如月芳美

趣味の小説書きです。 商業作品: 『いちいち癇に障るんですけどっ!』(角川ビーズログ文…

如月芳美

趣味の小説書きです。 商業作品: 『いちいち癇に障るんですけどっ!』(角川ビーズログ文庫) 『にいがたショートストーリー』https://irodoriplus.offici web小説:カクヨム/ステキブンゲイ

マガジン

  • 三十五年目のラブレター(小説)

    アールヌーヴォーの画家たちに暴かれる三十五年前の真実 「最も価値のあるものを奪ってやる」 業務上横領で逮捕された建設会社経理部長。 強制猥褻で逮捕された都議会議員。 二人のところには同じ文面の手紙が届いていた。 そしてその手紙が三人目の手元に届く。 彼は美術商。警察の世話になるようなことは何一つしていない。 一見、何の接点も無いように見える三人には、ある共通の秘密があった。 美女と野獣の同級生刑事コンビが怪文書の謎に挑む。 『フレンチクルーラー殺人事件』に続く、島崎・川畑シリーズ第2弾。

  • 生協で見つけたイイモノ(ブログ)

    100均で見つけたいいもの、美味しいコンビニスイーツ……などなど、安価でイイモノを紹介する記事はたくさんあるけれど、『生協』のイイモノを紹介する記事って見たことないよ! ってなわけで、以前からTwitterなどで紹介していた『生協のイイモノ』をこちらに引っ越してきてご紹介します。 私が利用しているのはおおさかパルコープなので、近畿以外の生協さんにはおいてないかもしれないけど、参考にしてくださいね!

  • うさぎとおばけのマグカップ(小説)

    「そこ、人が死んだのね。出るの。幽霊が」 「了解です。それでいいです。そこ住みます」 築五年、南東向き角部屋、バストイレ別、リビング10畳、収納たっぷり。 これで一ヵ月五千円! 確かに出たよ。出たんだよ。とびきり元気が良くて健康そうな幽霊が。 いや、お前死人だろ。幽霊の癖にやたらと前向きなんだよ、言動が! つーか待て。俺の生活に介入するな、お節介焼くな、口挟むな。 幽霊の癖にやたらと気を使うな! 調子狂う! 今日も絶好調な幽霊に俺は振り回され続けるのか。

  • よんよんまる(小説)

    東のプリンス・大路詩音。西のウルフ・大神響。 音楽界に燦然と輝く若きピアニストと作曲家。 見た目爽やか王子様(実は負けず嫌い)と、 クールなヴィジュアルの一匹狼(実は超弱気)、 イメージ正反対(中身も正反対)の二人で構成するユニット『よんよんまる』。 だが、これからという時に…。

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よんよんまる 第1話

【あらすじ】  ピアノ界の貴公子・大路詩音、作曲界の一匹狼・大神響。偶々会った彼らは、実は五歳の時にピアノコンペで出会っている。その時以来、詩音は響をライバル視し、響は詩音を崇拝していた。  一緒の仕事が増え、詩音の姉・花音のプロデュースで『よんよんまる』というユニットを組む事に。  だが彼らが有名になる事で、DVの為に母と二人で逃げ出した響の父に見つかってしまう。父は息子の所に金をせびりに来るようになり、母への暴力を見た響は父を殴ってしまう。父はそれを週刊誌に売り『よんよん

    • 三十五年目のラブレター 第8話

      「川畑さん、少し遅くないですか?」  詩穂里がそう言いだしたのは、川畑がチョコを連れて出てから一時間ほど経った頃だった。実は島崎もそんな気はしていたのだが、何しろチョコが普段どんなルートでどれくらいの時間散歩しているのかわからなかったため、さほど気にしてはいなかったのだ。 「いつもはどれくらいで帰って来るの?」 「二十分くらいです。のんびりしたときでも三十分くらいで戻って来ます。もうそろそろ一時間経ちますよね? 何か不審人物でも見かけたんでしょうか」 「うーん、あいつのことだ

      • 三十五年目のラブレター 第7話

         展示会当日、アートギャラリーナカハシにはいつもの展示会のときと同じように警備会社から警備員二名が派遣されていた。見た目にはこの二人の警備員だけに見えたであろう、実際は私服の警察官が更に三人ほど配備されている。  だが、そこに川畑と島崎の姿はない。本命は自宅のクリムトだと踏んだ二人は、中橋邸のクリムトの前で待機しているのである。そしてこちらには詩穂里がついている。  狙われている名画と一緒に留守番ということで緊張感はあるものの、詩穂里は思いの外落ち着いている。恐らく年齢の近そ

