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#126 リエゾン学級経営 第6章「特別支援理解教育の実践を2つ紹介!」

リエゾン学級経営とは?

中教審答申「令和の日本型学校教育」実現への課題

令和の日本型学校教育は、2020年代を通じて目指すべき学校教育の姿として、中央教育審議会において答申されたものです。
この答申では、全ての子供たちの可能性を引き出すために、個別最適な学びと協働的な学びの実現を重視しています。

個別最適な学びとは、一人ひとりの子供の興味・関心や学習状況に応じて、最適な学びを提供することです。
そのためには、子供の理解度や習熟度を把握し、その結果に応じて指導内容や方法を調整することが重要です。
また、子供自身が自分の学びを主体的に考え、計画・実行・評価できるような環境を整えることも大切です。

協働的な学びとは、子供同士が協力しながら学び合うものです。
そのためには、子供同士が協力し合うためのルールやマナーを身に付け、お互いに尊重し合いながら学び合えるような環境を整えることが重要です。
また、子供たちが主体的に学び合うことができるような課題や活動を設定することも大切です。

令和の日本型学校教育が目指す個別最適な学びと協働的な学びは、いずれも子供たちの主体性を育むことにつながります。
子供たちが自分の興味・関心や学習状況に応じて学び、お互いに協力し合いながら学び合うことで、自ら考え、行動できる力を身に付けることができるのです。

個別最適な学びは、「個に応じた指導」の理念を具体化するものとして位置づけられています。
支援を必要とする少数派の子どもたちは、診断の有無にかかわらず、さまざまな特性や課題を有しています。
そのため、一人ひとりの特性や課題に応じて、学習内容や方法を調整することが重要です。

協働的な学びは、「共生社会」の実現に向けた重要な取り組みとして位置づけられています。
支援を必要とする少数派の子どもたちは、多数派の子どもたちと共に学校生活を送ることになります。
したがって、多数派と少数派が互いに寄り添い合いながら学び合っていかない限り、共生社会の理解や共感力を育むことはできません。

この個別最適な学び・協働的な学びの実現の障壁となる課題が2つあります。
①特別支援教育のスキルアップ。
②多数派と少数派が互いに寄り添いあい、共感しながら学び合うことのできる学級づくり。

この2つを解消しない限り、令和の日本型学校教育は実現は絶対にできないと確信しています。

この2点を解消する学級経営手法が、リエゾン学級経営です。

このような現状や課題をふまえ、多様性を尊重し共に学び成長する新たな教育アプローチとしてリエゾン学級経営を考案しました。

この考え方のベースとなっているのは、多数派が使う「ふつう」という言葉の違和感からです。

多数派が使う「ふつう」には、どんな意味があるのでしょう?
「みんなと同じ」
「多くの人と同じ」
ではないでしょうか?

「ふつう、チャイム鳴ったら座るよね」
「ふつう、発言したいときは手を挙げるよね」
といったような使い方を、多数派の人達は無意識にしています。

そして、みんなと同じであることを「ふつう」としてしまったのが、日本の教育システムです。

ここで多くの人が使う「ふつう」には、おそらく悪意はありません。
「ふつう」であることで居場所を確保し、みんなと同じという安心感を抱きたいだけなのです。
ですが、結果的にみんなと同じようにできない子たちを少数派として追い込み、居場所をなくしていったことも事実です。
同調圧力という言葉は、まさにこの多数派優位の社会の状況が生み出した負の遺産と言えます。

日本は学制以降、一斉指導スタイルを原則として指導をしてきたため、一人の教師が、同じ課題を40人近くの子どもに教えてきました。

それゆえに、
「みんなと同じであること」が強要されてきた歴史があります。
それが積み重なって大きな負の財産となってしまいました。
令和時代の教育においては、この負の財産を払拭すべく、「ふつう」のパラダイム変換をしていかない限り教育の未来はありません。

「ふつう」という概念のパラダイム変換については↓をご覧ください。

リエゾン学級経営とは、
「少数派と多数派が互いに寄り添い合い、共に学び、クラス全員が成長するための教育的なアプローチのことです。」

※少数派とは学級で個別の支援を要する児童
※多数派とは個別の支援を必要としない児童

全員が多様性を尊重し、誰にとっても居心地のよい場、楽しく学びながら互いを認め合う学習環境を築き、目標に向かって努力しながら成長できることを目指します。

学級経営(ゴール設定)×心理的安全性(居場所づくり)×特別支援理解教育(多数派/保護者/職員への理解)=リエゾン学級経営

リエゾンとは、もともとフランス語からきた言葉です。
連携や結びつきを意味していて、医療現場でよく使われています。

これからの学級経営において、多数派と少数派の連携や保護者や校内外の人材との結びつきを強化し、互いの理解を深め合うことが必要不可欠であると感じ、

リエゾン学級経営と名付けました。

次の学習指導要領改訂では、特別支援教育の理解が一層求められる内容となることが予想されます。

そういう意味で、このリエゾン学級経営の理論は、令和時代における学級経営の基本となっていくはずです。

これまで
第1章:教室で困り感を示す子ども達が増加の原因
第2章:不登校児増加問題
第3章:誰にとっても居心地がよいクラスづくり
第4章:特別支援理解教育
第5章:学級経営論
について説明してきました。

