ドイツ一人旅_道案内_12_07【海外旅行】
1999年冬 12日目 フライブルク
フライブルグ中央駅の前でユースホステルに向かう路面電車を探していたところ、老夫婦が声をかけてくれた。
「どこに行きたいのですか?」
「ユースホステルです」
「それではあの路面電車に乗ればいい。ついてきなさい」
そういうと、歩きだした。僕はその後についていった。しばらく歩くと路面電車のホームに到着し、路線図を指差した。
「ここがユースホステルに一番近い駅だよ」
「ダンケシェーン(ありがとうございます)」
感謝を伝える言葉を一つしか知らないことに、ここでももどかしく感じた。
しばらく老夫婦はその場を離れなかった。同じ路面電車に乗るのだろうか?そのついでに案内してくれただけだろうか?そんなことを考えていると僕が乗る路面電車がきた。僕は乗車したが、老夫婦はホームに立ったままだ。
「ハヴァ ナイス トリップ」
微笑んで手を振ってくれていた。
「ダンケシェーン(ありがとうございます)」
僕も手を振り返した。きっと老夫婦は僕が乗車するまで心配で見守ってくれたのだろう。本当にドイツ人はなんて親切なんだ!道を探しているとほぼ百パーセント誰かが声をかけてくれる。
僕も日本に帰ったら道を探している外国人を助けてあげよう、と誓うのであった。
路面電車に揺られながらぼんやりと考えていた。『恩返し』という言葉があるが『恩』というものは『返す』ものではなく『渡す』ものなんじゃないだろうか。つまり、往復するのではなく、リレーしていくものなんじゃないだろか。
教えて頂いたバス停で降りた。ユースホステルは小さな川の畔にあり、対岸には地元のサッカークラブのスタジアムがあった。2万人位の小じんまりとしたスタジアムだったが、サッカー専用であり臨場感は良さそうだった。
もちろん屋根には太陽光発電パネルがびっしりと敷き詰められていた。
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