三十五年目のラブレター 第7話
展示会当日、アートギャラリーナカハシにはいつもの展示会のときと同じように警備会社から警備員二名が派遣されていた。見た目にはこの二人の警備員だけに見えたであろう、実際は私服の警察官が更に三人ほど配備されている。
だが、そこに川畑と島崎の姿はない。本命は自宅のクリムトだと踏んだ二人は、中橋邸のクリムトの前で待機しているのである。そしてこちらには詩穂里がついている。
狙われている名画と一緒に留守番ということで緊張感はあるものの、詩穂里は思いの外落ち着いている。恐らく年齢の近そ