今回は、

第6章「特別支援理解教育の実践方法」

について説明していきます。

リエゾン学級経営を軌道に乗せるために、新学期が始まってから1週間以内にやるべきことは以下の4つ。

特別支援理解教育を徹底的に浸透させます。
失敗から学ぶ姿勢を育む
②違いを受け入れる
助け合いを奨励する
④嫉妬や妬みを排除する

もう少し具体的に、どのようなことをしていけばいいのかについてお話ししていきます。

学級担任になったらまず何をしなければいけないのか?

それは、
多数派に対して行う特別支援理解教育です。
いわゆる多数派工作。
これをしないとトラブル対処に追われることになります。

一見平和そうに見えるクラスであっても、この特別支援理解教育を徹底していかないと、少数派の子たちを追い詰めていくことになります。

多数派の子たちの誤解を解き、理解をしてもらわないことには始まりません。
ではどうやって理解させるのか?

以下の、特別支援理解教育の実践2つを、新学期すぐに行います。

①自分取り扱い説明書をつくろう(自己紹介)

「自分取り扱い説明書」とは、いわゆる自己紹介カードのことです。
苦手なことと、嫌いなこと、得意なことや好きなことなどについて考え、自分にはどんな特性があるのかを自分自身と対話していきます。
得意なことが分からないといった場合、無理して書かなくてもよいことを伝えます。

担任の先生も、はじめて出会う子ども達に、自分がどんな人間なのか、苦手なことを中心に自己紹介していきます。
その際、自身の学級経営方針と織り交ぜながら語りかけていきます。

自己紹介+所信表明演説です。

その後、自分取り扱い説明書(自己紹介カード)を活用して一人ずつ自己紹介をしていきます。
カードはどんなものでもかまいません。
大事なことは

そこにどんなことを書かせるのか

です。

例えば、
「人前で話すことが苦手です。でも物語を書くのが好きです。」
と自己紹介をしたAさんがいた場合、
おそらくAさんは、授業中に手を挙げて発言することはまずありません。

その代わり、ノートなどに自分の言葉でしっかりと考えることができます。
自己紹介も、みんなの前で発表することができないかもしれません。
その時は先生がかわりに読み上げてあげます。

そんなAさんに対しては、ノートに書いてあるAさんの考えを、適宜紹介していきます。発言はできなくても、ノートに自分の考えをしっかり書き、考えを深めていることを価値付けていきます。

リエゾン学級経営を実践していく中で、Aさんが、いつか手を挙げることがあるかもしれません。
それがたった1回だけかもしれません。
その1回を担任は見逃さず、挙手していることを大いに褒め、それがどんな意味をなすのかクラス全員に価値付けしていきます。
Aさんはきっと自信をもつことができることでしょう。

このような価値付けをしていくためにも、新学期すぐに、苦手なことと得意なことをセットで、自分と対話させるのです。
苦手なことに対して一歩踏み出すことができたとわかった瞬間、人は成長し、自己肯定感も高まります。
単なる自己紹介とは意味が違います。
学級経営の土台ともなります。

②ずるいってどういうこと? 

次に、「ずるいってどういうこと」なのか理解させていきます。
できれば、自分取り扱い説明書を行ったあと、そのまま続けて行うことが望ましいです。

1枚の画像を見せるところから授業を始めます。

車いすに乗ってる人

「これなんだかわかる?」
「車いすでしょ」
「車いすのってる人ってずるいと思う?」
「ずるいわけないよ」
「どうして」
「だって、足がわるいからのってるんでしょ」
「歩けないからのってるんだよ。」
「車いすがないと移動できないから困る」
「ずるくない」
「これはずるくなさそうだね」

眼鏡かけて授業受けてるひと

「次はこれ」
「眼鏡をかけて授業うけている子だよ。この子はずるい?」
「ずるくないよ」
「どこがずるいの?」
「視力が悪いんでしょ」
「眼鏡ないと字がみえないから困るでしょ」
「眼鏡かけて当たり前」
「じゃあ、これもずくるないってことだね」

タブレット使ってテストを受けている人

「次はこれ」
「何これ?」
「これは、一人だけテストでタブレットを使っている子だよ」
「え~~これはずるいよ!!」
「どうして?」
「だって、テストでしょ?調べたら答えわかっちゃうよ!」
「早くできそうだからずるい!」
「一人だけはずるい、だったらぼくも使いたい!」
「わたしは、文字入力苦手だから、鉛筆で書いたほうがいはいかな。」
「多くの子がずるいっておもってるみたいだね。」
「じゃあ、どうしてこの子は一人だけテストの時にタブレットつかってると思う?」
「う~~ん…」
「…どうしてだろう」
「みんなと同じように紙でテスト受けてないんだよ。きっとなにか困ってることがあるんじゃないかな?考えてごらん」

