三十五年目のラブレター 第8話
「川畑さん、少し遅くないですか?」
詩穂里がそう言いだしたのは、川畑がチョコを連れて出てから一時間ほど経った頃だった。実は島崎もそんな気はしていたのだが、何しろチョコが普段どんなルートでどれくらいの時間散歩しているのかわからなかったため、さほど気にしてはいなかったのだ。
「いつもはどれくらいで帰って来るの?」
「二十分くらいです。のんびりしたときでも三十分くらいで戻って来ます。もうそろそろ一時間経ちますよね? 何か不審人物でも見かけたんでしょうか」
「うーん、あいつのことだ