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人口減少の大波が日本を襲う

Googleで「2030」と打つと、トップに「2030年問題」と表示されるのをご存じだろうか。「2030年問題」というのは、同年に日本の人口の1/3が65歳以上の高齢者になる超高齢化によって引き起こされるさまざまな問題を指す。

一般市民の生活は言うまでもなく、多くの店舗や企業存続の危機が到来すると言われているのが2030年、厳密に言うと「2030年以後」であり、年々ひどくなっていく。

現在すでに少子高齢化が問題となっているが、実は人口減少および社会の高齢化は始まったばかりである。ここからジェットコースターが滑り落ちるが如く、その傾向は強くなっていく。下のグラフは総務省のHPから引っ張ってきたものである。


すでに女性の半数以上が50歳を超えている現状では、推定値とは言ってもほとんど確定値に近いのがここから20年間ぐらいの数字である。簡単に書けば、7年後の2030年には現在よりも650万人ほど日本の人口は減ることになる。

650万人がどの程度の数字なのかを都道府県の人口データと比較すると次のようになる。
・北海道の人口は650万人
・青森と岩手と宮城と山形と秋田の人口合計が680万人
・京都と滋賀と奈良と和歌山の人口合計が628万人
・四国4県と岡山と鳥取と島根の人口合計が685万人
・福岡と沖縄の人口合計が650万人

いずれにしてもそれぐらいの人口が7年後に消えることが確定している。東京都の半数ほどが消えるのだから、渋滞がなくなっていいじゃないかと呑気に構えている向きは幸せとして、かなり大きい社会の変化が予想できる。

なぜ減少しているのかと言えば、政治的失策によるものである。
ハンガリーのようなまさに異次元の少子化対策をとっている国では、国家が40歳未満の女性にけっこうな額の金を貸し付け、3人目の子どもが生まれると返却義務が消滅するとか、4人目が生まれると所得税が免除になるとかいった政策が敷かれている。

一方、日本の場合、本当にちまちました「出し惜しみ」しか行われておらず、したがって、よし!それなら子どもを産もう!と国民に考えさせるには至っていない。その割には政治家の給与、特に与党政治家に与えられるカネ(旧文通費含む)は世界一高い。政治家を選出しているのは国民なので、国民が悪いということになるのだろうけれども。

さて、どういう社会の変化が待ち受けているのだろう。
少子化で思いつくのは多くの学校の合併や倒産である。特に私立小学校や中学校では入学する子どもの数が減少し始めていて、私が勤めていた学校でも、以前より多くの合格者数を出さねばならない状況である。

教職員のボーナスを全額カットした学校もある。すでに生徒募集を停止し、数年後の閉校を発表している学校や大学も出てきている。あまり大きいニュースにはなっていなかったが、2023年3月22日に東京都の恵泉女学園大学の2024年度から学生募集停止が報じられた。

塾や予備校の生き残りもかなり厳しい状況で、経営者たちは生徒集めに躍起になっている。なにしろ私の高校時代には30万人ほどいた浪人生が、いまは7万人や8万人ほどにまで落ち込んでいるのだから当然であろう。

浪人相手にしていてはビジネスが成り立たないと踏んだ大手予備校の多くはすでに現役生徒たちに、うちに来れば東大に合格できますよと大声で叫び続けている。全予備校が掲げる「我が予備校の昨年度の東大合格者数」を全部足すと、なんと実際の東大合格者数を大きく上回るのである。かさ上げしてもバレないか、あるいは模試受検者も「我が予備校の一員」に加えているのかはわからないが、要はそういう理由である。

生徒を相手にしている企業も然りで、今までより模試の受検者が激減していたり教材の売り上げが減少していたりする。子どもの数が減少しているのだから当然の話で、なかには「お宅の学校は進学校なので、無料でもいいから模試を受けてくれ」と言って学校営業をしている会社もある。

街に目を移すと、閉店する店舗が増えてきたとは思わないか。私の住む西宮市では、以前なら予約を取るのが困難だった四川料理店が2月をもって閉店となった。行列ができていたケーキ屋が規模を縮小した。

人口減少の波はここから一気に押し寄せるのである。

保身と当選にしか興味のない政治家に期待するのは間違いだろう。街を維持するために、社会保障を維持するためにという名目で、実は彼らのフトコロを温めるために、我々はまたぞろ増税を課されるのであろうか。

私もまだまだ生きたいと思っているが、少なくとも30年後、つまり2050年の日本社会、現在より3000万人が減少した日本社会がどうなっているのかを目に焼きつけたいと思っている。3000万人と言えば、現在の東京と神奈川と大阪の人口を合わせた数である。こうなるともう社会は維持できないだろう。政治家に期待できる状況ではないように思うが、「異次元の少子化対策」がどうなるのだろうと注目している。

木村達哉


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