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雑記_2024_0329

私に「元気?」と聞く代わりに、「桜が咲かんなあ」と声をかけてくれる先輩がいる。元気かと聞かれると、元気ですと答えてしまうからだ。桜はまだ遠いなあ、から始まって、蕾が膨らんできたなあ、になり、先日ついに「桜が咲いたで!」と声をかけられた。こんなとこ抜け出して桜見に行こうや、と仕事中にもかかわらず先輩は笑って言う。桜の開花とともに長く苦しい繁忙期の終わりがやっと見えてきた。


なにかを、誰かを好きでいすぎることは苦しい。私にとっては。胸の奥がずっと燃えているような感じがする。はじめのうちはほどよく温かいが、そのうち自分自身を焼き尽くし始めるだろう。ときどき大切なものを入れる箱から取り出して、きれい、と手にとってしばらく眺めて、そうしてまた大事に仕舞ってしまうくらいがちょうどいいのかもしれない。あるいは届かないままでいるくらいがいいのかもしれない。届かないものはずっときらきらしている。何にも執着したくない。自分の足で立っていたい。いつでも自分のそばにいられるのは自分だけだ。そう言い聞かせる。


職場の昼休みに少しずつ本を読んでいる。ざわざわする気持ちを落ち着けるためだ。1ヶ月の間で小野洋子『まぶた』、西加奈子『白いしるし』、川上弘美『センセイの鞄』を読んだ。西加奈子の書く本は今回初めて読んだ。これまでの人生で恋愛に関する小説を全然読んでこなかったので新鮮な感じがする。どの作品もそれぞれ引き込まれて面白かった。物語の世界に入り込んで心を動かしている間は自分の中の苦しい気持ちから目を逸らしていられる。ただ、本当にしんどいときには本が読めないので多少の元気が必要だ。


魚座というバンドのエンゲルコールという曲が好きだ。
「君が見ているものはなに 君に見えているものはなに/君が思い出すのはなに 君を悲しませるのはなに」
ひとを好きになるということは、その人のことを知りたいということだと思う。親愛でも友愛でも恋愛でも。好きなもの、嫌いなもの、言葉の温度、見えている世界。あなたは今、何を見て何を考えているのだろう。