        • 三十五年目のラブレター 第6話

          「いよいよ明日ね」 「なんか張り切ってる?」 「当たり前じゃない。私が担当になったからには絶対にとっ捕まえてみせるわ」  エコール・ド・パリの展示会前日。会場となるアートギャラリーナカハシでの警備の説明が一通り終わり、川畑と島崎は中橋邸へと場所を変えていた。先日の応接室で中橋を待つ間、この部屋の間取りや設備を確認しておく必要がある。 「部屋の出入り口はこの扉だけ。あとは庭に面したこの大きな窓か」 「ちゃんと日光が当たらない場所にクリムトを飾っているのね。紫外線は大敵だものね」

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        よんよんまる 第1話

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        • 三十五年目のラブレター(小説)
          8本
        • 生協で見つけたイイモノ(ブログ)
          11本
        • うさぎとおばけのマグカップ(小説)
          41本
        • よんよんまる(小説)
          47本

        記事

          三十五年目のラブレター 第5話

          「これな。例の議員センセイのところに来たっていう手紙」  島崎が机の上に置いた手紙を見て、川畑は「あらー」と苦笑いする。先日強制猥褻で大騒ぎになった西川議員のところに届いたものである。  中橋のところに届いたものと同じく、何かの印刷物の文字を切り貼りしており、その文面はやはり中橋と同じ『一番価値のあるものを奪ってやる』である。 「これ、消印は先月ね。受付局は船橋郵便局。中橋さんの方は綱島郵便局」 「千葉と神奈川か。まるで接点ねえな」  川畑が眼鏡の赤いフレームを押し上げる。

          三十五年目のラブレター 第5話

          三十五年目のラブレター 第4話

          「お待たせしてすみません、ちょっと仕事の電話が入っていまして」 「いえ、こちらこそお忙しいところ無理を言って申し訳ありません」  中肉中背、というより少々貧弱な感じがする。この家から想像するに、もっとでっぷりとしたタヌキのようなオヤジを想像していた二人は、イタチかテンを彷彿とさせる風貌の彼に出端を挫かれた感じになった。 「中橋洋一です。アートギャラリーナカハシを経営しております」  小心者。これが二人の中橋に対する第一印象だった。おどおどと落ち着きなく二人と手元の間を移動する

          三十五年目のラブレター 第4話

          三十五年目のラブレター 第3話

          「そういうわけで、今日から一課の応援。川畑さんの補佐に任命されちまった」  ハンドルを握る島崎が心にもなく迷惑そうに言うと、助手席から川畑がシレッと答えた。 「うん、私が上に要請したから」 「なんだよ、川畑さんが犯人かよ」 「犯人とは失敬な。島崎君が『全く同じメッセージだ』って言いだしたからじゃないの。同一犯による犯行予告かもしれないでしょ?」  今日は黒いゴムで髪をまとめている。まだバレッタを買いに行っていないのだろう。  川畑がシートベルトを締めたのを確認すると、島崎は静

          三十五年目のラブレター 第3話

          10.えび炒飯

           はい、いつものようにランチを作るのがめんどくさい如月です。  もうね、おなじみですね。生協の『チンしてランチ』シリーズね。今回は泣く子も黙るえび炒飯です。  え、なんで泣く子も黙るかって? 美味しいからに決まってんじゃない。    まず左の写真がパッケージです。普通の袋です。この中に入ってんのね。これを平たいお皿に出して待るべく平らにする(ここ大切)。そうするとレンジのマイクロウェーブ照射ムラがなくなりますからね。  そして大切なのがラップをかけること! そのまま温めると…

          10.えび炒飯

          三十五年目のラブレター 第2話

          「ったく、あとからあとからナンボでも出てくんじゃねえか、あの『ひとり猥褻博覧会』が」 「まあ、そういじけるな。そのうち島ちゃんにもいい女が見つかるよ」 「ケッ……ほっとけ」 「その前にそのヨレヨレシャツ、いい加減アイロンかけろ」 「余計なお世話だ。お先!」  こんな仕事をしていればカノジョもできない。仮にできたとしても、まるで予定が合わせられないうえにドタキャンなんか日常茶飯事だ、ソッコーで別れる運命なのが目に見えている。  同じ業種の人が相手なら、お互いの都合が理解できるか

          三十五年目のラブレター 第2話

          三十五年目のラブレター 第1話

          【あらすじ】 「最も価値のあるものを奪ってやる」 業務上横領で逮捕された建設会社経理部長、強制猥褻で逮捕された都議会議員、そして美術商のもとに脅迫文が届く。 一見、何の接点も無いように見える三人には、ある共通の秘密があった。 偶然にも川畑刑事は犯人に拉致され、犯人に肉薄していく。 バディの島崎刑事は犯人を外堀から埋めていき、執念の聞き込みで共通点を見つけ、35年前の事件を追うことに。三人の被害者に話を聞くうちに出てくるおぞましい証言、そして思わぬところから出てきた証拠の品。