「車椅子を使っていた人は移動できなくて困っていたから使っていたよ」
「眼鏡をかけてる子は字が見えなくて困っていたから使っていたよ」
「今回のタブレットでテストを受けてる子は何が困ってるんだろう?」

「タブレット使ってテスト受けてる子は~~~~~が困っていた。」
と板書し、
各グループにミニホワイトボードを配布して考えさせます。

グループで考える時間をとります。

「こまってるとしたら、漢字が読めないのかも」
「字が書けないのかも」
「計算が苦手だから、電卓つかってるのかなあ」
「だったら、ぼくも計算苦手だから電卓使いたいよ」

その後、各グループの発表
「漢字が読めなくて困っていた」
「字が書けなくて困っていた」
「計算がわからなくて困っていた。」

「じつは、この子はうまく字が読めないんだよ。つまりテストに書かれている文字が読めなくて困っていたんだよ。例えば、これを見て、」

「テストの文字がこんなふうにみえたらどうなる?」
「えっ?これじゃなんて書いてあるかわからないよ」
「なぞときみたい」

「ほんとうはこんなふうに書いてあったんだよ」

「こんなふうに見える人もいます」

「でもタブレットに文字を音声にして読み上げてくれるアプリをいれると、読めなかったテストも読み上げてくれるからみんなと同じようにテストがうけられるんだよ。もしこれがなかったらどうなると思う?」
「なんて書いてあるかわからないから困る」
「そうだね。やっぱり困るんだよ」
「困るから使ってるんだよ」

「一見ふつうに見えても、実は困ってることがある人って、学校ではたくさんいます。自分が簡単にできていることでも、友達はできなくて困っていることって結構あるんだよ。」

「例えば、給食準備。給食当番で白衣着るでしょ?指先が不器用でボタンをとめたり、白衣を着たりするのが苦手で着替えるのに時間がかかる人もいます」
「あっ、ぼく苦手かも…」
「そんな、白衣を着るのに困っている人がいたらどうする?」
「あわてなくてもだいじょうぶだよ、〇〇さんのところは途中までやっておくから」と声かけてあげる。
「わたしは何も言わないけど、先に給食当番をがんばる!」

「そうだね」
「困っているのかどうか、気づくことができたら優しくすることできるね。」

「このように学校の生活ではいろんなところで、困ってしまうことがたくさんあります。だれにでも苦手なこと、困ることがあります。それに気づいてあげられるかが心のコップを大きくするポイントです。」

「だからもし何か、自分はできるけど、友達ができていないのを見つけたときには、どうしてできていないのかな? 何かこまっていないのかな?って考えてあげてほしいんだ」

「そして困ったことが何かわかったら手助けしてあげてほしい」
「できるかな?」
「うん」

「そうすると、声かけてもらった子も喜ぶし、みんなも心のコップが大きくなって成長できるよ」とまとめます。

その日のうちに、気になる子がいたら、担任は率先して困ってそうな子に声をかけて手をさしのべてあげます。

すると、必ず一人は困っている人みつけて助けてあげる子がでてきます。
必ず一人なんとかして見つけるのです。

それを見逃さずに見つけて、クラス全体に価値付けするのです。
そうすると、また真似する子が一人増え少しずつ浸透していきます。

この名言と似ている実践手法です。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

太平洋戦争開戦時の際の連合艦隊司令長官、山本五十六の名言です。
現代の教育にも通じる、深イイ言葉です。

リエゾン学級経営の成果があらわれるのには多少時間がかかります。
1学期、6月までが勝負です。

リエゾン学級経営では、特別支援教育の視点を取り入れ、多様性を尊重し、誰にとっても居心地のよい空間、楽しく学びながら互いを認め合う学習環境を築いていきます。
そして、全員が成長できることを目指します。

少数派を力で抑えこみ、多数派中心の学級経営をしてクラスが安定しているからといって、満足していてはいけません。
恥ずかしながら、なにを隠そう、若い頃の私です。

当然ながら少数派から大きな反発をもらったことがありました。
当然といえば当然の結果です。
少数派に寄り添わずに追い詰めたのですから。
今こうして振り返ってみると、なんて傲慢でひどいことしていたんだろうと反省しています…
お互いにとって大きなダメージでした。
そこで目が覚めたのです。
特別支援教育などほとんど関心がありませんでしたが、それ以降、本を読んだり、研修に参加するなど、必死に勉強しました。
そして20年の経験をもとに、このリエゾン学級経営を考案しました。

一人でも多くの方がこのリエゾン学級経営に賛同し、実践していただけることを願います。
すべての子どもの幸せを祈って!

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