キムラタツヤ

僕の文章や絵を目にした人が、それまでより幸せになってくれればいいなぁ。

キムラタツヤ

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    最近の記事

    沖縄の風に吹かれて 第2話

    第1話はこちら 福島と沖縄2021年3月、長年勤めた灘中学校・高等学校を退職し、本が売れない日本ではもうすっかりお会いしなくなった専業作家となった。不自由を我慢していれば給料が確実に入る安定と24時間を本に捧げられるがカネは入らない不安定とを天秤にかけて、不安定を取った。 結果、生活リズムだけでなく人とのお付き合いや酒の飲み方も含めてすべてが激変した。なによりも変わったのは、沖縄に戻る頻度と関わる深さである。 沖縄にしょっちゅう戻ってくるんだったら知り合いが多いほうがい

      • 沖縄の風に吹かれて 第1話

        きっかけ自宅が住民票に記載された場所を指すなら兵庫県西宮市である。奈良に生まれ、幼少期を明日香村と橿原市で過ごした。大阪の高校に通い、京都の予備校にお世話になって、兵庫県の大学に進んだ。大阪の会社で1年働いた後、奈良の学校で10年間勤め、奉公人としての最後は兵庫県であった。この十数年は西宮市に「自宅」がある。 そんな生粋の関西人がどうして年の1/3ほどを沖縄で過ごすのかと問われる。私だけでない。北海道から、埼玉から、東京から、千葉から、大阪から、兵庫から、和歌山から、福岡か

        • 亡き父のあの日を思い出して

          今日、5月13日は亡き父の誕生日である。昭和12年の生まれだから、生きていれば86歳。現在の平均年齢からすれば生きていてもおかしくはないが、長いこと煙草を飲んでいたし、なにより酒を毎晩飲んでいては長生きできないのもしょうがない。 父が今の私の年齢のとき、すでに半身不随になっていた。57歳のときに母が癌で入院し、その後に父が病気を発症した。私は奈良の橿原市に、両親は大阪市内に、それぞれ住んでいた。父は、母の入院先に日参していたが、ある日のこと、彼自身の体が動かなくなった。

          • ペッパーミルとアゲアゲホイホイ

            今年の甲子園は山梨学院が優勝したのだけれども、われわれ地元関西人からすれば報徳の頑張りが心に残っている。ちなみに小さい自慢で申し訳ないが、私は灘校野球部の監督を17年間務めている間に、中学の監督として報徳学園中学校には2回勝っている。 現在の荻野監督になってからは全く歯が立たなくなったが、その前の監督の時に勝利の美酒を、そして灘中生徒からの胴上げを、経験しているのである。私学大会という小さな大会ではあったが、報徳に勝ったというまさにその事実は、教員時代の数少ない心地よい思い

            読むを語る

            天文館といえば鹿児島最大の繁華街で、飲食店やショッピングモールが立ち並んでいる。なかでもセンテラスはさまざまなお店が入っていて、散歩するだけでも楽しい。その4階にかなり大きい図書館があり、その場所でラグーナ出版主催の読書イベントが開催された。 ラグーナ出版は精神障碍者の就労支援を積極的に行っている出版社である。詳細は同社のHPをご覧いただくとして、ラ・サールの丸山先生が『旅をする本』を、私が『あなたのちからになりたくて』をラグーナ出版から出したことが今日のイベントにつながっ

            人口減少の大波が日本を襲う

            Googleで「2030」と打つと、トップに「2030年問題」と表示されるのをご存じだろうか。「2030年問題」というのは、同年に日本の人口の1/3が65歳以上の高齢者になる超高齢化によって引き起こされるさまざまな問題を指す。 一般市民の生活は言うまでもなく、多くの店舗や企業存続の危機が到来すると言われているのが2030年、厳密に言うと「2030年以後」であり、年々ひどくなっていく。 現在すでに少子高齢化が問題となっているが、実は人口減少および社会の高齢化は始まったばかり

            ドラゴンズが大好きなのに

            どうして教員になったんだろう。 ドラゴンズを語るお二人に触れ、そう思わざるを得ないひと時だった。私には何ができるんだろう。そんなことばかり考えていた。 先日、沖縄のジュンク堂書店で「愛するドラゴンズを語り尽くす会」というイベントが行われた。CBC(中部日本放送)の特別解説委員である北辻利寿さん、タレントの漢那邦洋さんとともに、文字どおり、ドラゴンズを語り尽くした。あっという間の90分だった。 奈良県生まれ。生粋の関西人である私がタイガースではなく、ホークスでもバファローズ

            清風高校の校則に関する報道を読んで

            昨年だったか、校則に疑問を感じた生徒が頭髪規定の撤廃を求め、大阪弁護士会に嘆願書や署名を添えて、匿名で人権救済の申し立てを行ったことを報道で知った。学校名を見てびっくり。清風高校とある。私の母校ではないか。 同校は大阪の上本町六丁目駅から歩いて数分のところにあり、真言宗の教えを建学の精神とする学校である。私は3年間お世話になった。勉強はなかなか厳しい学校ではあった。特に当時の先生方はなんとか進学校にしようと鼻息荒く、入学直後から卒業まで物凄い量の宿題とテストが生徒たちに課さ

