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ドイツ一人旅_さてどうする_08_06【海外旅行】
1999年冬 8日目 ミュンヘン
か細い女性からチケットを買い取る交渉をして、値段を下げてきたときに、間違いに気づくべきであった。
訳のわからぬチケットを買い取ってしまい、しばらくは呆然として動けなかった…。更に追い討ちをかけるように、現金が少ない。あと60マルクしか残っていない。きっとこの金額ではチャンピオンズリーグのチケットを買うことができない。
今から市街地に戻ってトラベラーズチェックを換金するか、ATMでキャッシングをしている時間はない。どうしたらいいんだ?途方に暮れた…
しかし、いつまでも途方に暮れているわけにはいかない。考えたあげくに思い至ったのは、僕が持っている何のイベントかよくわからないこのチケットを再び売ることだった。
そうと決まれば話は早い。チケットを売ることに専念した。
チケット売り場の前にいる怪しいおっさんに声をかけても相手にしてくれないのはわかっていた。そこで取った作戦はチケットをかざして声をかけてくれるまで待つ方法だ。
すでにダフ屋に売るのではなく買ってくれる人を直接捉まえて交渉を行うべく、チケットをかざす人の列ができていた。僕は駅に近い方の端に並んだ。チケットを胸のあたりに掲げて愛想笑いをする。
しばらくすると通りすがる人々の反応が一様に同じであることがわかってきた。みんな苦虫を噛み潰したような顔をするのだ。ある人は両手を広げて手のひらを上に向けながら「Why」といった感じで首をかしげ、ある人はおばさんが「あらいやだ~」と言って手首をスナップするように、勘弁してくれよといった顔つきをする。
僕の持っているこのチケットは一体何なのだ?
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