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三十五年目のラブレター(小説)

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アールヌーヴォーの画家たちに暴かれる三十五年前の真実 「最も価値のあるものを奪ってやる」 業務上横領で逮捕された建設会社経理部長。 強制猥褻で逮捕された都議会議員。 二人のとこ…
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記事一覧

三十五年目のラブレター 第1話

【あらすじ】 「最も価値のあるものを奪ってやる」 業務上横領で逮捕された建設会社経理部長、…

如月芳美
11日前
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三十五年目のラブレター 第2話

「ったく、あとからあとからナンボでも出てくんじゃねえか、あの『ひとり猥褻博覧会』が」 「…

如月芳美
10日前
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三十五年目のラブレター 第3話

「そういうわけで、今日から一課の応援。川畑さんの補佐に任命されちまった」  ハンドルを握…

如月芳美
10日前
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三十五年目のラブレター 第4話

「お待たせしてすみません、ちょっと仕事の電話が入っていまして」 「いえ、こちらこそお忙し…

如月芳美
9日前
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三十五年目のラブレター 第5話

「これな。例の議員センセイのところに来たっていう手紙」  島崎が机の上に置いた手紙を見て…

如月芳美
9日前
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三十五年目のラブレター 第6話

「いよいよ明日ね」 「なんか張り切ってる?」 「当たり前じゃない。私が担当になったからには…

如月芳美
8日前
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三十五年目のラブレター 第7話

 展示会当日、アートギャラリーナカハシにはいつもの展示会のときと同じように警備会社から警備員二名が派遣されていた。見た目にはこの二人の警備員だけに見えたであろう、実際は私服の警察官が更に三人ほど配備されている。  だが、そこに川畑と島崎の姿はない。本命は自宅のクリムトだと踏んだ二人は、中橋邸のクリムトの前で待機しているのである。そしてこちらには詩穂里がついている。  狙われている名画と一緒に留守番ということで緊張感はあるものの、詩穂里は思いの外落ち着いている。恐らく年齢の近そ

三十五年目のラブレター 第8話

「川畑さん、少し遅くないですか?」  詩穂里がそう言いだしたのは、川畑がチョコを連れて出…

如月芳美
7日前
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三十五年目のラブレター 第9話

 痛い……まだ背中が痺れている。ここはどこなんだろう――。  川畑は手足の自由の効かない…

如月芳美
6日前
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三十五年目のラブレター 第10話

 クリムトの前のソファセットには、ギャラリーから戻った中橋夫妻と、詩穂里、島崎と、署から…

如月芳美
6日前
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三十五年目のラブレター 第11話

 川畑は玩具の手錠をかけられたままの両手でマグカップを持つと、彼の淹れてくれたコーヒーを…

如月芳美
5日前
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三十五年目のラブレター 第12話

 女性三人と男性一人のうち、男性は割と簡単に所在が掴めた。  桐谷武彦、六十歳、独身。東…

如月芳美
5日前
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三十五年目のラブレター 第13話

 川畑は桐谷と向かい合って、サンドイッチを食べていた。手錠も外され、完全に自由の身である…

如月芳美
4日前
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三十五年目のラブレター 第14話

 内藤の居場所はあっさりと判明した。内藤の経営する小料理屋を、阿久津が知っていたのである。  彼女の店は夕方五時から営業するため四時にはもう仕込みを始めるらしい。その時間帯を狙えば必ず話が聞ける。準備の時間に押し掛けるのは邪魔だろうが、営業中では話しにくいこともあるだろう。  島崎が四時過ぎを狙って行ってみると、入り口のドアを全開にして玄関先を箒で掃いている年配の女性がいた。彼女が内藤だろうか。 「すみません、失礼ですが内藤きよみさんですか?」  島崎が声を掛けると、その女性