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肩の腱板の部分断裂が肩の痛みと筋力に及ぼす影響の可能性について

肩の腱板(ローテーターカフ)の断裂は野球選手において一般的な肩の怪我の一つです。いくつかの重度の部分断裂(腱の厚さの50%以上の断裂)では、保存的治療がうまくいかず、競技復帰を確実にするために外科的治療が選ばれることがあります。

また対照的に一部のローテーターカフの部分断裂は、投球動作中であっても肩の症状を引き起こさないことが多々あります。今回要約したmihata氏らによる論文ではローテーターカフの部分断裂が野球選手に肩の痛みや筋力の低下を引き起こすかどうかを評価しています。

方法として87人の大学野球選手を対象に調査を行いました。腱は厚さを超音波検査で検査した後、次の4つのグループに分けられました。

(1)断裂なし
(2)棘上筋腱断裂
(3)棘下筋腱断裂
(4)棘上筋および棘下筋腱の両方の断裂

これらのグループに分けられた後、肩の痛みと外転、外旋、内旋におけるそれぞれの筋力を測定&比較がされました。

結果は 87人中、41人(47%)の選手が関節側のローテーターカフの部分断裂と診断されました。19件が棘上筋に、13件が棘下筋に、9件が棘上筋&棘下筋の両方に見られました。断裂の深さは棘上筋で平均4.6±2.3 mm、棘下筋で平均6.2±3.6 mmでした。しかしながら肩の痛みの発生率、および4つのグループ間の筋力に有意差はありませんでした。

この研究において関節側のローテーターカフの部分断裂は肩の痛みや筋力低下を引き起こさない可能性が示唆されました。この怪我の多くはローテーターカフの腱だけではなく、上関節包の断裂である可能性があると著者は述べています。これは上関節包が大結節に付着しているためです。したがっていわゆる関節側のローテーターカフの部分断裂の多くは病理学的な腱の断裂ではないかもしれないというのが著者の見解です。

本文のURLを載せておくので、興味のある方はどうぞ。

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/2325967119S00430

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