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筋骨格障害のマネージメントにおける多血小板血漿投与に関するアップデート

近年MLBでも筋骨格障害の治療オプションとして定着してきたPRP(多血小板血漿)注射ですが、今回はO'Dowd氏によるPRP注射に関したシステマティックレビューを簡単にまとめてみました。

近年、筋骨格系軟組織損傷のマネージメントにおける多血小板血漿(PRP)の使用が一般的になってきました。PRPは損傷した組織に高濃度の自己血小板を注射することによって、身体の組織の治癒を促進するために使用されます。しかしながら腱障害の治療におけるPRPの使用には議論の余地があります。 一部の腱はPRP治療に対して異なる反応を示す可能性があり、その理由の 1 つはPRPの効果がわかるまでには3~6か月かかることです。

個人から採取した血液を遠心分離して多血小板血漿を精製するのですが、血小板には主に血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、血小板因子インターロイキン、血小板由来血管新生因子、血管内皮増殖因子、上皮増殖因子、インスリン様増殖因子、フィブロネクチンなどの局所的に活性な増殖因子を含む生理活性物質が多数含まれています。これらの物質は骨や血管を再構築し、血管新生、軟骨形成、コラーゲン合成を促進する能力など様々な特徴があります。

PRPの生理学的特性に基づいて、筋骨格系軟部組織損傷にPRPを使用すると、損傷組織の治癒が促進されることが期待されていますが、これはまだその効果が完全に証明されたわけではありません。2014年にMoraes氏らによって行われたシステマティックレビューでは、筋骨格系軟組織損傷の治療におけるPRPの使用を裏付ける証拠は不十分であると結論付けられました。

この論文の目的はMoraes氏の研究を更新し、筋骨格系軟部組織損傷のマネージメントにおけるPRPの使用に関する明らかな利点を示す最近の研究があるかどうかを判断することです。 仮説としては筋骨格損傷のマネージメントにおいて損傷組織の機能を改善し、痛みを軽減する上でPRPの使用にプラスの効果があるだろうというものです。

この論文はPRPの筋腱または靭帯組織損傷の治療への利用について行われたシステマティックレビューです。対象と除外基準は、18歳以上の参加者を対象にPRPと非PRP/プラシーボを比較するランダム化臨床試験(RCT)が対象でした。これらの研究のデータは損傷の種類、PRPの使用量、コルチコステロイド注射との比較に基づいて統合されました。結果32件の研究がレビューの対象になりました。

レビューに含まれる32件のうち、13件は肩のローテーターカフの損傷に対するPRPの効果を調査しています。8件の研究が腱症の治療に関して、6件の研究が急性組織損傷に関して、2件の研究が急性軟部組織断裂に関して、2件の研究が慢性足底筋膜炎に関して、そして1件の研究が半月板損傷に対するPRPの効果を調査しています。

結果としてPRPの利用に関する研究は多岐にわたりますが、一部の研究ではPRPの利用が有益な結果を示すものもあります。特にローテーターカフの損傷、慢性足底筋膜炎、および半月板損傷の手術を行わない保存療法において、PRPの利用が有望な結果を示す研究があります。一方でPRPの利用による長期的な生理学的恩恵や正当化に値する利益を示す研究は少なく、PRPの獲得、製造、実施の手順とコストが妥当化されるほどの利点は示されていません。将来の研究が必要とされる一方で、PRPのスポーツ医学への適用や急性損傷の管理における利益を評価するためにさらなる研究が必要です。またPRPの適切な使用方法についての標準化が必要であり、現時点では最適なPRPの使用量や複数回の注入が有益であるかどうかについては明確な指針が存在しません。

<参考URL>
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9747876/#:~:text=Currently%2C%20there%20is%20no%20research,%2C%20producing%2C%20and%20implementing%20PRP.

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