見出し画像

プロ野球選手におけるシーズンを通じての上肢および股関節の可動域の変化について

プロ野球選手にとって上肢および下肢の可動域(ROM)の減少は、一般的には怪我のリスク要因になります。ここで出てくるROMはRange of Motionの略です。今回はChan氏らによる論文の要約をしたいと思います。

この研究の目的はプロ野球選手のシーズン、およびキャリアを通じた上肢と下肢の可動域の変化を明らかにすることです。著者達はこの研究を行う上で、選手がシーズン&キャリアを通じて、肩の総合可動域(TROM=Total Range of Motion)、および股関節の内旋可動域が低下すると仮定しました。

研究方法としては2011年〜2018年の間に116人のプロ野球選手(投手98人、野手68人)のプレシーズン、中間シーズン、ポストシーズンにおける上肢&下肢の可動域を測定しました。さらにその測定結果を投手と野手に分けて、シーズン&キャリアを通じて比較し、またプレシーズン、中間シーズン、ポストシーズンにおける可動域測定を比較も行いました。

結果を簡単にまとめると以下のようになります。

投手

  • 股関節外旋、内旋、およびリード脚とトレイル脚のTROMがシーズンを通じて減少。

  • 逆に肩の外旋、TROM、および水平内転がシーズンを通じて有意に増加。

  • キャリアを通じては、肩の内旋の減少。

  • 肩の水平内転、およびリード脚の股関節内旋と股関節のTROMの増加が見られました。

野手

  • 肩関節屈曲、股関節外旋、および股関節TROMがシーズンを通じて減少。

  • 肩の外旋、および上腕骨の内転がシーズンを通じて有意に増加。

  • キャリアを通じて股関節TROMの減少していました。

この研究の結論として、投手も野手もシーズン&キャリアを通じて股関節の可動域が全体的に減少しましたが、肩の可動域は増加しました。特に投手はシーズンの始めから肩の外旋可動域が広く、それがシーズンを通じて更に拡張する傾向がありました。ピッチングの際に肩の外旋を大きく使う動作を繰り返し行うと考えれば当然かもしれません。

ただ股関節の可動域の極端な低下は、上半身の負荷が増大する可能性があるので、シーズンを通して注視する必要があります。

論文のURLを貼っておくので興味のある方はどうぞ。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31891517/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?