          三十五年目のラブレター 第1話

          うさぎとおばけのマグカップ 第41話

           あれからすぐに鶴亀不動産で格安物件を探して貰ったが、今まで住んでいたところくらいの条件で安い物件なんかありゃしなかった。当然だ、そもそもが事故物件なんだから。  だけど事故を起こした会社が同等レベルの物件で差額を支払ってくれるというので、亀蔵さんに任せていい感じの部屋を見繕って貰った。差額分って簡単にいうけど大変なことになるぞ。そもそもが安かったんだから結構な額になるに違いない。  まあ、あの日はクリスマスに旅行したんだと思うことにして、幽霊と二人でホテルからの夜景を満喫し

          うさぎとおばけのマグカップ 第41話

          うさぎとおばけのマグカップ 第40話

           今日は幽霊と一緒に買い物に来ている。昨日、死に損なった時に考えたセンターラグを買いに来たのだ。  ほんの二畳ばかりのサイズのラグだから、そのままお持ち帰りだ。帰りに食材買って帰る事だってできる。  とはいえ、昨夜幽霊が頑張って焼いて来たケーキがあるんで、イチゴと生クリーム買って帰れば、あとは二人で飾り付けして食うだけだ。他にチキンでも買って、ピザでも頼めばいいだろう、どうせ一人前だし。  俺が右手に丸めたラグ、左手にチキンの袋を下げて歩いていると、前方から見たことのある男女

          うさぎとおばけのマグカップ 第40話

          うさぎとおばけのマグカップ 第39話

           イベントも無事に終わり、家に帰ったんだが、なぜか幽霊はいなかった。  なんだよアイツ、どこ行っちゃったんだよ。会場には来ないし、家にもいないし。  部屋は寒いし、風呂も沸かしてない。当然ご飯も作ってない。なんだかな、今日みたいに疲れた日こそ、やっておいて欲しいのに。  ブツブツ言いながらファンヒーターを点けて、風呂を沸かす。とりあえず風呂は洗っておいてくれたっぽいから、お湯を張るだけなんだけど……でも、帰って来てすぐに入りたかったな。  疲れ果てていた上に体の芯まで冷えてい

          うさぎとおばけのマグカップ 第39話

          うさぎとおばけのマグカップ 第38話

           十二月二十三日、クリスマスイブイブがやって来た。最古杵市五十周年イベントの最後を飾る『クリスマス・トワイライト』だ。  会場となる鎖猪瓦公園の木々には、二週間ほど前からイルミネーションが光り輝いている。  鎖猪瓦河川敷公園は、鎖猪瓦野球場と鎖猪瓦体育館など共に『鎖猪瓦総合運動公園』の中にある、桟角川に面した長い公園だ。体育館の横にはプールとテニスコートもあり、野球場の向こう側には鎖猪瓦ゴルフ場だってある。  そんな中にあって唯一子供が遊びまわれるのがこの河川敷公園だ。川縁に

          うさぎとおばけのマグカップ 第38話

          うさぎとおばけのマグカップ 第37話

           菊花展が大成功に終わり、ついに今年はあと残すところクリスマスイベントだけになった。  つっても年明け早々に成人式があるんだけどね。まあ、成人式は俺はサポートであって責任者じゃないから、気が楽っていえば気が楽だけど。  さて、クリスマスだ。献血ルームと調整を取って、当日の献血バスの手配をしたり、グッズ販売用のテントを準備したりと大忙しだ。  こういうイベントは、本当に細かいことが山ほど出てくる。何もかもが初めての試みだから俺の好きなようにできる反面、全部俺が手配しなきゃならな

          うさぎとおばけのマグカップ 第37話

          うさぎとおばけのマグカップ 第36話

           菊花展の方は秋谷夫妻のお陰で驚くほどスムーズに事が進んだ。  徳積寺は二つ返事で場所を提供してくれたらしく、俺が挨拶に行く頃には住職がいろいろ下準備を始めてくれていた。さすがにあじさい市やほおずき市を何度もやっているだけあって、実に手慣れたものだ。  さらに言えば、この寺でも菊をたくさん育てていて、菊のことなら育て方から管理の仕方まで何でも知っているから任せてOKということだった。  俺の方がオタオタしていて、住職に手取り足取り教えて貰っていたが、そういうことで繋がりができ

          うさぎとおばけのマグカップ 第36話