宿は砂丘から1時間半くらいのところにある皆生温泉にした。部屋から海が見えるし、温泉にこれまで全然行ったことがなかったのでこの機会に、と思って決めた。移動の途中の道で大きな風力発電の風車が何基も並んでいて、ついつい見上げてしまった。よそ見注意の看板が出ていたのでみんな見ちゃうんだな、と思った。移動の途中休憩で道の駅に寄った。海岸と歩道橋で繋がっていて、さっそく海まで降りた。風が強い日だったので波が荒くてかっこよかった。
宿に到着して、とりあえず窓から海を楽しんだ。しばらくのんびりして、素泊まりのプランにしていたので宿の近所のカフェレストランで晩ごはんを食べた。洋食。おいしかった。ごはんのあとは浜辺をふらふら散歩して、夕暮れ時の海を楽しんだ。曇り空の隙間から夕日がかすかにこぼれていて綺麗だった。
夜はゆっくり温泉に入った。海から湧き出ているらしく、かすかに潮のにおいがした。海に浸かっているみたいでうれしくなった。平日だったし、変な時間に行ったので、私以外誰もいなくて快適だった。ゆっくりお湯を楽しんだ。かなり温まったし肌がすべすべになった気がした。温泉の良さに目覚めてしまった気がする。
海に面した部屋を取ったので、ずっと波の音がする。海がすぐそばにあることを感じられて心地よかった。波の音を聞きながら眠った。