キム・ヒョン

シカゴ・ホワイトソックスのマイナーリーグでアスレチックトレーナーをしてます。2004年…

キム・ヒョン

シカゴ・ホワイトソックスのマイナーリーグでアスレチックトレーナーをしてます。2004年に渡米して大学&大学院を卒業。大学、高校、病院、リハビリクリニック勤務を経て今に至ります。スポーツ医療&科学に興味があり、自分の勉強のために論文の解釈などをメインに書いてます。

最近の記事

運動負荷のデータに基づく野球投手のためのインターバル投球プログラム

今回は元ボストン・レッドソックスのヘッドトレーナーであり、現シカゴ・ホワイトソックスのシニアメディカルアドバイザーであるMike Reinold氏らによる野球投手のリハビリテーションと運動負荷の管理に基づいたインターバルスローイングプログラムについての研究論文「An Interval Throwing Program for Baseball Pitchers Based upon Workload Data」(運動負荷のデータに基づく野球投手のためのインターバル投球プログラ

    • スポーツメディスンチームの構成

      先週MLBに続きついにトリプルAのシーズンも開幕しました。 僕の所属するシャーロット・ナイツはセントルイス・カージナルス傘下のメンフィス・レッドバーズとアウェーでシーズン開幕を迎えました。米国でメンフィスといえばエルヴィス・プレスリーの聖地として観光都市としても有名ですが、球場近辺は夜になると治安面で結構ヤバい雰囲気が漂います。そのようなこともあって去年までは球場の真横のホテルに泊まっていましたが、今年からはビジターは20分ほど郊外に泊まることになりました。 前回のブログで

      • 2024年スプリングトレーニング

        今年のMLBスプリングトレーニング(プロ野球でいう春季キャンプ)も残すところあと1週間を切りました。あまり話題にはなりませんが、メジャーのキャンプと2週間ほど間隔を開けて、マイナーリーグのキャンプも同じ場所で行われています。メジャーのキャンプは大谷選手や山本選手のおかげで日本でも少しずつ知名度があがってきているのではないでしょうか。 今回はMLBのスプリングトレーニングについて少し書いてみようと思います。 MLB全30球団はアメリカ国内でキャンプを行います。15球団はフロ

        • 筋骨格障害のマネージメントにおける多血小板血漿投与に関するアップデート

          近年MLBでも筋骨格障害の治療オプションとして定着してきたPRP(多血小板血漿)注射ですが、今回はO'Dowd氏によるPRP注射に関したシステマティックレビューを簡単にまとめてみました。 近年、筋骨格系軟組織損傷のマネージメントにおける多血小板血漿(PRP)の使用が一般的になってきました。PRPは損傷した組織に高濃度の自己血小板を注射することによって、身体の組織の治癒を促進するために使用されます。しかしながら腱障害の治療におけるPRPの使用には議論の余地があります。 一部の

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          MRIで見るエクセサイズ後に起きるハムストリングの変化

          ハムストリングの肉離れが厄介な理由サッカー選手にとって一番多い怪我の一つはハムストリングの肉離れです。再発率も高いこともあって、選手だけでなくチームにも経済的打撃が大きいのがこの怪我の特徴です。なのでチーム組織としてはいかにこの怪我の予防、または再発防止のためのリハビリプロトコルを開発するかがチーム運営にとって重要な要素となります。 通常ハムストリングの怪我が起きやすいメカニズムは高速スプリント、そのための加速動作、またはハイキックやスプリットムーブなどの筋肉の伸長収縮が起

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          メジャーリーグにおける肘の内側側副靱帯損傷の過去と現在

          今回はホワイトソックスのヘッドチームドクターでもあるDr. Verma氏らによるMLBにおける肘の内側側副靱帯損傷に関する統計をまとめた論文を紹介しようと思います。 野球と内側側副靱帯損傷の関係肘の内側側副靱帯(以後UCL)はオーバーヘッドスローを行うスポーツをする際に最も重要な役目を果たす組織です。なので普段生活する上でこの靭帯に過度な負荷はかかりませんが、野球の投球動作の際、肘の屈曲が高まるにつれてUCL前方束後部にかなりの負荷がかかります。 本来成人男性の投手が投げ

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          MLB/MiLBで2011年~2016年に起きた怪我の頻度トップ50

          HITSデータを使った最新の統計本来MLBで使われていた怪我の記録システムは、怪我を詳細をトラッキングするものではなく、ロースターを管理するものとして作られたものでした。なので怪我の箇所やメカニズムなどは記録されても、正確な診断結果が記録されることはあまりありませんでした。さらにマイナーリーグでは選手の多さとチームあたりに所属するメディカルスタッフの少なさもあって更に雑になることも珍しくありませんでした。 2010年に導入されたHealth and Injury Track

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          Weighted Baseballを使う際の注意点(前回の続き)

          前回の記事でWeighted Baseballを使ったトレーニングに関するクリニカルビューについて自分なりの要約文を書きましたが、今回は筆者であるMike Reinold氏が述べる同トレーニングのする際の注意点について簡単にまとめました。 Weighted Baseball=重いボールを使ったトレーニングはまだそのメカニズムが完全に解明されたわけではないので、トレーニングをする時は細心の注意を払う必要があります。 注意点をまとめると次のうようになります↓↓↓ 1.個人化