            東大生が東京大学を訴えた件で

            杉浦からMessengerが来て、彼が東京大学に訴訟を起こしたことを知った。 元担任としては応援したいが、応援すると言っても何ができるわけでもない。生暖かく見守るしかないので、彼にはそれなりの激励を返信として送った。それが昨年。 NHKをはじめとするさまざまなメディアが、ひとりの東大生が東京大学を相手に訴訟を起こしたことを報じた。判官びいきがその特徴である日本人であるから、杉浦を応援する声が高まるのではないかと推察した。TwitterやFacebookに書かれたコメントや

            もう一度、イギリスに行きたくなった

            2月18日(土曜日)、沖縄県那覇市にあるジュンク堂書店でトレン・デインジャフィールド氏(以下、トレンさん)と対談を行った。彼は沖縄の学習塾である「沖ゼミ」の校長であり、英語科教員である。したがって、今回のテーマは「英語学習と未来」となっていた。 事前の打ち合わせを兼ねて、15日に那覇市小禄にある居酒屋で初対面。イギリス人らしく、長身の紳士であるトレンさんに迎えられた。私はあまり人見知りしないタイプなので、1の1から彼と心を開いて話をすることができたように思う。今まで4回英国

            お尻が拭けない

            講演を終わらせて秋田から帰宅した。プロペラ機はなにかと疲れる。文句を言ってもしょうがないので従うしかない。伊丹空港から秋田空港へのフライトは乗客がわずか5人。その乗客数で隣にヒトがいる状態を専門用語で「ついてない」と呼ぶのである。全員がのびのびと、まるでチャーター機の如く、過ごすことになった。 一方、帰りは満席で、ただでさえ狭い機内が、まるでえべっさんの福男選びのダッシュの如き状態である。私はいつもどおりに通路側に座り、PCを出した。隣は若い女性。これだけでもなんとなくツイ

            誕生日おめでとう

            昨日は母の誕生日だった。85歳になった。生きていれば。 彼女は典型的な大阪のおばちゃんで、極めて明るく快活で、極めてよく喋り、そして極めて寂しがり屋だった。毎晩酒を飲んでいた。毎晩大笑いしていた。毎晩酔っ払って泣いていた。 そして、私と弟には相当厳しい母親だった。 成績が悪いぐらいのことは何も言わなかったし、学校をさぼったとか剣道の練習に出ずに帰ったとかにも無関心だった。成績が悪くて教師に呼び出されたとき、彼女は教師に「うちのタツヤは確かに数学が3点かもしれませんけどな、

            門田博光さん逝去の報に触れて

            高校時代は大阪の清風高校という、当時は大した進学校でもなかった学校に通っていた。毎朝、全校朝礼が行われ、全員で般若心経を唱えるというファンタスティックな学校で、当時の熱心な先生方には大変申し訳ないが、私は本当に駄目な生徒であった。 日々の宿題が極めて多く、毎日必ず小テストや再テストが行われていた。こう書くと教育熱心な親は「まぁ、なんて素晴らしい学校!」とほざくだろうが、こちとら疲れ果てていた。退学していく同級生もかなり多かった。私は母が着物を売って学費を捻出していたことを知

            親元から大学に通いたい子どもが増殖している件で

            「親ガチャ」という言葉が大嫌いだ。 努力しない子どもの戯言だと思っている。確かに親のDVで心を傷つけられてしまった子どもも多数いるだろう。それは気の毒だとは思うし援助をしなければならない。が、それでもやはりいつかは自分の足で歩かねばならない。毎日のように親から平手打ちをされながら、そして監督からは金属バットでケツを殴られながら、子ども時代を過ごした私はそう思う。 人生はただの一回だ。どんな親に生まれようとも、どんな家庭に生まれようとも、それは単に生まれたときの状態に過ぎな

            少子化対策とは言うけれど

            真剣に考えたほうがいいんじゃないかと思う。 少子化対策と多くの政治家は言うけれども、これから結婚しようとする人たちと、結婚は考えていないけれどもそれなりの年齢の人たちと、すでに結婚はしているけれども年収が低くて子ども作れないよねという人たちのことを考えているようには、到底思えない。 その中で、吉村知事が大阪公立大学の学費と入学金を無料にするぞ!と言い始めた。すでに明石市の泉市長は実績を上げておられる。地方にはなかなかな政治家がおられるように思う。まだまだ少数派ではあるけれど

            野球の審判をAIにさせるだと?

            うーん、Yahoo!の記事に「大リーグでストライクボールの判定にAIを試験導入」という記事を見つけて、ちむどんどんしている。 僕も野球部の監督を17年間、そして神戸市の審判員を23年間、それぞれ務めてきた、いわば「野球の関係者」なのでひと言書いておこうと思う。 正直、反対だ。 確かに審判の判定にはミスがある。というより、ミスだらけだ。AIが判定すると確実にボールと判定するであろうボールに右手を上げる。その逆もある。プロでもそうだ。野球の経験者ならストライクはどこかと問われる