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ドイツ一人旅_再び交渉_08_07【海外旅行】
1999年冬 8日目 ミュンヘン
僕が入手したチケットが何であるかさっぱりわからないが、サッカーファンからすれば全く興味がないものであることには間違いなかった。
すると30歳位の少しオタク風の男が声をかけてきた。
「ハウ マッチ?」
僕はチケットの『59』の数字を指差して、定価で買って欲しいと哀願した。
「ノー ノー サーティー」
指を3本立ててきた。「半額なら買うぜ」と言っているようだった。今度は僕が「ノー ノー」という番だった。
再度『59』の数字を指差す。このやりとりが何度か続いたが、結局交渉は決裂した。オタク風の男は特に悔しがったわけでもなく、何事もなかったかのように向こうへ行ってしまった。
僕は再びチケットを掲げた。しかしすぐにチケットを引っ込めて後ろを向いてうつむいた。日本人と目が合ったからだ。卒業旅行シーズンであり学生らしき日本人がたくさんいた。
まあ、向こうにしてみれば僕が何をしているのか関心も湧かなかっただろう。しかし僕にとってみれば異国の地で何のイベントだかわからないチケットを売ろうとしている姿は、日本人には絶対に見られたくないほど恥ずかしかった。
日本人が見えなくなると再びチケットを掲げた。しかし思いほか日本人が多く、掲げては引っ込めての繰り返しで思うように交渉ができない。
そんなこんなで1時間があっという間に過ぎてしまった。キックオフまであと1時間しかない。
あぁ、こんなことならさっきのオタク風の男に半額でもいいから売っておけばよかった…
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