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ドイツ一人旅_注文_09_10【海外旅行】
1999年冬 9日目 ミュンヘン
レストランは大勢の客で賑わっていた。
ウエイターに案内されたテーブルに座るとメニューを眺めた。ミュンヘン名物といえば『白ソーセージ』である。味は淡白なのだが、相性抜群の甘いマスタードをたっぷりつけて食べると格別な味わいなのだ、そうだ。
そうだ、というのは食べていないからだ。残念ながら本日は品切れとのことだった。名物料理が品切れなんて…。日本では考えられないが、環境先進国のドイツでは食べ物を余らせるという発想はないのかもしれない。
さて、気分を持ち直して改めてメニューを見た。写真が添えてあり、イメージしやすいのが助かった。僕は美味しそうなソースが浸るほどかかったチキンを、Nさんは同じソースのポークを注文することにした。
「ビール飲む?」
「わたし、お酒飲めないの…。でも、折角だから飲んでみようかな」
「じゃあ、瓶ビールを頼もう」
僕はウエイターを呼ぶと食事を注文し、瓶ビールを頼もうとした。さて、どうやって頼もうか?
「ビヤー」
そういうと、左手を筒状にしてビール瓶を持つ仕草をして、右手に栓抜きを持つふりをして、栓を開ける動作をした。それから左手を持ち上げNさんと僕の順に注ぐまねをした。
「ヤー」
ウエイターは頷くと厨房に戻っていった。しばらくするとウエイターは瓶ビールとコップを2つ持ってやってきた。
「すごいね。ちゃんと通じるんだ」
そうなのだ。言葉などコミュニケーションの道具に過ぎない。伝えたい気持ちが強ければ、身振り手振りで通じてしまうのだ。
僕は得意げになっていた。
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