          Weighted Baseballを使う際の注意点(前回の続き)

          Weighted Baseballに関するクリニカルビュー

          アメリカの野球界で手軽に球速を上げられると話題を集めている”Weighted Baseball”ですが、あまりに早く普及されたこともあってその使い方も人それぞれになっている恐れがあります。時が経つにつれて科学的に基づいたその効力と正しい使用法も少しずつ解明されてきました。 本日はホワイトソックスのメディカルコーディネーターでもあるMike Reinold氏のWeight Baseball=重い野球ボールを使ったトレーニングに関するクリニカルビューについて書きます。 野球の

          Weighted Baseballに関するクリニカルビュー

          メジャー&マイナーリーグにおける腹斜筋の怪我について

          コアマッスルと野球の関係 トレーニング界隈に”コアマッスル”という単語が出てくるようになってから、もうすでに15年くらいが経ったでしょうか。野球界のコンディショニングでもコアトレーニングは欠かせない存在となしました。実際に野球に関わるほぼ全ての動作において、コアマッスルはかなり密接に関わっています。姿勢の維持、投球、スウィング、体の捻転、走る、ジャンプなど例を上げればキリがないです。 一般的にコアマッスルと言うと複数の筋肉の総称ですが、その中でも外腹斜筋と内腹斜筋は下半身

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          Velocity Based Training (VBT)がパフォーマンスに及ぼす影響について

          以前使っていたブログからの移転もそろそろ終わりそうです。 今回は近年注目を集めているVelocity Based Trainingに関する論文の要約文の紹介です。 VBTとは?Velocity Based Trainingとはその名のとおり”リフト中の速度にフォーカスして行われるトレーニング法”です。基本的な動作などは普通のトレーニングと同じですが、一般的なトレーニングではリフトの際に持ち上げるスピードは人それぞれでしょう。ウェイトが上がれば上がるほど持ち上げるスピードも自

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          MLB投手における広背筋と大円筋損傷のシステマティックレビュー

          アマチュア&プロ野球界隈で一番頻繁に見かける上肢の怪我と言えば肩の関節唇損傷やローテーターカフの肉離れかと思われますが、近年特に投手たちの中で広背筋や大円筋の肉離れの件数が右肩上がりで伸びてきています。 Jobe氏が称えた『投球メカニズム』の中で、広背筋は加速フェーズ中に最も筋活動が高くなり、その後の減速フェーズ→フォロースルーまでその活動を維持しています。解剖学的には大円筋は滑液嚢を挟んで広背筋の後ろに位置しています。お互いの腱繊維が下部で結合することで動作メカニズムにお

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          日米のプロ野球投手におけるバイオメカニクスの違い

          今回は2019年に発表された日米のプロ野球投手におけるバイオメカニクスの違いについての研究論文を紹介します。最近肘のに関する論文ばかり漁っているせいかDr. Glenn Fleisigの名前をよく目にします。彼の勤務しているアラバマ州バーミンガムにあるピッチングラボは僕も何度か行ったことがありますが、Dr. Fleisigの知識の深さにいつも度肝を抜かれます。 結論から言うと簡単に想像できると思いますが、欧米選手は日本人選手よりも身長・体重・運動トルクも大きく、球速も速いの

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          トミー・ジョン手術を受けたMLBピッチャーと股関節の怪我との関連性

          今回紹介するのは2018年に書かれた論文で、MLBピッチャーの肘の内側靭帯の怪我と股関節の怪我の関連性を調べた結果について書かれています。 内側側副靱帯の怪我とは? 内側側副靱帯(以後UCL)は肘の内側にあって、投球動作の中で上腕骨と尺骨に起こる外反ストレスに耐える働きをしています。一般的に外反ストレスはコッキングから加速フェーズに入る時に最も高くなります。UCLや他の靭帯の怪我には損傷度に応じて3段階に分けられますが、その主な原因は連続した力強い投球動作によるものがほと

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          オーバーヘッドアスリートはオーバーヘッドでウェイトトレーニングをするべき?

          13年ほど前、僕がアメリカの大学野球部でトレーナーとして働いていた時、投手はベンチプレスなどのヘビーウェイト系のトレーニングは一切しないというルールがありました。同大学には当時ストレングスコーチは1人しかおらず、野球部はアメフト部のトレーニングメニューを監督があれこれアレンジしたものを使っていたのを覚えています。 当時野球を担当するのが初めてだったので自分で色々調べてみたのですが、当時から野球選手(特に投手)はベンチプレスのようなヘビーウェイトはあまりせず、しかも肩より上に

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          UEFAによるプロサッカー選手の栄養事情とガイドライン その4

          このシリーズの最後です。 最後に残った項目はこれです。 レフリー達の場合 ユースベレルの場合 まとめ レフリー達の栄養事情サッカーファンにとって良いイメージを持たれることが多くないレフリー達ですが、試合を成り立たせる上で最も重要な職業の一つです。試合中のレフリーの運動量は時に最大心拍数の80−90%、最大酸素摂取量(VO2Max)は70−80%に達しカロリー消費量は1200kcalにもなります。血中の乳酸塩の濃度は激しい運動と不十分な休息間隔でグッと上がります。(めっ

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